異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第245話 ダンジョンで儲け話

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「いてててて。あぁ、頭が痛い。この痛み方は二日酔いだな。あぁ、あんなに飲むんじゃなかったなぁ……」

 とボケても誰もツッコんでくれない。そんな深夜に俺は目を覚ましてしまった。

 喉が渇いた、水でも飲んでこごんっ! あ痛っ。なんかに当たったぞ? なんだ、これ。ふにゃふにゃしているような、固いような?

 ハルミならおっぱい以外はカチカチだからすぐに分かるが、これはわぁぁぁお。スクナかっ!! 当たったのはスクナの頭だったか。ふにゃふにゃは肩の部分でした、残念!!

 なんで同じ蒲団で寝てるんだよ!!

「すぴすぴよぴよぴー」

 寝息がアシナになっとる。小鳥寝息がブームなのか。可愛い寝顔しやがって。キスしたろか……。

 い、いかん、なぜか前世の記憶が邪魔をする。あっちなら確実にこれは犯罪だ。

 しかし、ここは異世界。前近代的ニホンである。まだ石油なんかなくて、だけど魔法があるという世界である。それなら、ちょっとぐらい良いかなって。

「すぴすぴよぴよぴー」

 だめだ可愛い。トモカクカワイイ。

「ちょっと違うようだけど?」
「わぁあ。びっくりした! ハタ坊か。脅かすなよ」
「ツッコみ役が必要かと思って出てきてやったんだよ」
「それはご苦労なこって!」

「邪魔なら引っ込むけど?」
「あ、そうだ、お前に聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと?」

「あの数当てゲームのことだが」
「なんこゲームって言ってあげて」
「お前はどうして、相手の持っている棒の数を、あんな簡単に当てられたんだ?」

「それは簡単よ。腕筋肉と指の筋の動きを見ると、だいたい分かるもん」
「指の筋? 筋肉じゃないのか?」
「指には筋肉はないよ。筋肉は腕だけ。手のひらになにも持っていない場合は、腕の筋肉が弛緩しているから、それだけで分かるの」
「ほぉぉ」

「後は本数だけでしょ。これはどの位置で持っているかによって多少変わるけど、だいたい規則性があるのよ」
「規則性があるのか?」

「3本持つと手のひら全体に力が必要だからそれで分かる。1本のときは、指の筋のどれが1本だけが緊張しているからそれで分かる。すると、それ以外なら2本持っているということになるの」

「それで見分けていたのか」
「最初にアシナの試合を見てて、気づいたのよ」
「お前もすごいやつだな。それ、俺にもマネできるだろうか?」

「ちょっとやってみる? 棒ならそこにもあるわよ」
「これ割り箸じゃないか」
「割れば似たようなものでしょ」

「そうか。じゃ、ぽきぽきぽきっとな。ほい、持ったぞ」
「3本」
「あっさりと当てやがった?!」
「少しは隠す努力しなさいよ」

「じゃあ、お前が持ってみてくれよ。俺が当てる」
「はい」

「えっと2?」
「1でした。これは?」

「えっと2?」
「3でした。これは?」

「えっと2?」
「1でした。ずっと2と言い続ければいつかは当たる作戦は止めなさいよ!!」

「だってまるで分からないんだもの」
「ユウには、なんこの才能はないわね」

「そんな才能はいらんけど。で、あの対戦相手だが、どうやって隠していたんだ?」
「ああ、あれね。器用なことしてたわね。常に全部の筋に力を入れてたのよ。それで最初は間違えちゃった」

「だから、やりますわね、って言ったのか」
「そう、すごく不自然な筋の動きだった。ずっとあれをやられたら勝てなかったかも知れないわね」

「最初の試合。相手は1本だけ持っていた。お前は0だった。だけどお前は合計で2って言ったな?」
「そう。筋が不自然なのはすぐ分かったけど、どう不自然なのか、最初はまったく分からなかった」

「それでどうして2本って言ったんだ?」
「私は0だったから当てずっぽうで言ったの。相手が3本って言ったから増やすわけにはいかないでしょ?」
「それもそうか。つまり、最初のうちはガチの勝負だったんだ」

「そう。読めないからそれしかなかったのよ。あれは見事だったわ。まんまんとやられちゃった」
「だけど、途中から一方的に試合になったな」

「うん。あれ、すごく疲れるみたいね。あの体制で特定の指だけを動かすなんて、武道の人にとっては鍛えるところじゃないからね」
「あんなとこ鍛える競技なんかあるのか?」

「楽器やってる人は鍛えてるわよ?」
「ああ、そうか。楽器か。ピアノもギターも確かに指を使うな。なるほど。しかし、剣を振るう人間にはあまり関係はないということか」

「そう。だからすぐに疲れてブルブル震えてた。ちょっとおかしかった」
「それからはまた百発百中か」
「そう。たまに、わざと負けてあげてたけどね」

「そうやって余裕かましてるから、最期は危険だったんじゃないのか」
「ちょっと飲み過ぎちゃった、えへ。でもあれ、ほんとに良いお酒よ。おいしかったもの」

「ん? わざと負けてあげてたって、お前、自分が飲みたかったからか!!?」
「その通り! おいしかった。久しぶりに酔ったわぁ。あんな試合なら毎日でもOKよ!」

「OKよ、じゃねぇよ! 危ないことすんな。こっちはいろいろ掛かってたんだぞ」
「いいじゃないの、勝ったんだから。それより約束を忘れないでよね」
「ほんとにお前って……約束?」

「そう、私のダンジョンを改築するって話よ。勝ったんだから、その資金を出してくれるんでしょ?」
「ああ、それか。もちろんその約束は守る。ダンジョン経営ってのは儲かりそうだからな。テンペストでもやってたし」

「どこの話?」
「あ、いや、それはこっちの話。あ、そうだ。ダンジョンと言えばお宝が付きものじゃないか? それは用意できないか?」

「魔物に仕込むのは無理よ。だけど、隠し部屋を作ってそこにこっそり入れておくぐらいはできるわね」
「その場所は把握できるものか? なくなったら補充も必要になるが」

「そりゃ、私のダンジョンだもの。その場所までは転送で飛べいいし。でもそれはおまけぐらいにしたいわね。あそこの一番の目的はレベルと対戦スキルを向上させることだから」

「冒険者を鍛えるダンジョンか。そのコンセプトは良いな。それでいこう。それでも、ボスクラスを倒したら、なんらかのご褒美があったほうがいい。それはこっちで考えよう」

「でもそこまでするなら、入場料を取らないといけないんじゃない? お宝の分だけ費用がかさむわよ?」

「いや、それだとそっちがメインになってしまう。商品稼ぎ? なんかが来るのは好ましくない。あくまであそこは研修場という位置づけなんだろ?」
「うん、だけどご褒美って言うから」

「お前はまだ知らないだろうけど、シキ研にはいろいろな開発商品がある。斬れ味抜群のニホン刀とか、切れ味抜群のダマク・ラカス包丁とか、錆びない包丁とかな。売値は高いが生産コストはそれほどない商品だ。それをお宝にしようと思う」

「それなら、いっそポイント制にしたらどう?」
「なんだ、ポイント制って?」
「入り口でチェックしておけば、その人がダンジョン内でどれだけの魔物を倒したのかが分かるのよ」

「ほぅ。それは経験値が増えた分ってことか」
「そう。だからその増えた経験値をポイントとしてカウントすれば」

「なるほどな。そのポイントで、商品と交換できるようにしようってことか」
「そうよ、それなら楽してお宝だけもらう、なんていう不心得者は来ないでしょ?」

「そうだな。自分が倒した魔物の経験値がポイントとなって、それが商品と交換できるということなら、インチキはできないわけだ」
「コンセプトにもかなうし、入場料も取れる」

「「おおっ!!」」

 思わず拳をぶつけ合う俺たちである。

 ダンジョン攻略、なんてことを考える必要はなかったのだ。冒険者に修行してもらうことが大切なのだ。攻略が目的なら、攻略したとたんに終わってしまう。これはゲームではないのだから、上がりというものは必要ない。なんどでも足を運んで戦って、戦闘スキルと経験値を手に入れてもらうのだ。

 その上に経験値がポイントとなって商品まで貰えるのなら、ポイントをためてニホン刀(仮)を手に入れたいという者も現れるに違いない。必然的に彼らは何度も訪れるリピーターとなってくれるだろう。しかもその方法なら、運営側もいちいち景品を補充するという面倒なことをしなくてもいい。

「真面目な冒険者を応援することにもなるし」
「俺たちは儲かるし」
「「うひゃひゃひゃひゃ」」

「アイヅの富国強兵策の一環にもなるし」
「お菓子やエルフ薬も、そこならガンガン売れるだろうな」
「「うひゃひゃひゃひゃ」」

 思わず拳をぶつけ合う俺たちである。その2。

「ところで、その子、起きてるけどいいの?」
「ほぇぇぇぇ!?」

「ねえそれ、ホッカイ国にも作って」

 スクナ、起きたんかい! どこから聞いてた?!

「寝息がアシナになっとる、ってとこから」
「初めっからじゃないか、定期。 起きてたんならそう言えよ!」
「キスしてくれるかと思って待ってたのに」

「罠を張るな、罠を!! で、ホッカイ国でダンジョンとはどういうことだ?」
「それ、冒険者を育てることができるダンジョンなのよね?」
「ああ、そのための設計にするつもりだ」

「ホッカイ国の戦力がそれで充実すれば、私みたいに軍隊に取られる女の子は減るんじゃないかなって」

 あ、そういえば。ホッカイ国はニホンであってニホンでないような複雑な立ち位置の国であった。

 軍事国家といってもいいぐらいだ。だからちょっとでも魔法が使える人間は、幼くしてすべて軍隊に入れられしまうという話だった。

 スクナは親が隠していたために、魔法が使えても徴兵から逃れていた。そしてシキ研に就職が決まったので、どうにかそれを回避できたのだ。

 しかし、同じような立場の人間がまだまだ大勢いるはずである。その子たちのために、ダンジョンをホッカイ国に作れとスクナはそう訴えているのだ。

「スクナの言うことは、一理ある」
「うん」
「ホッカイ国でダンジョン経営することは、こちらに問題はないからさっそく検討を開始しよう。しかし」
「うん」

「それで救える子がどのくらいいるか。それは疑問だ」
「そうかも知れないね。でも、少しぐらい減らないかなって」
「その程度で良いのなら、実現させよう。だが、あの国は特殊だ。兵が強くなったら他国に侵略なんてことになるかも知れない。逆効果になることだって考えられるぞ」

「そ、そうか。そうだね」
「まあ、あそこにはカンキチがいる。それに、いざとなったら俺が持っている眷属を総動員してでも、そんなことは阻止するけどな」
「う、うん、そうだよね」

「ただ、兵役に取られる子が減ることまでは期待してくれるな」
「うん。そうだね。そうする」

「それなら良い。アブクマの経営が軌道に乗ったら、次はホッカイ国だ。それでいいな?」
「うん、ありがとう!!」

 ホッカイ国にダンジョンってあったっけ? ……あ、隠れ里?!
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