90 / 116
第一部
89
しおりを挟む領境の砦前に荷馬車や人々の列が組まれている。
『緊張されていますか?』
「いいえ。早く辿り着いて、助けないと。ネリ、心配してくれているの?」
『それは勿論。いくら救援要請が届いたからといえ、すぐ駆け付けられる訳ではありませんから。』
準備が整い、リーダー格が点呼している間、メリシャは馬車の中でネリと話し合っていた。
ルーはメリシャの膝の上で静かに佇んで、ピンと立てた耳で周囲の音を聞き入っている。
砦に併設された門の上から眺めていた兵士たちは、その異様な団体を前に立ち竦んでいる。
聖女メリシャ含む神官ら先頭を進む組。
補給物資を運ぶ後方支援に徹する役割の組。
馬車の護衛などを除き、聖騎士や兵士を再編成された組。
門前で証明となる通行手形を門番に見せ、承諾を得られると、一行はウィリスタ辺境伯領内へ足を踏み出した。
一団が門を通っていく姿を眺める者たちがいた。
ゆっくりと進む一行を砦から見送っているのは、領境の砦を任されている責任者と各部署のトップたちである。
彼らは教会の一行を見送りながら、領都の方向を向いて無事を神に祈っている。
一団が門へ向かう前に、砦へ領都に駐屯する兵士がある書簡を届けに来訪したからだった。
報告書は領主の行方不明の報告に続き、魔物の侵攻状況など、さまざまな情報が齎された。
それから書簡の内容を枢機卿へ伝達するかどうか、小会議が開かれたものの、討論の末に伝えない方向で決まり、この場に集まっていた。
何より情報の精査が甘く、正確でないと最終的に判断を下したためだ。
全ての一行が領内へ入ると、門番の一人が報告に駆け上がってくる。
されほど間を空けず、閉門を言い渡した。
彼ら一行の他に居ないといえど、領境は許可なく通ることができない仕組みだからである。
静けさを取り戻した室内で、再び領都がある方向に視線を向けて、彼ら一行と領都の無事を深く祈った。
ウィリスタ辺境伯領内を進む一行は木々や草原を避けて作られた街道を通っていた。
どこにも異変を感じられず、遠目から村々の面影を脳裏に留めながら、一行は領都を目指す。
平和な旅路は馬車の音色と森林の風景を眺めながら、メリシャを乗せた馬車と、その後方を一団が列を成して進む。
--------------------
※お知らせ※
次回更新日程:2025年5月4日 17:00・予定
24
あなたにおすすめの小説
義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います
成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
婚約者を寝取った妹にざまあしてみた
秋津冴
恋愛
一週間後に挙式を迎えるというある日。
聖女アナベルは夫になる予定の貴族令息レビルの不貞現場を目撃してしまう。
妹のエマとレビルが、一つのベットにいたところを見てしまったのだ。
アナベルはその拳を握りしめた――
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる