もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】

青緑 ネトロア

文字の大きさ
102 / 116
第一部

101

しおりを挟む

ウィリスタ辺境伯領の領都内で一晩を過ごした、メリシャたち。

メリシャが目覚める数瞬前、衣服の皺を見つけたルーが繊細な聖魔法で直していく。

目覚めてすぐ、聖魔法の残滓に目敏めざとく気が付いたメリシャから褒められることに感極まっているルー。

その光景を眺めていた神官たちは、穏やかな雰囲気で静かに見守っている。

支度を終えて天幕から出てきたメリシャは領都内の惨状に加え、天幕のある休息所から離れた場所から喧騒が聞こえてきた。

そこへ目を向けると、魔物との戦闘が行われているのが見えた。

近くで会話する兵士たちの話に聞き耳を立てると、聖騎士と兵士の合同で、魔物の間引きが実施されているようだ。

盾と矛による構成で、魔物と接敵する光景にメリシャは怪我をしないか、ハラハラと心配になってしまう。

ワナワナと震えるメリシャにルーが寄り添い、落ち着きを取り戻していく内に戦闘は終えていた。

どうやら聖騎士が大盾で魔物の攻勢を防ぎ、その一瞬にできた隙を狙って兵士が手に持つ武具で攻撃していたようにうかがえた。

魔物が近寄らない状況を油断せず、時を見極めた順に神官が彼らに駆け寄り、酷い怪我から治癒させていく。

その一方で怪我の軽い者が周囲を見張り、魔物が駆け寄る姿を目視した者は、首から掛けた笛に息を吹き込む。

それが合図のように、神官たちはすぐ天幕まで走って戻ってきた。

天幕のある休憩所一帯はネリの風によって結界が張られている関係上、魔物の被害を一切受け付けない仕組みとなっている。

メリシャの近くまで戻ってきた神官たちは肩で息を荒げつつ呼吸を調え、まるで戦い慣れた戦士のように戦場を目で追っていた。

彼らはメリシャに気付けないほど集中している影響か、彼らだけの空間が出来上がっている。

メリシャはそっとしておこうと、他のことに気が散らないよう静かに後退った。

『………。』

抱えられた子犬のような風貌のルーが腕から降りようとしたが、メリシャにグッと引き留められ、抜け出すタイミングを逃す。

「ルー、今は邪魔しないようにしなきゃね。」

メリシャはより一層、ルーを抱えている腕に力を込めてから、枢機卿のいる天幕へと足を向けるのだった。

ルーはメリシャの意を汲んで腕の中に身を委ねるが、その途端に寝息が聞こえ始め、メリシャにクスクスと笑われていたことは本人ルーの知らぬ間の出来事であった。

--------------------

※お知らせ※
次回更新日程:2025年9月1日 17:00・予定
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います

成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

婚約者を寝取った妹にざまあしてみた

秋津冴
恋愛
 一週間後に挙式を迎えるというある日。  聖女アナベルは夫になる予定の貴族令息レビルの不貞現場を目撃してしまう。  妹のエマとレビルが、一つのベットにいたところを見てしまったのだ。  アナベルはその拳を握りしめた――

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

処理中です...