異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第262話 緊張感がなくなるお話

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「ぱしぺしぱしはぁはぁ、お主もなかなかやるではないか、ぱしぱっし」
「がじがじあんたこそ、そこそこできるわね、がじげじごじ」

 それまだ続いてたんですか?! もういい加減にしないさい!!

「「はーい」」

 先が思いやられるなぁ……。

「ところで、そのホシミヤですが、どうやって行けば良いのでしょうか。地図とかあったら貸してもらえますか」
「地図は不要です。この家の裏に入り口がありますから」
「はい?」
「ん? 聞こえまませんでしたか。家の裏庭に入り口があります」

「「はぁぁ?!」」

 声を上げて見つめ合う私とハタ坊。あれ? どうして同調してくれたのハタ坊だけなの?? なんでなんで、どうして? ここってほぼダンジョンの入り口だってこと? さっきは行きにくい場所だって言ってたじゃない。

「そりゃ、これだけの家ですからね」
「当然のインフラでしょう」

 ナガタキ様とシロトリさんが付け加えて言った。これだけの家? インフラ? 当然?

「そうです。これだけの古い家になると、よく行く場所には設置してあるものなのですよ」

 古い家には設置してあるもの? いったいなにが?

「ゲートです」

 なにその自衛隊斯く戦えり?!

「そんなものがここにあるのですか?」
「ホシミヤだけじゃありませんよ。我々の仲間のところや毎日行く畑や田んぼ、牧場などには、必ずゲートが設置してあります。また、主要都市、ダンジョン、駄菓子屋、神社仏閣、精霊の住み処などにも設置してあります」

 ちょくちょく不似合いな単語がでてくるのは、いつものとことだからもうツッコまないけど、ここは流通の要なのね。

「ゲートということは、そこからその場所に繋がっている、みたいな?」
「その通りです。だからホシミヤにもすぐに行けますよ」

 すぐ行けるようにゲートまで作ってあるのに、どうしてホシミヤは行きにくい場所なのだろう?

「帰ってくるときも、そのゲートは使えるのですか?」
「はい、使い方さえ分かっていれば使えます。調べが済んだらそれで帰ってきてくださいね」

 帰りの心配をしなくて良いのは、ちょっと安心できる話ではある。しかし、不安もある。

「じゃあ、魔物がそれを通ってこちらにやってくるなんてことはないのですか?」
「呪文が必要ですからね。言葉をしゃべれない魔物では無理です。しゃべれても呪文を知らなければどうにもなりませんし」

「なるほど。呪文は秘密なのですね」
「はい、女神界では情報漏洩不許可法度事項となっております」

 なにそれ? 私は知らないけど、ここまで読んできた読者はみんな知っているみたいなお言葉(覚えているとは言ってない)。

(第37話で、まだ自分は女神だと言い張っていたころのオウミが言ったセリフです。念のため。法度と不許可は同じ意味じゃないかというツッコみは禁止です)

「そ、そ、そうですか。それでは、私たちはゲートを通るために、その呪文を誰かが覚えないといけないのですね」
「簡単ですから覚えて行ってください。それとゲートのある場所にはキーアイテムがあります。それは普通ならその場所にはあり得ないようなものです。その前に立って、あーみーまー〇〇〇と唱えてください。〇〇〇のところが転送先の場所です。もちろんゲートの設置されたところでないと移動はできません」

 ちょ、ちょっとちょっと。その情報漏洩不許可なんとかって、極秘って意味じゃなかったの? みんなの前で言っちゃってるけど良いの?! ここにいる全員が聞いちゃったよ?!

「あーみーまー、って呪文にツッコむとこだゾヨ?」

 そんな古い人形劇なんか知らないもん。なるほど、こうやってこの話から緊迫感というものが、どんどん無くなって行くのね。納得だわ。

「そこで納得すんなよ」 とハタ坊が言った。

「そ、そ、それでは」
「はい」
「私たちは出かけようと思います」
「分かりました、いってらっしゃいませ。それではゲートまで案内します」

 イリヒメに案内されて裏庭に回り、ここですと言われた。そこには。

「なんで玄関がこっちにもあるのよ!?」

 そう叫んだのはハタ坊である。

 瓦屋根まで付いた総檜作りの立派な門がそこにあった。さきほど入ってきた玄関よりも、こちらのほうが遥かに豪華である。まるで古いお寺の入り口のようである。

 だだしこの門を開けても見えるものは壁である。つまりは行き止まりである。ただの飾りにしかなっていない。

「ね? 普通ならこんなとこにあるはずのないものでしょう?」

 まるで謎解きだ。しかしこんなものに意味があるとは思えない。ゲートのキーアイテムの条件が「普通ならあり得ないようなもの」というのなら、こんな立派なものである必要はないのだ。

「お金持ちのこけおどしね」
「暇つぶしで作ったと思うゾヨ」

 当たらずとも遠からずであろう。

「そ、それでは。ボケもこれが最後ということで」
「ツッコみ役ご苦労様です。あなたはたいしたものですよ」

 やっぱりツッコみ役にされていたのね!! あーみーまーホシミヤ!!

 そんな艱難辛苦を乗り越えて、私たち5名はホシミヤにやってきた。

 いきなりダンジョンの中に入るのかと思ったが、そうではなくここは神社の鳥居前であった。

 石造りの狛犬が2匹、私たちを出迎えた。向かって右が大きく開けた阿形。左は口を閉じた吽形。これは仁王像と同じ形式である。

 それを軽く撫でながら中に入ると、キレイに砂利が敷き詰められた参道となっていた。
 じゃがじゃがと音をたてて歩いて行くと、まもなくそれは現れた。本殿の真ん前である。

「う、うわぁぁぁっ!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
「うわぁ、すんごい!!」

 上から私、ハタ坊、ナガタキである。ナガタキだけが、どこかわざとらしい感想を言ったようであるが、私はそれで確信した。

 女神であるイリヒメ様が行くにくい場所と言った意味を。

 そのことについては、次稿のお楽しみだー。

「久しぶりにヒキらしいヒキだゾヨ」
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