異世界でカイゼン

soue kitakaze

文字の大きさ
230 / 336

第230話 タランチェラ

しおりを挟む
「きぇぇぇぇやぁぁぁ!!」

 エロエロ剣士のニホン刀が炸裂する。

「エロエロ言うな!!!」

 じゃあ聖騎士? のニホン刀が炸裂すると、そのたびに魔物は何体がまとめて消えて行く。

「?も余計だ!」

 文句が多いな。

 グロいのが嫌いな作者は、血だの肉辺だのが飛び散る描写は描けないのである。だから退治した魔物は、煙となって消えて行くことになっている。

 うむ。これで良いのだ。

「やぁぁぁたっぁぁ!!」

 斬撃が炸裂するたびに、魔物が煙となって舞い上がる。そのたびに、こ~ん、という音がする。なんだこれ?

「ユウコにもあの音は聞こえてるのか? もにもに」
「うん、聞こえてるよ、あぁんあん」
「あれはいったいなんの音だ? もにもに」

「ああ、これは経験値を得たときの音です。でも、ハルミさんがほとんど持っていくので、僕らには……ユウさん、なにしてるんですか、こんなところで。不謹慎でしょ!!」

 パーティを組んでいるので、なにもしていない俺にも経験値らしきものが、わずかながら付与されているようであるもにもに。
「ユウさん、タノモさんがめっちゃ睨んでいるのでこの辺にあぁん、あん」

「不謹慎ってなにが? もにもーに」
「そ、それですよ、その手!」
「ハルミの尻を必死で見つめているお前が言えた義理か?」
「なっ。そ、そん、そんなことありありありあり」

 どっちだよ。ないって言いたいのにウソがつけないタノモ純情剣士20才である。そこに前方からハルミが声をかける。

「タノモ。ここはクリアしたぞ。次はどっちだ?」
「あ、はい。次の左の道を選んでください、そうすれば」
「よし、左だな。分かった」

 そう言って、思い切り右に進んで行くハルミである。

「中ボスを避けられ……あぁぁ! そっちは右っ。そっちは違います!! そっちは中ボスが出る方向……」

 これで何回目だろう。このダンジョンの道を知っているタノモは、強い敵がいるところを避けようとナビをしている。しかし肝心なときに限ってハルミは、分かったと言いながら必ず反対の方に突っ走って行くのだ。

 先頭者がそっち行ってしまう以上、パーティメンバーである俺たちもそちらに行かざるを得ず、そのたびに大変な思いをしているのである。

「はぁはぁ。大変な思いをしているのは、僕だけですよね?」
「ぜぇぜぇぜぇ。ついてゆくだけの俺だって大変ぜぇぜぇぞぜぇなのだぞ」
「もう、ユウさん、体力なさすぎ。はい、回復薬のナオール」
「ぜぇぜぇ、すまん。ごくごく。はぁ、一息ついた」

 その合間にも闇にこだまするハルミのかけ声。そして頭の中で聞こえるこ~んという音。あ、またハルミが魔物を倒したな、ということが分かる。

 生存確認もできて一石二鳥の便利な音である。しかし、どれだけ経験値が溜まったのか分からないのだが。

「ユウさん。ぽてっと言ってみて」
「ぽてっ。おおわぁぁぁびっくりした!! なんだこれ。目の前に一覧が出ているぞ。俺のステータスなのか?」
「そう。自分のステータスを見る呪文よ。冒険者登録するとできるようになるのよ」

「そうなのか。よく見てみよう」

・総合評価は初心者。まあ当然だろうな。
・HPは24。少なっ!! 俺のHP少なっ。 こんなの簡単に死んじゃわない? 石につまずいて転んだだけで0になっちゃわない?
・SP(スキルポイント)は7,880。……多くね? なんのスキルのことだろう?
・攻撃 4。やかましいわ!!
・防御 2。放っとけやぁぁ!
・素早さ 14。もういらん、こんなステータス。

 ハルミのように特殊項目はなくて良かった。からかうのは好きだが、からかわれるのは好きじゃないからな。

「なにを自分のステータスにツッコみを入れてるんですか」
「いや、いろいろとな。それにしても俺ってどんだけ偏った能力なのかと。そういえば、ユウコはどんなものだ?」

「え? 私の見たいの?」
「おう。教えろよ。俺には秘書の能力を把握しておく必要があるからな」
「えっち」
「なんでだよ!!」

「私のはこんな感じよ」 と言って教えてくれた。

・総合評価は超級 えっ!?
・HP 2,700。ええっ!?
・SP 4,240。おおっ!! すごいな。でもそれより多い俺って?
・攻撃 9,820。 おいおいおい。このパーティではダントツじゃねぇか。
・防御 4,240。攻撃力ほどじゃないが、それでもすごい。ハルミの30倍に近い。俺の……まあそれはいいや。
・素早さ 11。俺以下!? これじゃ咄嗟のときに役に立たない……そういえばずっとそんな感じだったっけ。

「ユウコって、実はすごい奴だったんだ」
「えへへ。それほどでも」
「ハルミみたいな特殊項目はないのか?」
「え? いや、それは、ない、かなー」

 誤魔化すのヘタなやつか。まあいいや。ユウコが、ダンジョンでも結構使い物になるということだけは分かった。あれだけのHPや防御力があるんだから、時間稼ぎには充分であろう。

「私のこと、生け贄を見るような目で見ないで!」

「ん? ステータスがここまで上がっているということは、ユウコはすでに冒険者をずいぶんやっていたということか?」
「長く生きていると、冒険者になりすますことも必要だったからね」
「なりすます?」
「ホッカイ国では、冒険者なら税制優遇措置が受けられるのよ」

 ああ、そういうことか。あそこは軍事国家だったな。腕の立つ人材を育成するためだろう。

「税金なんか払っていたら、私たち餓死しちゃうもん。だからみんな年頃になると冒険者登録するのよ」

 あぁ、そんな悲しいことを言わないように。おっぱい揉んだろ、もにもに。

「え? あ。そ。ああん、あん。ユウさん、脈絡のないとこでしないでよ。私の準備が間に合わないよ」
「なんの準備だよ!」
「心の準備よ。私は素早さが低いんだから」
「いつもはもっと反応が早いのに」
「それは予測しているからね」

 おっぱいを揉まれる予測。別にそんな予測はいらんのだけど。

「だけどお前はそれだけの攻撃力を持っていてなんで後衛……回復担当だからか?」
「ううん。私は後衛だけど攻撃担当よ。回復薬はそれぞれが持つことになってたし」

「え? お前が。攻撃担当? その胸で? むにっ」
「いや、攻撃に胸は関係ないでしょ、あぁん。胸はハルミさんにかなわないわよ」

 あ、そうか。

「まさか、攻撃魔法使えるのか?」
「そりゃもちろん。あの程度の魔物ならまとめて1万匹くらいならなんとかできそう」
「おいっ! それならダンジョン攻略なんか簡単じゃないか!?」
「うん、このレベルなら簡単ね。だからハルミさんにまかせているのよ」

 ……簡単だからまかせるのか? できる自信があるなら、自分からやりたがるものじゃないのか。いまのハルミのように。

「だぁぁぁぁとぉりゃぁぁぁ」

 ……ハルミはハルミでちょっと違うか。あいつは自信がどうこうより、ああいうのが根っから好きなんだ。経験値云々でさえも言い訳に聞こえるぐらいに。

 ユウコは基本平和主義者なのだ。自分を前に押し出すことなど考えず、ただひたすら……なにを願うのだろう?

「ハ、ハルミさん。その角を曲がった先に中ボスがいます。しかし奴には剣技は効きませんので、僕が魔法でだぁぁぁぁぁ、だから効かないってばぁああぁぁ、突っ込んで行っちゃった、もういや、こんな先頭打者!!」

 タノモにさえも嫌がられる暴走列車ハルミ号。どちらにしても、俺は後ろから見ているだけだ。がんばれーとエールぐらいは送っておこう。

 角を曲がったかに見えたハルミは、いきなりUターンして戻ってきた。そして追いかけていたタノモとごっちんこ。

 ああ、これはフラグが立ったな。ジャムトーストの成分が足りないが、その分一緒に裸になった仲だし。

「僕はパンツを穿いてまし……」
「はらほれひれはれっーー」

 あらあらあら。ふたりとも落ちた。こんなところで仲良くおねんね、楽しいなー。おでこに落書きしてやろう。ハルミにはエロエロ剣士っと。タノモ……はどうでもいいや。放っておこう。

 さて、ユウコ。こいつらが起きるまでちょっと休憩だ。

「ユ、ユ、ユウさん」
「なんだ、顔が青ざめてるぞ? 休憩するからナオールをくれ。疲れたんだ」
「そ、そ、それどころじゃありません。ほ、ほ、ほら、そこ!」

 ん? そこってど……どわぁぁぁぁぁぁ。なんだありゃぁぁぁ。

「さささっきタノモさんが言っていた中ボスですよ!! あれ、肉食系ですよ! 食べられちゃいますよ!!」

 なんかタランチュラ的な奴がこっちを睨んでいる。燃えるような真っ赤な目が不気味だ。

「よし!」
「ユウさん?!」
「ユウコ、俺を担いで逃げろ!」
「そのふたりが食べられちゃいますよ!!」

「あんな固いものが食べられるわけないだろ!!」
「あの蜘蛛は、なんでも溶かす溶解液を獲物に注入して、柔らかくしてからちゅうちゅう体液を吸うんですよ!!!」

「よし!」
「今度はなんです?」
「ユウコ、俺を担いで逃げろ!」
「結論がひとつも変わってませんよ! あのふたりどーすんですか!?」

 タノモの道案内で、本来なら避けて通るはずだった中ボス・タランチュラ。それを退治しに行ったはずのハルミが、苦手な虫(ちなみに蜘蛛は節足動物であり昆虫ではない)だったために、大慌てで逃げてきた。そして追いかけていたタノモとごっちんこして、共倒れとなった。

 2トップを失った俺たちパーティは、全滅の危機に瀕しているのである。

「そうだそうだ。そうだ、ユウコを忘れていた」
「なななん、なんですか」
「お前が攻撃すればいいじゃないか。あんなものお前の攻撃魔法で」

「通用するはずないでしょ!?」
「だってお前さっきは1万匹がどうって」
「私のは範囲魔法だから、広い範囲に攻撃ができるのよ。だから雑魚なら一気に殲滅できるの」

「だからそれをやれと」
「だけどレベル50を越えたボスクラスになると、まるで刃が立たないのよ。彼らにとってはアリに咬まれた程度よ」

 起きていても役立に立たないふたりがここにいる。目の前には気を失って倒れている役立たずがふたりいる。その先には、お腹を空かせているような気がする体長3mほどのタランチュラ。

 うん、終わったな。230話続けたきたこの話も。



 こらこら。勝手に終わらせないの。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

一流冒険者トウマの道草旅譚

黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。 しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。 そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。

処理中です...