異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第191話 ダンジョン捜索隊

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「ゼンシン。例の旋盤にこれを装着してくれないか」
「え? ボール盤じゃなくて、旋盤にですか?」
「ボール盤には長すぎて付かないだろ。それと、旋盤というかバイトだが、ちょっとした設計変更を頼みたい」

 というヒキで終わった前回であったが、もうひとつ、全く予想もしていない問題が勃発してしまったのである。


「ユウ、大変だ。すぐミノに戻るのだヨ!!」

 ミノウがやって来ていきなりそう言ったのだ。

 ミノウがわざわざ俺を迎えに来た?! いったいどうしたんだ?

「ハルミが行方不明なのだヨ。大変なのだヨ」
「またかよ。どうせまたエースと一緒だろ? あいつがいれば大丈夫だよ」

「違うのだ。まったく違うのだヨ。今回はトヨタとは関係ない。エースたちはもう地元に帰っている。ハルミは訓練のためにダンジョンにでかけたのだ。そこで行方不明になったヨ」

「訓練なら同行していた連中がいるだろ? そいつらはなにやっていたんだ?」
「同行者をぶっちぎって走って行ったらしいのだヨ。ともかく、捜索隊を出す準備をして」

「分かったすぐ行く。オウミ、お前も来い。ゼンシンはこのドリルをこうこうこうしてああなって、ああしてこうして装着したら、サバエさんとこで試験してもらえ。バイト形状もこうこうこうするんだ。ウエモンとスクナはここで鉄を作ってドリルをじゃかすか作れ。えっと、あとはなにがあったっけか。もういいや、イズナ。あとは頼む。キスキ。この子らを頼む。オウミ、行くぞ」

「わ、分かったノだ。すぐ行くのだ」
「わ、分かったゾヨ。気をつけるのだ」
「わ、分かったのジャ。安心して行ってくるが良い」

「あの私たちも一緒に帰……。行っちゃった」
「口を挟む余地もなかったね……」
「どんだけ早い決断よ。でもハルミ、どうしたんだろ」
「あの人に限っては大丈夫だと思うけど、心配ね」

「ユウはハルミのことになると、見境がないゾヨ」
「「「えええっ!?」」」

「ユウって、まさか、そんな?」
「そうなの? ハルミさんを?」
「あれ、なんかワシ、まずいことを言ってしまったのか?」

「ちょっとイズナ。ここにお座り」
「え?」
「今の話について、詳しく話せ」
「話せ」

「あ、や、ウエモンもスクナも、そんなきつい目でワシを見るでないゾヨ。特にスクナ、ワシは親の敵ではない。い、いや、その、ワシはその、別にそんなに詳しいわけでは、その、ふたりしてなんだゾヨ」

「ハルミさんはソウさんの許嫁ですよ?」
「NTRジャな。まるでワシとスサノウのような」

「「キスキさん!!」」

「およよ、済まんかった」

「それよりハルミさんが心配ですね。いったいなにがあったのでしょう」
「ゼンシン。私……」
「どうした? スクナ。ハルミさんのことはユウさんにまかせておこう。あの人なら大丈夫だ、きっと探し出してくれるよ」

(ゼンシン、そういうことじゃないと思うのだゾヨ)

「あのー。176話で呼ばれて以来、ほったらかしにされてる俺の立場はいったい?」
「私なんて縛られに来ただけですよ!」
「踏まれてもいたようだったゾヨ?」
「だれがキッチンマットですか!!」
「もっと違うマットだったような?」

 いろんなものを中途半端に残したまま、場面はミノ国・タケウチ工房の食堂に移るのである。


「ハルミがダンジョンで行方不明だって? なにか分かったことはあるか?」
「おおっユウ、戻ったか。まだ詳しいことは分からん。一緒に行った治安維持部隊の隊員は、全員でダンジョン内を捜索しているそうだ」
「そうか、それじゃ俺たちの出番なんかないかな?」

「そうも言っておられん。こちらもすぐでかけるつもりで準備している」
「じじいか。しかし素人が行っても、邪魔になるだけじゃないのか?」

「お前は他人ごとだからそんなことを言うが、可愛い孫娘が行方不明と聞いてのんびりしていられるわけがなかろう。嫌なら置いて行くだけだ」
「嫌とは言ってない。分かった、俺も行く。魔王がいれば危険はないだろう。ハルミの行きそうなところはだいたい見当がつくしな」

「む、そうか。この間も最初に見つけたのはユウだったな。そうと決まればさっさと行くぞ。食料と水にランプなどはもう用意してある」
「イテコマシはないノか?」
「「あるかぁ!!」」

 オウミ、空気読め。

「その前に、ちょっと現状を教えてくれ。ハルミはどこに行ったんだ?」
「グジョウにあるダンジョンだ」

 グジョウ? 郡上のことか。そういえばあそこにはあの大きな鍾乳洞があったな。有名な鍾乳洞じゃないか。こちらではそこがダンジョンになっているのか。

「あの大きな鍾乳洞のことか?」
「そのすぐ近くにあるもっと小さなダンジョンだ」
「そこは訓練で行くようなところなのか?」

「ああ毎年新人の研修で行く場所のひとつだ。ハルミにとっては初めてのダンジョン突入だった。しかし、あそこはとても古いダンジョンだが、強い魔物がでるような場所じゃないしそれほど大きくもない。行方不明になるような場所じゃないのだ」

「ハルミはどうして迷子になったのかは聞いたか?」
「誰も迷子だとは言ってないぞ」
「状況からしてそれしかないだろ。同行者がいたんだろ?」
「その同行者をほっぽって、ダンジョンの奥にひとりで突入してしまったらしい」

 自分から率先して迷子になったのか。

「なんでそんな行動を取ったんだろう?」
「理由はよく分からんらしい。ただ、なにかに驚いて暗闇に向かって走って行ったそうだ。止める暇もなかったと隊員は言っておる」
「当然、追いかけたんだよな?」

「ダンジョン内は灯を照らしている部分以外は真っ暗だ。そんなに急に動けるものではないぞ」
「ハルミは走って行ったのに、その連中は追いかけもしなかったのか」
「なんだお前は、怒っているのか? らしくないな」

 え? 俺はいつもと同じだよ? 最初にしなけりゃいけないのは現状把握だ。いつも通りの手順をやっているだけだ。

 暗闇の中。ハルミはなにかに驚いた。そして走って行った。それはなにかを追いかけたのか、なにかから逃げたのか。

 斬鉄の剣士が逃げるか? 追いかけたとすると、相手はなんだ? 魔物か? 普通の魔物を追いかけるとは思えんな。だとすると、斬りたくなるような鉄的ななにかか?

「鉄を追いかけたりはしないのだヨ」
「いや、ハルミの場合は分からん。動く鉄ブロックなんかあったら絶対に追いかけて斬ろうとする」
「だから、動く鉄ブロックなんてものがあるはずがないノだ」

 他にハルミが暗闇で突然ダッシュする理由が浮かばんのだ。

「その辺は行ってみるしかないだろう。場所は分かっている。オウミ様。転送をお願いできますか」

 どうやらじじいが仕切っているようだ。仕方ない、とりあえずは付いて行ってやろう。
 メンバーは、じじいとソウ、それに俺と魔王がふたり。それに。

「私も行くからね」

 涙目になったミヨシである。

「オウミ、4人いるが転送は大丈夫だよな?」
「もちろんなノだ。では、鍾乳洞に飛ぶノだ。ひょい!」

 そして着いた先は真っ暗だった。なんだこれ、どうなったんだ。俺たちはどうなったんだ。俺たちまで行方不明者になってしまったのか。わさわさがやがや。

「おいオウミ、転送場所を間違えていないだろうな」
「間違えてないノだ。ここがハルミが行方不明になった場所なノだ」
「いきなりそこから始めるのかよ!」

 普通はダンジョンの入り口前に着いて、そこでなんだかんだあって、うだうだしてから中に突入するものだろうが。途中を端折ってんじゃねぇよ。

「それがこの話の特徴なノだ」
「お前が言うな!」

「ともかく、これだけ真っ暗では身動きがとれん。灯を点けてくれ」
「了解ノだ。ほいっとな!」

「こ、これは?!」
「思ってたより広いな。天井なんか何メートルあるんだ?」
「後ろが通路になっているから、そっちが入り口側ということよね」
「なるほど、そうだろうな。ここからハルミが飛び出して行ったとしたら、どっちに向かったのだろう」

 そこは、狭い通路を抜けた先にある、ただっ広い空間であった。奥はオウミの点灯魔法も届かないほどの広さがある。
 ホッカイ国で見た洞窟と似ているが、足下が濡れているのと湿度が高いのが大きな違いだ。

 これなら、闇雲に走ったとしてもしばらくの間はぶつかることはないだろう。なにかを追いかけたのならなおさらだ。

 しかし、暗闇であることに変わりはない。絶対にいつかはぶつかる。ぶつかった音を同行した連中は聞かなかったのだろうか?

「こ、こんな魔法があるなんて。俺の持ってきたランプなんか役に立たないじゃないか」
「ソウ、それはそれで必要になるときがあるかも知れない。とりあえず持っていろよ」
「あ、ああ。そうする。そうするけど」

 いまさら魔王の使い勝手の良さに驚いているソウであった。こんなのたいしたことじゃないんだが。

「いやいや、たいしたことなノだ。お主はもっと魔王というものをきゅぅ」
「分かった。あとで聞いてやるから黙ってろ」

「捜索隊はどこに行ったんだろ?」
「5人くらいでチームを組んで捜索していると聞いている」
「闇雲に歩いているのなら効率が悪いな」
「魔物を倒しながら経験値を稼いでいるらしい」

 ダンジョンの攻略をしている場合か!

「え? 魔物がいるの、ここ?」
「そりゃダンジョンだ、いないわけがないだろ。それを退治するのも訓練のうちだ」

「もう帰ろうかな?」
「ユ ウ !!」

 へーい。やれることはやりまーす。

「とりあえず、ここにベースキャンプを張ろう」

 なんだそれは? って顔をしたので、俺は簡単に説明をする。

 早い話が捜索のために拠点である。これだけ広いダンジョンでは、闇雲に歩いても行方不明者が増えるだけだ。

 ここを拠点として灯をつけ、それが見える範囲までをまずは捜索する。灯が見えない場所まで行ったらそこで引き返す。そして状況を報告してもらう。
 
 それからどうするのかは、その報告を聞いてから決めよう。重い荷物はここに置いて、手荷物を最小限にして身軽になって捜索するんだ。それではみんな散れ!

「散れ! ではないだろ。お主は行かないノか?」
「俺はここで荷物の番をする」
「サボってる人がなんでそんな偉そうなの?!」

「もしかすると灯を見てハルミが帰って来るかも知れないだろ。攻略チームが寄るかも知れない。ともかくここを、連絡が取れて情報が集まる場所にしておくことが重要なのだ」
「な、なるほど」
「言い訳もどこにでもくっつくのね」

 聞こえなーい。俺が捜索に行ったら、軽く死ねるぞ。死人を作りたくなければ、お前らはさっさと行ってこい。くれぐれも深入りはするなよ。

 それと、行動は必ずふたり1組ですること。ひとりがケガでもしたらもうひとりが助けを呼びに行けるようにだ。

 というのをなんかの(疾風のように現れるような)マンガで読んだのだ。

 ミヨシとオウミ。ソウとじじいがコンビになってハルミを探しに行った。俺はミノウと待つだけである。あ、ミノウ。お茶とポテチを出してくれ。

「な、なにを言っているのだ。そんなものあるわけがないヨ」
「アイテムボックスにいつも入れているだろ?」
「な、そ、お主、なんで、それを」

「イズナはアイテムボックスにいつも酒を入れているそうじゃないか。聡いお前がそれをやらないはずはないだろ? ほら、もうたもたしてないで早く出した出した」

「うぐぐぐぐ。あとでこっそり飲もうと思ってたのに。しぶしぶ。仕方ない出すヨ。1杯だけだぞ。これはシラカワで獲れた特級茶なのだヨ。すごく香りが高くて」
「ぐびぐびぐびぐび。ほんとだ、冷めていてもうまいな。お代わり」
「うぐぐぐぐぐ。人の話を聞くのだヨ!」
「はいはい、聞いてる聞いてる」

「違うのだ。そうなのだけど、なんか違うのだ。もうお主の眷属を止めたくなってきたヨチラッ」

「そうか、それは残念だ。ただし、止めるときはニホン刀も食器も回収するからな」
「うごがげげげおごごごごご」

 どんな悔しがり方だよ。

「ぱりぱり。しかしこういう場所で食べるポテチは一段とうまいなぽりり」
「うぐぐぐぐぐぐぐ。我らは遠足に来ているわけではないヨ。捜索に来ているのだヨ。あぁぁぁ、そんな高級なお茶をそんなに一気に飲むものではないヨ。せめてもっとゆっくり味わって」
「ぐびぐびぐびぐび」
「あぁぁぁ、まったくもう!!」

 そのときだった。
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