115 / 336
第115話 多忙な魔王
しおりを挟む
ちなみに、語りはクラークです。
俺は断った。
「なんでだよ!」
オウミが、なんか偉そうだったから?
「そんな理由で断るなよ。しかもなんで疑問形なんだ」
それは冗談だ。裁判のとき、俺が魔法をかけた人たちの証言をいくつも聞かされた。俺を擁護する発言をしてくれたのは、あのキュウリ夫人だけだった。
「の漬物を作っていた人、まで抜けてしまったのだヨ」
「まるでキュウリのQちゃんだな」
「もっと偉い科学の人を想像しないのかヨ」
それも夫が死んだら保険料がたらふく入ったとかいう理由でな。
「Qちゃん、やるな」
「もうその名前でいくのかヨ」
やるな、じゃないだろ。褒めてどうする。で、なんだQちゃんって?
俺がツッコみ役になってしまったじゃないか。そ、それでだな、その裁判での証言がまた酷かったんだ。
俺だけが悪いのオンパレードだった。あいつのせいで友は死んだ、彼女も死んだ、高額報酬をとっておいて苦しませただけだ、おかげでうちは破産した、ジャガイモを返せ、余計なまねしやがって、そもそも顔が怖い、態度も悪い、医師免許もないくせに。
「医師免許持ってないのかよ!!」
「まるでぶらっくじゃっくなのだヨ」
この世界にも医師免許というものは存在するが、そんなに厳密な運用をされているわけじゃないのだ。役所に届け出るだけでたいが許可が出る。モグリの医者なんてそこらじゅうにいる。別に違法じゃない。お上のお墨付きがないだけだ。
それなのに、よってたかってそんな苦情ばかりを言われた。治療してやったときは感謝していたくせに、ここぞとばかりに俺の悪口を言い立てやがった。
こんな連中のために俺は身を削って魔法を使ってたのか、と思ったら憎らしくなってきたのだ。
「それ、お前に責任はない、とは言い切れないようだな」
どうしてそう思う!? 返答しだいでは
「な、なにをする気だ?」
3カ所ぐらい虫刺されの跡を作ってやる。
「そ、それはたいへんだー(棒)。んなとこまでオウミに似るなよ」
それで、俺の責任とはどういうことだ。
「まず、そもそものやり方が間違っている。お前はモグリとは言え医者なんだろ? それなのに、どうして時間を戻したりしたんだ」
え? それは、それで直るからに決まっているだろうが。
「直ってないだろ? それは治療じゃない、奇跡だ。リバウンドがある奇跡だ。お前は医者の領分を越えたことをしたんだよ」
うっぐっ。それは、それはそうかもしれないが。
「もう一度聞く。大けがをした人に、どうして時間を戻すなんて無茶なことをする必要があったんだ」
そ、それは治療法として有効だと思ったからだ。実際にそのときは直ったし、感謝もされたんだ。
「そしてリバウンドして逆に怨みを買ったんだよな。怪しい宗教家ならそれでもいいさ。だけどクラークはあくまで医者だと主張するのだろ? それなら時間を戻すべきではなかった」
目の前に苦しんでいるものがいるのだ。なんとかしてやりたいと思うのが医者であろうが。俺がその方法を知っているのだから、それを使うのがどうして医者じゃないのだ。
「もしもだ、そのときクラークが医者の心で患者と接していたのなら、時間を戻すのではなく『進める』ほうを選択したはずだ。違うか?」
「「え?」」
「なんでミノウまで一緒になって驚いてんだよ! 相手はケガ人だろ? 苦しんでいるんだろ? なら時間を進めてやればいいじゃないか。消毒さえしておけば、ちいさなケガなら数時間、大けがでも何日か進めれば痛みぐらいは消えるだろ?」
「「あっ、えっ。ほっ?」」
「こっちの人って、びっくりするとみんなそうなるんか? ケガをなかったことにしようなんて考えるから、無茶をすることになるんだ。それは奇跡だ。神の領分だ」
「我は魔王だヨ」
「うるさいよ! もちろん時間を進めても、失ったものは戻ってこない。手が生えることもない。だが、痛みは消える。少なくとも和らぐ。それこそが医者の領分じゃないか」
それは、しかし。それでは。なんとも。あの、その。
「クラークは称賛が欲しかったんだ。誰にもまねのできないことがしたかったんだ。ジャガイモで治療してやったぐらいだ、金が一番の目的ではあるまい。だけど、名声を求める欲望が強すぎて、医者として、というよりも人としのて領分を越えてしまったんだよ」
……
「だから、それはお前が負うべき責任だ」
そうか。そうかもしれん。そうだな。その通りか。よく分かった。蚊に刺された跡は1カ所にしておいてやろう。
「なんで0にならないんだよ!?」
なんか偉そうで気に食わんからだ。裁判後の俺は、なにもかもが嫌になっていた。アルコール中毒での死者は100人を超えたそうだ。俺がなにもしなければもっと少なかったであろう。ケガ人はケガが戻るだけだが、それでもケガをしたときの苦痛をもう一度味わうことになる。
それを待つ日々がどれだけ辛いことであろうか。それを思ったら、俺の命のひとつぐらいでは安すぎるぐらいだろう。
だがそれでも、不当な迫害を受けたという気持ちは収まらなかった。こんな連中のために、俺の名声はもちろん、いままでの苦労も水の泡だ。貧しいものからは金は取らなかったのに。その分、金持ちからはたんまりいただいたけどな。
「どんな医者も、そうあって欲しいものだな」
「医は、仁術と算術のいったりきたりヨ」
「お? ミノウがうまいことを言ったぞ?」
「ある歴史マンガで読んだのだヨ」
「その作者を言ったりしないようにな」
「みなもとた……ほいヨ」
そんな俺にオウミは根気よく眷属になる道を勧めてくれた。最初は拒否してたんだ。もう死んでもいいつもりだったからな。しかしそのうち俺の考えは変わった。こいつを利用すればいいと。そして力を貯めていつか俺を貶めた連中に復讐してやろう、ってな。
そう思ったら、なんだか肩の荷が下りたような気がした。そして和かな気分になると、ついつい爆裂魔法をだな。
「ぶっ放したのか!!??」
ちょっとしたお茶目だったのだが。
「「お茶目で済むかぁぁぁぁ!!」」
そのうち、それが快感となって止まらなくなり、1日1回はそれやらないと収まらなくなったのだ。
「どこかの目の紅い自称天才魔法使いみたいなヨ」
「それ、いけないクスリと同じだから。禁断症状だから。ただのラリってる危険な人だから」
一度、ニオノウミというでっかい池でぶっ放したんだが、そしたらオウミにどエライ怒られてな。
「それは池じゃなくて湖なのだヨ」
「湖ならたいして問題なさそうなのにな」
うむ。俺もそう思ったのが、湖中の魚が浮いたそうだ。
「あぁ、それはダメだ」
「オウミは水の管理人だヨ、それは怒って当然なのだ」
それで大げんかとなって、俺は眷属を辞めた。
「そんな理由だったのか! もっとごちゃごちゃでぎったんぎったんなドロドロ人間(魔王?)関係をこじらせた、って話になっていたようだが」
「それは、そういうのを期待した人の作り話のようだヨ」
なんでそんな話になってんだ! あんな適当な魔王とそんなドロドロ? な話になるわけがなかろう。
「「そりゃ、そうだよな。言われて見れば」」
魚を浮かせたのは悪かったが、死んだのはごくわずかだし、それは漁師がとって食べてたし。ほとんどはすぐに元に戻ったのだからそんな怒らんでもよくね?
「よくね? って言われてもヨ」
「それでクラークはオウミと別れてこんな荒漠の大地・ホッカイ国に来たのか」
ここなら誰にも迷惑をかけることなく、心置きなく爆裂魔法をぶっ放せる場所がいくらでもあるからな。
「そういうことだったの? お前がここに来た理由って」
ああ、そうだ。もちろん、ここには魔王がいなかったというのも大きな理由だけどな。もう魔王なんかに仕えるのはまっぴらだ。
「それで自分が魔王になったのか。よくなれたものだな。ただの医者崩れだろ?」
医者崩れ言うな。こちらではときどきシャケをもらったりするから、お礼にケガに効く薬草の作り方を教えてやったり、回復魔法をかけてやったりとかはしていた。
でもそれよりも、毎日爆裂魔法を打つ危険なやつ、ということで相当に恐れられていたようだ。気がついたら魔王になってたよ?
「たよ? じゃねぇ! 魔王ってそんないい加減になれるものなのか?」
「はっきりした定義は我らにも分からん。ただ、魔王になるにはそこに住む人々と、ニホンを納める首長の承認がいることだけは確かだヨ。クラークは恐れさせることだけじゃなく、他にもなにか住民のためになることをしたのではないか?」
他になにか? したっけか? 爆裂を打ったあとは石だらけの土地も粉々になるので、そこにマメ科の植物でも植えたらどうかなんて助言はしたことがあるな。マメ科の植物は土地を肥やしてくれるからな。寒冷にも強いマメ科の木を俺は知ってたからそれを紹介してやった。
それとただっぴろいだけの草原にはアクセントってものがない。それなら、寒冷に強いラベンダーでも植えたらキレイかなって思ってタネをばらまいてみたし。
冬には大量の雪が積もって溶けないから困りものなのだが、お遊びで雪の宮殿とか作ってみたらめっさ受けたな。いまではそれが定例のお祭りになっているようだが。
「人のためにいろいろやってんじゃねぇか。お前は天才か」
俺、医者なんだけど(´・ω・`)
「クラークは変なとこで律儀だなぁ。魔王になれるわけだ」
「結構面白おかしく暮らしてたのではないか、それなのになんで人間を滅ぼそうなんて思ったんだヨ」
イソガシクテ
「「なに?」」
アソブジカンガホシクテヤッタ
「「なななななんだとーー!!!」
ま、魔王というのはだな、忙しいのだ! マメ科で寒冷に強いハリエンジュってのを植えたのだが、根が強すぎて土が耕せなくなったのだ。土地は肥えたが作物を植えられない。だから時々俺が出向いて根のカットをしている。それでもどんどん増えてゆくんだ。
もうじき雪が降るようになれば、雪を会場に集めるのは俺にしかできない仕事だし。そこへのアクセス道は俺が整備しないといけないし。
ラベンダー畑も手入れしないと雑草がはびこるし、その上決算書の確認だの罪人の処分だの裁判だの朝ご飯の準備だの昼ご飯の。
「あぁ、もういい分かった。そんな程度のことで人を滅ぼすつもりだったんかよ。お前はなにもかもやり過ぎだ。その執事にまかせられないのか?」
「私は、晩ご飯担当です」
「「それだけ?!」」
「クラークは、もっと仕事を他人にやらせるということを覚えろよ」
「お主が言うと説得力があるのだヨ」
「あれ? しかしだ。クラークに時間が余ったとして、いったいなにをして過ごすんだ。遊び相手なんているのか?」
そ、それは……。そうなってから考えるさ。
「定年で仕事を辞めたらすることなくて、痴呆症になっちゃったお父さんコースだぞ、それ」
そこらのおっさんと一緒にするな。俺はそんなことにはならん。
「フラグを立てているようにしか思えんが、それにしても多忙なのは分かった。クラークにはお手伝いが必要だ」
それはそうなのだが。俺は恐がられるタイプだからな、募集をかけても応募者がいないのだよ。
「募集はかけたのか。そのやり方はあえて聞くまい。そういえば、魔王なら召喚魔法も強力なものが使えるのではないか?」
「そうなのだ。我もそれを不思議に思っていたのだヨ。召喚して、片っ端から部下にしてしまえばいいのに」
召喚魔法ってなに?
「「そこから?!」」
俺は断った。
「なんでだよ!」
オウミが、なんか偉そうだったから?
「そんな理由で断るなよ。しかもなんで疑問形なんだ」
それは冗談だ。裁判のとき、俺が魔法をかけた人たちの証言をいくつも聞かされた。俺を擁護する発言をしてくれたのは、あのキュウリ夫人だけだった。
「の漬物を作っていた人、まで抜けてしまったのだヨ」
「まるでキュウリのQちゃんだな」
「もっと偉い科学の人を想像しないのかヨ」
それも夫が死んだら保険料がたらふく入ったとかいう理由でな。
「Qちゃん、やるな」
「もうその名前でいくのかヨ」
やるな、じゃないだろ。褒めてどうする。で、なんだQちゃんって?
俺がツッコみ役になってしまったじゃないか。そ、それでだな、その裁判での証言がまた酷かったんだ。
俺だけが悪いのオンパレードだった。あいつのせいで友は死んだ、彼女も死んだ、高額報酬をとっておいて苦しませただけだ、おかげでうちは破産した、ジャガイモを返せ、余計なまねしやがって、そもそも顔が怖い、態度も悪い、医師免許もないくせに。
「医師免許持ってないのかよ!!」
「まるでぶらっくじゃっくなのだヨ」
この世界にも医師免許というものは存在するが、そんなに厳密な運用をされているわけじゃないのだ。役所に届け出るだけでたいが許可が出る。モグリの医者なんてそこらじゅうにいる。別に違法じゃない。お上のお墨付きがないだけだ。
それなのに、よってたかってそんな苦情ばかりを言われた。治療してやったときは感謝していたくせに、ここぞとばかりに俺の悪口を言い立てやがった。
こんな連中のために俺は身を削って魔法を使ってたのか、と思ったら憎らしくなってきたのだ。
「それ、お前に責任はない、とは言い切れないようだな」
どうしてそう思う!? 返答しだいでは
「な、なにをする気だ?」
3カ所ぐらい虫刺されの跡を作ってやる。
「そ、それはたいへんだー(棒)。んなとこまでオウミに似るなよ」
それで、俺の責任とはどういうことだ。
「まず、そもそものやり方が間違っている。お前はモグリとは言え医者なんだろ? それなのに、どうして時間を戻したりしたんだ」
え? それは、それで直るからに決まっているだろうが。
「直ってないだろ? それは治療じゃない、奇跡だ。リバウンドがある奇跡だ。お前は医者の領分を越えたことをしたんだよ」
うっぐっ。それは、それはそうかもしれないが。
「もう一度聞く。大けがをした人に、どうして時間を戻すなんて無茶なことをする必要があったんだ」
そ、それは治療法として有効だと思ったからだ。実際にそのときは直ったし、感謝もされたんだ。
「そしてリバウンドして逆に怨みを買ったんだよな。怪しい宗教家ならそれでもいいさ。だけどクラークはあくまで医者だと主張するのだろ? それなら時間を戻すべきではなかった」
目の前に苦しんでいるものがいるのだ。なんとかしてやりたいと思うのが医者であろうが。俺がその方法を知っているのだから、それを使うのがどうして医者じゃないのだ。
「もしもだ、そのときクラークが医者の心で患者と接していたのなら、時間を戻すのではなく『進める』ほうを選択したはずだ。違うか?」
「「え?」」
「なんでミノウまで一緒になって驚いてんだよ! 相手はケガ人だろ? 苦しんでいるんだろ? なら時間を進めてやればいいじゃないか。消毒さえしておけば、ちいさなケガなら数時間、大けがでも何日か進めれば痛みぐらいは消えるだろ?」
「「あっ、えっ。ほっ?」」
「こっちの人って、びっくりするとみんなそうなるんか? ケガをなかったことにしようなんて考えるから、無茶をすることになるんだ。それは奇跡だ。神の領分だ」
「我は魔王だヨ」
「うるさいよ! もちろん時間を進めても、失ったものは戻ってこない。手が生えることもない。だが、痛みは消える。少なくとも和らぐ。それこそが医者の領分じゃないか」
それは、しかし。それでは。なんとも。あの、その。
「クラークは称賛が欲しかったんだ。誰にもまねのできないことがしたかったんだ。ジャガイモで治療してやったぐらいだ、金が一番の目的ではあるまい。だけど、名声を求める欲望が強すぎて、医者として、というよりも人としのて領分を越えてしまったんだよ」
……
「だから、それはお前が負うべき責任だ」
そうか。そうかもしれん。そうだな。その通りか。よく分かった。蚊に刺された跡は1カ所にしておいてやろう。
「なんで0にならないんだよ!?」
なんか偉そうで気に食わんからだ。裁判後の俺は、なにもかもが嫌になっていた。アルコール中毒での死者は100人を超えたそうだ。俺がなにもしなければもっと少なかったであろう。ケガ人はケガが戻るだけだが、それでもケガをしたときの苦痛をもう一度味わうことになる。
それを待つ日々がどれだけ辛いことであろうか。それを思ったら、俺の命のひとつぐらいでは安すぎるぐらいだろう。
だがそれでも、不当な迫害を受けたという気持ちは収まらなかった。こんな連中のために、俺の名声はもちろん、いままでの苦労も水の泡だ。貧しいものからは金は取らなかったのに。その分、金持ちからはたんまりいただいたけどな。
「どんな医者も、そうあって欲しいものだな」
「医は、仁術と算術のいったりきたりヨ」
「お? ミノウがうまいことを言ったぞ?」
「ある歴史マンガで読んだのだヨ」
「その作者を言ったりしないようにな」
「みなもとた……ほいヨ」
そんな俺にオウミは根気よく眷属になる道を勧めてくれた。最初は拒否してたんだ。もう死んでもいいつもりだったからな。しかしそのうち俺の考えは変わった。こいつを利用すればいいと。そして力を貯めていつか俺を貶めた連中に復讐してやろう、ってな。
そう思ったら、なんだか肩の荷が下りたような気がした。そして和かな気分になると、ついつい爆裂魔法をだな。
「ぶっ放したのか!!??」
ちょっとしたお茶目だったのだが。
「「お茶目で済むかぁぁぁぁ!!」」
そのうち、それが快感となって止まらなくなり、1日1回はそれやらないと収まらなくなったのだ。
「どこかの目の紅い自称天才魔法使いみたいなヨ」
「それ、いけないクスリと同じだから。禁断症状だから。ただのラリってる危険な人だから」
一度、ニオノウミというでっかい池でぶっ放したんだが、そしたらオウミにどエライ怒られてな。
「それは池じゃなくて湖なのだヨ」
「湖ならたいして問題なさそうなのにな」
うむ。俺もそう思ったのが、湖中の魚が浮いたそうだ。
「あぁ、それはダメだ」
「オウミは水の管理人だヨ、それは怒って当然なのだ」
それで大げんかとなって、俺は眷属を辞めた。
「そんな理由だったのか! もっとごちゃごちゃでぎったんぎったんなドロドロ人間(魔王?)関係をこじらせた、って話になっていたようだが」
「それは、そういうのを期待した人の作り話のようだヨ」
なんでそんな話になってんだ! あんな適当な魔王とそんなドロドロ? な話になるわけがなかろう。
「「そりゃ、そうだよな。言われて見れば」」
魚を浮かせたのは悪かったが、死んだのはごくわずかだし、それは漁師がとって食べてたし。ほとんどはすぐに元に戻ったのだからそんな怒らんでもよくね?
「よくね? って言われてもヨ」
「それでクラークはオウミと別れてこんな荒漠の大地・ホッカイ国に来たのか」
ここなら誰にも迷惑をかけることなく、心置きなく爆裂魔法をぶっ放せる場所がいくらでもあるからな。
「そういうことだったの? お前がここに来た理由って」
ああ、そうだ。もちろん、ここには魔王がいなかったというのも大きな理由だけどな。もう魔王なんかに仕えるのはまっぴらだ。
「それで自分が魔王になったのか。よくなれたものだな。ただの医者崩れだろ?」
医者崩れ言うな。こちらではときどきシャケをもらったりするから、お礼にケガに効く薬草の作り方を教えてやったり、回復魔法をかけてやったりとかはしていた。
でもそれよりも、毎日爆裂魔法を打つ危険なやつ、ということで相当に恐れられていたようだ。気がついたら魔王になってたよ?
「たよ? じゃねぇ! 魔王ってそんないい加減になれるものなのか?」
「はっきりした定義は我らにも分からん。ただ、魔王になるにはそこに住む人々と、ニホンを納める首長の承認がいることだけは確かだヨ。クラークは恐れさせることだけじゃなく、他にもなにか住民のためになることをしたのではないか?」
他になにか? したっけか? 爆裂を打ったあとは石だらけの土地も粉々になるので、そこにマメ科の植物でも植えたらどうかなんて助言はしたことがあるな。マメ科の植物は土地を肥やしてくれるからな。寒冷にも強いマメ科の木を俺は知ってたからそれを紹介してやった。
それとただっぴろいだけの草原にはアクセントってものがない。それなら、寒冷に強いラベンダーでも植えたらキレイかなって思ってタネをばらまいてみたし。
冬には大量の雪が積もって溶けないから困りものなのだが、お遊びで雪の宮殿とか作ってみたらめっさ受けたな。いまではそれが定例のお祭りになっているようだが。
「人のためにいろいろやってんじゃねぇか。お前は天才か」
俺、医者なんだけど(´・ω・`)
「クラークは変なとこで律儀だなぁ。魔王になれるわけだ」
「結構面白おかしく暮らしてたのではないか、それなのになんで人間を滅ぼそうなんて思ったんだヨ」
イソガシクテ
「「なに?」」
アソブジカンガホシクテヤッタ
「「なななななんだとーー!!!」
ま、魔王というのはだな、忙しいのだ! マメ科で寒冷に強いハリエンジュってのを植えたのだが、根が強すぎて土が耕せなくなったのだ。土地は肥えたが作物を植えられない。だから時々俺が出向いて根のカットをしている。それでもどんどん増えてゆくんだ。
もうじき雪が降るようになれば、雪を会場に集めるのは俺にしかできない仕事だし。そこへのアクセス道は俺が整備しないといけないし。
ラベンダー畑も手入れしないと雑草がはびこるし、その上決算書の確認だの罪人の処分だの裁判だの朝ご飯の準備だの昼ご飯の。
「あぁ、もういい分かった。そんな程度のことで人を滅ぼすつもりだったんかよ。お前はなにもかもやり過ぎだ。その執事にまかせられないのか?」
「私は、晩ご飯担当です」
「「それだけ?!」」
「クラークは、もっと仕事を他人にやらせるということを覚えろよ」
「お主が言うと説得力があるのだヨ」
「あれ? しかしだ。クラークに時間が余ったとして、いったいなにをして過ごすんだ。遊び相手なんているのか?」
そ、それは……。そうなってから考えるさ。
「定年で仕事を辞めたらすることなくて、痴呆症になっちゃったお父さんコースだぞ、それ」
そこらのおっさんと一緒にするな。俺はそんなことにはならん。
「フラグを立てているようにしか思えんが、それにしても多忙なのは分かった。クラークにはお手伝いが必要だ」
それはそうなのだが。俺は恐がられるタイプだからな、募集をかけても応募者がいないのだよ。
「募集はかけたのか。そのやり方はあえて聞くまい。そういえば、魔王なら召喚魔法も強力なものが使えるのではないか?」
「そうなのだ。我もそれを不思議に思っていたのだヨ。召喚して、片っ端から部下にしてしまえばいいのに」
召喚魔法ってなに?
「「そこから?!」」
1
あなたにおすすめの小説
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
一流冒険者トウマの道草旅譚
黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。
しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。
そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる