異世界でカイゼン

soue kitakaze

文字の大きさ
46 / 336

第46話 風雲急を告げる

しおりを挟む
「ミ、ミヨシ。その話は本当か?!」

 というドロドロでくねくねな会話は横に置いとくとして。

「置いちゃうの?! これからぐっちゃらごっちゃらと盛り上がるところなのに?」

 あ、この話にはそういうのいらないから。回りくどいドロドロ話は嫌い。

「お主ってやつは、ほんとにもう、なノだ」
「オウミ、発言の意味が不明だぞ」
「言葉をなくしているノだ! 誰かこいつをなんとかするノだ」

 なんとかなんか、されてたまるか。

「あ、そうだ、ソウ」
「ん? なんだ?」
「ベッドシーンになったら呼んでほし痛だだだだだだだだだぁ」

 なんでミヨシが噛みつくんだよ! 俺の腕に歯形がついたらカッコ悪いだろ。

 止めろってあだだだだ。こんにゃんろ仕返しだ、おっぱい揉んでやあだだだだだだ。もにもにも、あだだだ、もみもみももにだだだだだっ。

「腕を噛みつかれていても、胸を揉みたいという欲望だけで対抗しているわけね、それはまあ理解できるわ」
「ハルミ、そんなこと理解しなくていいから止めてやれよ」

「あら、ソウはちっともそういうことしてくれないわよね? どうして?」
「どうして、って言われても。え? ハルミ、期待してたのか?」
「そ、そ、そういうんじゃないわよ!! 馬鹿なの?」

 あだだだもにもにあだもみみもみ。あれ? あのふたりの雰囲気がちょっと変わっぞあだだだだ、もみもみもになんかこの話らしからぬ新たな展開にいでででででで、ミヨシ、お前は食いついたら離れないすっぽんか!

「はぁはぁ。ユウはもう少し人の感情ってものに敏感になりなさいよ!」
「俺の下半身はすでに敏感あだだだだだだだだ」

 まだ続くんかい。そろそろ下の骨にまで届いてしまいそあだだだだだ。

「あーみんな、仲がいいのは良いことだが、ちょっと聞いてもらいたいことがある」

 なにごとかと、視線が一斉にそちらを向く。発言したのはじじいだ。そして横にいるのは

「ぜんぜん知らない人?」
「私たちを育ててくれた村長さんよ」
「なるほど、ぜんぜん知らん」
「あんたも育てられたのよ!」

「薄情なやつなのノだ」
「じじいに興味がないが、おっさんにも興味はないんだよ」

 というより、そもそも俺はこの人と会ったことはない。世話になったのは俺が入れ替わる以前のユウだ。

「みなさん、お久しぶりじゃ。村長のウカイだ。今日は、鉱山譲渡の契約でこちらにお邪魔したのだが、ついでに皆の顔を見ておこうと思ってな」

 こちらは別に見たくはないが。

「おぉ、お前がユウか、すっかり大きくなった」

 するりっ。

「のう。身長も伸びて大人の」

 するりっ。

「体つきになりつつあるの。もう、身体のほうは丈夫になった」

 するりっ。

「のか。なんで逃げるんじゃよ!」
「なんでハグしようとすんだよ!」

 いきなり抱きつこうとすんな。俺にその手の趣味はないというのに。

「スキンシップではないか。あの頃は可愛い子だったのになぁ、少し手を離れるともうこれか。ワシは悲しいぞ」
「おっさんが悲しがっても可愛くないからやめとけ」

「……その乱暴……大人びた言葉使いはここで覚えたのか?」

 あ、いや、それは、その、なんだ。

「社長から教わりました」
「おいっ、ワシはそんなこと教えた覚えはないぞ!?」

「そ、そうか。ミタケ、後で話がある」
「ぐっ」

 じじい、俺を睨むな。

「じゃあ、そちらの麗しい女性はミヨシとハルミか? もうすっかり大人の女性になったのう。ふたりともいまだに夜な夜な刃物を磨いておるのかの」
「「それはもちろん!」」

 もちろん? こいつらはそんな小さな頃からこそういう性癖があったのか。ってか、いまだにやっているだと?!

「「性癖言うな!」」

「村長さんもお元気そうで。3人目の奥様はご健勝ですか?」

 ミヨシ? さらっと3人目って言った? 口調に非難のニュアンスが混じってないか。

「あぁ、えっと。ミヨシが卒業したのは……ああ、そうか。まだ知らなんだか。今は4人目じゃが、元気にしておるよ。いつでもいいから、たまには孤児院に遊びに来ておくれ」

 なんてお盛んなやつだこと。それとも、村長になると嫁はいくらでももらっていいという風習がここにはあるのだろうか。

「「じーーーー」」

 ふたりの表情からすると、そうでもないみたいだ。

「そんな冷たい目でみるでない。し、仕方なかろうが。実家に戻ったまま帰ってこなかったり、水虫の薬を買いにいったきり帰ってこなかったり、窓を拭いていたはずが不意に散歩にでたまま帰ってこなかったり」

 こいつの嫁は、どこかに行くと帰ってこない定期。

「そんなんばっかりなのじゃから。ワシだって寂しいのだよ」
「まあ、村長さんの女運の悪さは分かってはいますけどね」

 女運が悪い、でまとめていいのか、それ。

「お前はアチラか! 変わっておらんの。魔法の修行はどうだ? 進んでいるか?」
「はい、ユウさんのおかげで毎日、欠かさず魔法を使うことができています。おかげでずいぶん上達しました」

「そうかそうか。ユウのおかげ? でもよかったの。ここに丁稚に出るときは、お前の能力が生かせないかと心配したものだが、魔法を使う仕事ができたということか」

「はい、ユウさんが、ユウさんが、わざわざ作って、くれたんですずずず」
「泣かなくても良いぞアチラ。ユウ、ワシからもお礼を言うぞ」
「や、それは、その、そんなことは、別に」

「ユウは5才で丁稚に行ってしまったから知るまいが。アチラはな、孤児院では歴代最高の魔法使いの素質の持ち主だったのじゃよ。天才と言ってもいい。だが、魔法を使う仕事は需要の割になり手が多くてのう。ワシのコネではどこにも送り込めなかった。本当に申し訳なく思っておる。それを拾ってくれたのが、タケウチ工房だったのじゃよ」

 じじい、お前って意外といい奴なのかと睨んだら、意外だけは余計だと睨み返された。人に歴史ありか。アチラが魔法の天才だったとは知らなかった……あっ、それでか! 

 それで、あんなわけの分からない魔法の使い方をしていたのか? 洗浄水に回復魔法とか、無理に魔法を使わせるための方策だったのか?

 ん? じゃあそこまでして魔法を使わせる理由はいったいなんだろう?

 別に誰もいないところで爆裂魔法をぶっぱな……すのは危険だから止めたほうがいいが。ひとりでも魔法の練習ぐらいできそうなものだが。

「ところでな、忘れていたがついでに言っておくことがあったのじゃった。いま思い出した」

 なんだろ? とじいいも含めて村長に注目が集まる。村長はとんでもないことを言った。

「北のイズナ様が軍を起こしたらしい。どうやら、このミノウ様の領地に攻め入ってくるつもりのようじゃ。皆もそう心に刻んで、これからも励むのじゃよ」

 ……軍を起こした? 攻めてくる?

 ものすごいことをサラッと言ったようなんだが。それ、なんかのついで言う程度のことなのか? この世界、そういうのって普通なのか? イズナって誰?

 真っ先にツッコんだのはじじいだった。

「お主!! そういう大事なことは真っ先に言わんかぁぁぁぁぁぁぁ」

 やっぱり、そうですよね。

「そんな大事なことをどうして忘れているのよ!」
 ハルミ、もっと言ってやれ。

「ついでとかで言っていい次元の話じゃないでしょ、それ」
 ミヨシの発言は当然である。

「励めっていったいなにを励めというのだ!!」
 じいいの正論である。

「とりあえず心に刻んでおきます」
 アチラ、真面目か。

 そんなこんなで、みんなにぼっこぼこにされた村長なのであった。

 この話では本来あり得ないほどの焦げ臭い話がでたところで、、風雲急を告げるヒキである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。 大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。 目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。 これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。 ※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...