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八、
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次姫が思わず顔を上げ、何事か言いかけたが、口をつぐんだ。
「しかし、初姫様といえば、五年前に謀反を企てたかどで、上様の御手討ちにあったと聞き及んでおりますが」
清子が沈着な面持ちで言う。
容花はそれには答えず黙っていた。
「鬼よ」
地を這うような低い声が言った。
次姫の表情は暗鬱だった。
「上様は秋月に生まれた鬼。人の命を奪うことに、罪も負い目も何ら感じてはおられない」
「人の命の重さは違う」
容花は厳しい声で反駁した。
「上様には、どれだけの血を流しても果たさねばならぬ使命がある」
冷厳な空気が辺りを覆う。
交錯する視線と、無言のせめぎ合い。張り巡らされた緊張の糸。
ふつりと切ったのは、常盤の言葉だった。
「おっしゃるとおり、人の命の重さは違います。わたくしの命など、水面に浮かぶ塵のごとき軽さにございましょう」
胸に手を当ててゆるりと微笑む。
「しかし、上様はお優しい方です。私は存じ上げております」
「そなたに何が分かる。地下の分際で、上様にお目にかかったこともなかろう」
蔑む容花に、常盤は凛と胸を張る。
「春日様」
唐突に矛先を向けられ、春日は怪訝に首を傾げた。
「あなたは上様の送り込まれた密偵ですね」
容花以外の全員がはっと息を呑んだ。
「上様の亡き奥方様の妹君、次姫様をお守りする。上様から、そう命を受けているのではありませんか」
答えはない。
だが、目をみはって絶句しているさまは、真実を何よりも雄弁に物語っていた。
それを見て、常盤は嬉しそうに笑顔を綻ばせる。
「やはり、上様は鬼ではないのです」
「しかし、初姫様といえば、五年前に謀反を企てたかどで、上様の御手討ちにあったと聞き及んでおりますが」
清子が沈着な面持ちで言う。
容花はそれには答えず黙っていた。
「鬼よ」
地を這うような低い声が言った。
次姫の表情は暗鬱だった。
「上様は秋月に生まれた鬼。人の命を奪うことに、罪も負い目も何ら感じてはおられない」
「人の命の重さは違う」
容花は厳しい声で反駁した。
「上様には、どれだけの血を流しても果たさねばならぬ使命がある」
冷厳な空気が辺りを覆う。
交錯する視線と、無言のせめぎ合い。張り巡らされた緊張の糸。
ふつりと切ったのは、常盤の言葉だった。
「おっしゃるとおり、人の命の重さは違います。わたくしの命など、水面に浮かぶ塵のごとき軽さにございましょう」
胸に手を当ててゆるりと微笑む。
「しかし、上様はお優しい方です。私は存じ上げております」
「そなたに何が分かる。地下の分際で、上様にお目にかかったこともなかろう」
蔑む容花に、常盤は凛と胸を張る。
「春日様」
唐突に矛先を向けられ、春日は怪訝に首を傾げた。
「あなたは上様の送り込まれた密偵ですね」
容花以外の全員がはっと息を呑んだ。
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答えはない。
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