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第77話 魔法少女・ウエモン
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たたたたたたたたたっ。
と、廊下を走る軽快な足音がする。
どぉぉぉん、ばぁぁん、という扉を開けたとおぼしき音が続く。しばらくするとまた、
たたたたたたたたたたたっ。
という音がして、ばぁぁぁぁぁんという音と共に、計算にいそしむ俺のいる食堂の扉が開けられた。
「ああっ、こんなとこ坊主がいる」
誰のことだ? と周りを見渡すが、俺の他には誰もいない。俺は長髪でこそないが坊主頭にはしていない。この工房で坊主といえば、ゼンシンとコウセイさん(の一部)ぐらいなものだ。
そいつはじっとこっちを見ていた。身長は130cmぐらい。体重は分からん。バストからヒップまでがほぼ一直線なおかっぱ頭な女の子のようだ。
ドアを乱暴に開けたり走り回ったり、しつけがなっていな。この近所の子なのだろうか。どこから入り込んだものやらこの傍若無人な小動物。タケウチ工房を走り回っているようだ。社員の誰かの子だろうか。
そいつが言うに事欠いて、俺のことを坊主とか呼びやがった。ケンカ売ってんのか。
「おいこら坊主、なんか言え」
「むっ。ここはお遊戯場じゃない。遊ぶのなら外であだだだだだだだ」
いきなり腕に噛みつきやがった!? お前は特定外来生物か!!
「あだだだだ。離せ! なんだお前は、どこのどいつだあだだだだ」
「わふぁひは、ふへほん。ほほにひてひゃったそ」
ふへほん? 誰だよあだだだだだ。
「いだだだだだ。誰かこのカミツキガメを引き離して、駆除してくれあだだだだだだだ」
「あらら。こんなとこにいたのウエモンちゃん。あらまぁ、もうユウと仲良くなったのね」
ミヨシ。これのどこが仲良くなったように見えるんだ。って、ふへほんじゃなくてウエモンなのか。これが例の新人か?
男の子の名前だと思ってたのに、どうみても女の子なのだがだだだだだ。
もういい加減にしやがれ、ごっつんと思い切り頭を殴ってやった。
「ぎゃぁー」
ぎゃーシリーズはもう終わったっての。悲鳴を上げたおかげでやっと離れた。あー痛かった。わお、すっごい乳歯の歯形がついてるじゃないか。どうしてくれ、ん?
「わぁぁぁぁぁぁぁん。この坊主が殴ったぁぁぁぁぁ」
「やかましいわ! お前が噛みついたからだろうが。てか年上に向かって坊主はやめろ小動物。いててて、こっちのほうが何倍痛かったことか。そのぐらいで済んだことに感謝しやがれ」
「もう、ユウも大人げないんだから。ほらほらウエモンちゃん、こっちに来なさい」
俺って大人なのか子供なのか、どっちかにしてもらえませんかね?
「ううぅぅぅ。このやろう、覚えてやがれ、ぐずずずっ」
それはこっちの台詞だ。これが今日からここの丁稚になるというウエモンという魔法少女との出会いであった。
このとき俺は固く誓ったのだ。こいつとは、今後も絶対に関わらないと。
それが壮絶なフラグであることに、読者はすでに気づいているだろうけれども! ちくしお。
その生意気な小型台風はあちこちを荒らしまくったあげくに、やがて食堂の端っこでカゴに入れたまま放置してあった、まだ剥く前のカカオの実に目をつけた。
それを見つけるやいなや飛びつくようになで回し始めた。なにか惹かれるものがあったのだろう。
皮を剥いていないままなので臭うはずはないし、特に目立つこともない実だ。そんなものにわざわざ目をつけるなんて特異技能の持ち主か。うん〇にやたら興味を持つ子供と同じか。
「なにこれ? 見たことない実……熱っ熱っ。なんだこれ、ミヨシ!! 熱いじゃないか!!」
「もう勝手に走り回らないで。これからゆっくり見学させてあげるから、あれ? 熱いのそれ?」
「こんな危険なもの、そこいらいに置いてちゃダメでしょうが。私が危険でしょ!」
お前が気をつけやがれ。でもあれ、カカオの実だよな。なんで熱いんだ?
俺はなぜかそれが気になった。小動物はどうでもいいが、どうしてなにもしてないのに熱くなるのだろうか。心にひっかかったのである。
俺は無意識のうちに立ち上がって実に近づいていた。噛みつこうとする小動物を軽くいなして、実を持ち上げてみる。なるほど、確かに熱い。
熱いとは言ってもやけどするほどの温度ではなさそうだ。持った感じでは40度をちょっと超えるぐらいか。
これはあれだ、発酵熱だ。この実は中で発酵している。ミノウを酔わせたアルコールが、この実の中で生成されようとしているんだ。
そのときピンときた。発酵する実。ミノウを酔わせたアルコール臭。白から茶色まである実の色。茶色の実のほうがネバネバが多かった。
そんな点と点が繋がってやがて線となり、ありふれた描写だから止め方がいいよなこれ。
納豆やミソは発酵させることで旨み成分がででてくるのだ。朝ミヨシが焙煎して悪臭を発生させたのは、白い実だけを選別したものだった。つまり発酵前のやつだ。ということはもしかして?
発酵させてから焙煎したらどうなるのだろう?
「ミヨシ。皮を剥いた実の残りって」
「全部捨てたわよ」
ですよね。
「じゃあ、もう一度これの皮を剥いて中の実を取り出して欲しいんだけど」
「もう嫌」
ですよね。
ミヨシが使えないとなると。困ったな、できる人がいない。
なかまになりたそうにこっちをみている、やつがいるけど見えないふりをしよう。
どこかに包丁を使える人材はいないものか。ゼンシンなら器用そうだからできるんじゃないか?
(ゼンシンはいま、刀の制作が忙しくてそれどころじゃないヨ)
じゃあ、アチラはどうかな。俺の頼みなら引き受けてくれるだろう。
(アチラがいないとめっきラインが動かないって、コウセイさんが言ってたノだ)
あっそ。困ったな。せっかくヒントをつかんだような気がしたのだが、人材がいないのではこのままお蔵入りもやむなしか。
「ちょっと!! いま、わざと私を無視したでしょ!」
まぁ、これは俺が作りたいと思って始めたことだからな。別に工房が困るわけじゃない。生産が順調に行われているのなら、余計な仕事を増やすことはない。
ミヨシの機嫌が直ったらまたいつか相談してみよう。
げしげしげし。なんか足を踏まれているようだが、気にしない。
「ねえユウ。ウエモンってね、包丁を扱うのすっごくうまいんですってよ」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、がんばれな」
げしげしげしげし。踏まれる回数が増えてくなぁ。
「それにね、まだうちでどんな仕事をしてもらうのか、決まってないのよ」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、がんばれな」
げしげげしげしげしげしがしがし。回数は増えてるし、力強さも増してるなぁ。
「だから工房中を走り回って、人に言われる前に自分にできる仕事がないか探していたんだって」
「ほほう。それは感心なことだな」
「うん、そうだろ?」
「がんばれよ」
げしげしげしげし。ごっつ~んこ。
ごっつ~んこは、いい加減にしろ!! という俺のげんこつの音である。
「あうぅぅぅ。泣かないもん。その実、私が剥く」
ああ、やっぱりそうなってしまったか。こいつと関わるのだけは避けたいと思っていたのに。フラグの回収早すぎるやろ。
ミヨシが言った。
「この子はアチラと同じで魔法が使えるのよ。でもこの前村長が言っていたように、魔法を使う仕事はいまどきなかなかなくてね。だからウチで預かったのよ」
「魔法が使えるのか? どんな?」
その子は自慢げに言った
「覚醒魔法が使えるよ!」
ですよね。
「あれ? なんで驚かないの???」
なんでって言われましても。うちにはそのぐらいのことできる人材だか魔王だかが、わさわさいるのだ。これ以上必要がない、というか余っているというか、余りすぎて少し腐り始めているというか。
「だ、誰が腐り始めているノだっ」
「我らをバカにすると、またおかずヌキでご飯だぞヨ」
それはスミマセンでした。ん? ウエモンが固まった。時間停止魔法が使えるよというアピールか? それだったらすごいことになるぞ。薄い本的な意味で。
「そんなこと我にもできないノだ」
「その通り。魔法は万能じゃないのだヨ。その子は急に我らが見えてただ驚いているだけだヨ」
あ、そうか。久しぶりなんで忘れてたわ。これからずっといるならこいつらを紹介しなきゃだな。
「えーコホン。こちらがオウミ。で、こっちがミノウだ。どちらも俺の眷属で、ついでに魔王をやっている」
そっちがついでじゃないノだ。契約をしただろうが! それとこれとはアレなのだヨ。アレってなんだよ。そういうのはアッチに置いておくノだ。アッチってどっちだよ! そこいらの目立たないところヨ。どこでもいいんじゃねぇか、ってかなんの話だよ!
そこへ。お昼を食べにアチラとコウセイさんが食堂に入ってくる。
「あーーー。アチラ様ぁぁぁぁぁ」
今度、固まるのは俺たちであった。アチラ 様?
「おーおーおー。ウエモンじゃないか。よく来たね。僕も楽しみにしてたんだよ。これから一緒に働けるね」
「うん。うん。うんぐずずっ」
「泣かなくてもいいよ」
アチラは大人の扱いでウエモンの頭を優しくなでる。俺がさっき思い切り叩いたところあたりだ。
「ねえ。アチラ様」
「どうしたの?」
「あの坊主、変」
ほらみろ。お前らのせいで変にされてしまったじゃないか。我のせいなどではないノだ。最初からお主は変なやつだったヨ。そんなわけあるか。変なやつってのは自覚していると思っていたノだ。自分のことが見えない男だったのかヨ。
「ああ、あれはユウさんとその眷属の方たちだよ。ユウさんは僕にとって恩人だから、そんな乱暴な口を利いちゃいけない」
「えええっ! あんなのが恩人?!」
あんなの、にされてもた。
「その子はアチラの知り合いだったのか。ずいぶんと、か・わ・い・い子だな」
「そ、そうなんです。か、可愛い子です。孤児院で魔法が使えるのは僕とこの子だけだったので、ずっと一緒に遊んでいました。そしたら懐かれちゃって」
「ほぉ。じゃあ、その子の世話役はアチラだな」
「アチラだね」
「アチラ、お願いね」
「え?」
「よろしくです、アチラ様」
アチラにしがみつき、安心しきった表情のウエモンであった。しかし、ふと思い出したように言った。
「ねえ、アチラ様。あの小さなおふたりにはなんとなく見覚えがあるのですが」
「ああ、学校で習っただろ。ニオノウミの支配者・オウミ様とここミノの支配者・ミノウ様だよ」
え? は? ほ? へ?
うん、美しい予定調和である。
と、廊下を走る軽快な足音がする。
どぉぉぉん、ばぁぁん、という扉を開けたとおぼしき音が続く。しばらくするとまた、
たたたたたたたたたたたっ。
という音がして、ばぁぁぁぁぁんという音と共に、計算にいそしむ俺のいる食堂の扉が開けられた。
「ああっ、こんなとこ坊主がいる」
誰のことだ? と周りを見渡すが、俺の他には誰もいない。俺は長髪でこそないが坊主頭にはしていない。この工房で坊主といえば、ゼンシンとコウセイさん(の一部)ぐらいなものだ。
そいつはじっとこっちを見ていた。身長は130cmぐらい。体重は分からん。バストからヒップまでがほぼ一直線なおかっぱ頭な女の子のようだ。
ドアを乱暴に開けたり走り回ったり、しつけがなっていな。この近所の子なのだろうか。どこから入り込んだものやらこの傍若無人な小動物。タケウチ工房を走り回っているようだ。社員の誰かの子だろうか。
そいつが言うに事欠いて、俺のことを坊主とか呼びやがった。ケンカ売ってんのか。
「おいこら坊主、なんか言え」
「むっ。ここはお遊戯場じゃない。遊ぶのなら外であだだだだだだだ」
いきなり腕に噛みつきやがった!? お前は特定外来生物か!!
「あだだだだ。離せ! なんだお前は、どこのどいつだあだだだだ」
「わふぁひは、ふへほん。ほほにひてひゃったそ」
ふへほん? 誰だよあだだだだだ。
「いだだだだだ。誰かこのカミツキガメを引き離して、駆除してくれあだだだだだだだ」
「あらら。こんなとこにいたのウエモンちゃん。あらまぁ、もうユウと仲良くなったのね」
ミヨシ。これのどこが仲良くなったように見えるんだ。って、ふへほんじゃなくてウエモンなのか。これが例の新人か?
男の子の名前だと思ってたのに、どうみても女の子なのだがだだだだだ。
もういい加減にしやがれ、ごっつんと思い切り頭を殴ってやった。
「ぎゃぁー」
ぎゃーシリーズはもう終わったっての。悲鳴を上げたおかげでやっと離れた。あー痛かった。わお、すっごい乳歯の歯形がついてるじゃないか。どうしてくれ、ん?
「わぁぁぁぁぁぁぁん。この坊主が殴ったぁぁぁぁぁ」
「やかましいわ! お前が噛みついたからだろうが。てか年上に向かって坊主はやめろ小動物。いててて、こっちのほうが何倍痛かったことか。そのぐらいで済んだことに感謝しやがれ」
「もう、ユウも大人げないんだから。ほらほらウエモンちゃん、こっちに来なさい」
俺って大人なのか子供なのか、どっちかにしてもらえませんかね?
「ううぅぅぅ。このやろう、覚えてやがれ、ぐずずずっ」
それはこっちの台詞だ。これが今日からここの丁稚になるというウエモンという魔法少女との出会いであった。
このとき俺は固く誓ったのだ。こいつとは、今後も絶対に関わらないと。
それが壮絶なフラグであることに、読者はすでに気づいているだろうけれども! ちくしお。
その生意気な小型台風はあちこちを荒らしまくったあげくに、やがて食堂の端っこでカゴに入れたまま放置してあった、まだ剥く前のカカオの実に目をつけた。
それを見つけるやいなや飛びつくようになで回し始めた。なにか惹かれるものがあったのだろう。
皮を剥いていないままなので臭うはずはないし、特に目立つこともない実だ。そんなものにわざわざ目をつけるなんて特異技能の持ち主か。うん〇にやたら興味を持つ子供と同じか。
「なにこれ? 見たことない実……熱っ熱っ。なんだこれ、ミヨシ!! 熱いじゃないか!!」
「もう勝手に走り回らないで。これからゆっくり見学させてあげるから、あれ? 熱いのそれ?」
「こんな危険なもの、そこいらいに置いてちゃダメでしょうが。私が危険でしょ!」
お前が気をつけやがれ。でもあれ、カカオの実だよな。なんで熱いんだ?
俺はなぜかそれが気になった。小動物はどうでもいいが、どうしてなにもしてないのに熱くなるのだろうか。心にひっかかったのである。
俺は無意識のうちに立ち上がって実に近づいていた。噛みつこうとする小動物を軽くいなして、実を持ち上げてみる。なるほど、確かに熱い。
熱いとは言ってもやけどするほどの温度ではなさそうだ。持った感じでは40度をちょっと超えるぐらいか。
これはあれだ、発酵熱だ。この実は中で発酵している。ミノウを酔わせたアルコールが、この実の中で生成されようとしているんだ。
そのときピンときた。発酵する実。ミノウを酔わせたアルコール臭。白から茶色まである実の色。茶色の実のほうがネバネバが多かった。
そんな点と点が繋がってやがて線となり、ありふれた描写だから止め方がいいよなこれ。
納豆やミソは発酵させることで旨み成分がででてくるのだ。朝ミヨシが焙煎して悪臭を発生させたのは、白い実だけを選別したものだった。つまり発酵前のやつだ。ということはもしかして?
発酵させてから焙煎したらどうなるのだろう?
「ミヨシ。皮を剥いた実の残りって」
「全部捨てたわよ」
ですよね。
「じゃあ、もう一度これの皮を剥いて中の実を取り出して欲しいんだけど」
「もう嫌」
ですよね。
ミヨシが使えないとなると。困ったな、できる人がいない。
なかまになりたそうにこっちをみている、やつがいるけど見えないふりをしよう。
どこかに包丁を使える人材はいないものか。ゼンシンなら器用そうだからできるんじゃないか?
(ゼンシンはいま、刀の制作が忙しくてそれどころじゃないヨ)
じゃあ、アチラはどうかな。俺の頼みなら引き受けてくれるだろう。
(アチラがいないとめっきラインが動かないって、コウセイさんが言ってたノだ)
あっそ。困ったな。せっかくヒントをつかんだような気がしたのだが、人材がいないのではこのままお蔵入りもやむなしか。
「ちょっと!! いま、わざと私を無視したでしょ!」
まぁ、これは俺が作りたいと思って始めたことだからな。別に工房が困るわけじゃない。生産が順調に行われているのなら、余計な仕事を増やすことはない。
ミヨシの機嫌が直ったらまたいつか相談してみよう。
げしげしげし。なんか足を踏まれているようだが、気にしない。
「ねえユウ。ウエモンってね、包丁を扱うのすっごくうまいんですってよ」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、がんばれな」
げしげしげしげし。踏まれる回数が増えてくなぁ。
「それにね、まだうちでどんな仕事をしてもらうのか、決まってないのよ」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、がんばれな」
げしげげしげしげしげしがしがし。回数は増えてるし、力強さも増してるなぁ。
「だから工房中を走り回って、人に言われる前に自分にできる仕事がないか探していたんだって」
「ほほう。それは感心なことだな」
「うん、そうだろ?」
「がんばれよ」
げしげしげしげし。ごっつ~んこ。
ごっつ~んこは、いい加減にしろ!! という俺のげんこつの音である。
「あうぅぅぅ。泣かないもん。その実、私が剥く」
ああ、やっぱりそうなってしまったか。こいつと関わるのだけは避けたいと思っていたのに。フラグの回収早すぎるやろ。
ミヨシが言った。
「この子はアチラと同じで魔法が使えるのよ。でもこの前村長が言っていたように、魔法を使う仕事はいまどきなかなかなくてね。だからウチで預かったのよ」
「魔法が使えるのか? どんな?」
その子は自慢げに言った
「覚醒魔法が使えるよ!」
ですよね。
「あれ? なんで驚かないの???」
なんでって言われましても。うちにはそのぐらいのことできる人材だか魔王だかが、わさわさいるのだ。これ以上必要がない、というか余っているというか、余りすぎて少し腐り始めているというか。
「だ、誰が腐り始めているノだっ」
「我らをバカにすると、またおかずヌキでご飯だぞヨ」
それはスミマセンでした。ん? ウエモンが固まった。時間停止魔法が使えるよというアピールか? それだったらすごいことになるぞ。薄い本的な意味で。
「そんなこと我にもできないノだ」
「その通り。魔法は万能じゃないのだヨ。その子は急に我らが見えてただ驚いているだけだヨ」
あ、そうか。久しぶりなんで忘れてたわ。これからずっといるならこいつらを紹介しなきゃだな。
「えーコホン。こちらがオウミ。で、こっちがミノウだ。どちらも俺の眷属で、ついでに魔王をやっている」
そっちがついでじゃないノだ。契約をしただろうが! それとこれとはアレなのだヨ。アレってなんだよ。そういうのはアッチに置いておくノだ。アッチってどっちだよ! そこいらの目立たないところヨ。どこでもいいんじゃねぇか、ってかなんの話だよ!
そこへ。お昼を食べにアチラとコウセイさんが食堂に入ってくる。
「あーーー。アチラ様ぁぁぁぁぁ」
今度、固まるのは俺たちであった。アチラ 様?
「おーおーおー。ウエモンじゃないか。よく来たね。僕も楽しみにしてたんだよ。これから一緒に働けるね」
「うん。うん。うんぐずずっ」
「泣かなくてもいいよ」
アチラは大人の扱いでウエモンの頭を優しくなでる。俺がさっき思い切り叩いたところあたりだ。
「ねえ。アチラ様」
「どうしたの?」
「あの坊主、変」
ほらみろ。お前らのせいで変にされてしまったじゃないか。我のせいなどではないノだ。最初からお主は変なやつだったヨ。そんなわけあるか。変なやつってのは自覚していると思っていたノだ。自分のことが見えない男だったのかヨ。
「ああ、あれはユウさんとその眷属の方たちだよ。ユウさんは僕にとって恩人だから、そんな乱暴な口を利いちゃいけない」
「えええっ! あんなのが恩人?!」
あんなの、にされてもた。
「その子はアチラの知り合いだったのか。ずいぶんと、か・わ・い・い子だな」
「そ、そうなんです。か、可愛い子です。孤児院で魔法が使えるのは僕とこの子だけだったので、ずっと一緒に遊んでいました。そしたら懐かれちゃって」
「ほぉ。じゃあ、その子の世話役はアチラだな」
「アチラだね」
「アチラ、お願いね」
「え?」
「よろしくです、アチラ様」
アチラにしがみつき、安心しきった表情のウエモンであった。しかし、ふと思い出したように言った。
「ねえ、アチラ様。あの小さなおふたりにはなんとなく見覚えがあるのですが」
「ああ、学校で習っただろ。ニオノウミの支配者・オウミ様とここミノの支配者・ミノウ様だよ」
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うん、美しい予定調和である。
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