異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第125話 大雪、そして再会

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「所長、大変です!!」
「ふぁぁ?」

 寝起きは俺はだいたいこうである定期。

「雪ですよ、雪。大雪です!」
「ふぁぁ。そうか、じゃお休みぐー」

「所長!! 所長ってば!」
「まあまあ、モナカさん。まだ8時50分だから。起きるまで待ちましょうよ」
「それはそうだけどね、ユウコ。いま起きかけたのに。どうしてこんなときだけ時間に正確なのよ、この人は」

「10分早く起こしたところでこの状況が変わるわけじゃなし。いいじゃないの。ゆっくりしていけば」
「クラーク様。申し出はありがたいのですが、そんなこと言っている場合ではないのです。あちらではもう研究所も竣工しているのに」
「とはいってもな、この状況ではなんとも」

「ふぁぁ? あれ、モナカか。なんかあったん?」
「あ、所長。大変なんです。雪ですよ、雪」
「11月のホッカイ国だ、雪ぐらい降るだろ。ここは雪国ふぁぁぁ」
「あ、また寝た」

 昨日の夜から降り始めた雪は、朝まで降り続いてドカ雪となった。これでは帰るどころか、ここから外に出ることもできない。

 自分で転送移動が可能な魔王たちはともかく、人間やエルフはここに雪隠詰めである。

 そして9時になった。

「おあよ。雪はもう止んだか? ふぁぁぁぁぁあ」
「所長。おはようございます。止むわけありませんよ、こんなの。ちょっと外を見てください」
「止むわけない、ってお前は天気予報だぁぁぁぁぁ?! な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ」

 1階の窓から見えるはずの景色はなにも景色が見えずになにも見えない窓であった。

「ニホン語がおかしいのだヨ」
「ちょっと混乱した」

 雪が降っている、と聞いた俺は見渡す限り一面の雪景色を想像していたのだ。それが窓一面の暗闇であったときの驚きを、どう表現したら良いだろう。

「まさか、まさか、まさか、モナカ、まさか?」
「はい所長。そのまさかです」

 これじゃダメだと2階に上がった。

「同じじゃねぇか!!」
「はいそうです。3階に行きましょう」

「おいおい、まさかモナカ。っていうお菓子がありそうだが」
「なんの話ですか、所長。じゃ4階に」

 当然のように3階からもなにも見えなかった。

「はい、4階です」
「だぁだぁぜぇひぃふぃぜぇふぅ」
「もう、この程度でなに息を切らしてるんですか。体力ありませんねぇ」
「はぁふぁ、やははひひ。おっ、やっと外が見えだぁぁぁぁぁ」

 4階まで上がってようやく一面の銀世界が見えた。ここは温泉街である。あちこちに湯気が上がっている。さすがにお湯の上には雪が積もらないようだ。

 しかし、それ以外の部分――道や建物、草や木々の上など――は、見事に真っ平らな雪原と化していた。ところどころに高い木の先端だけが見えている。

「どこがどこだか、さっぱり分からん」
「現在のところ積雪は約8メートルだ。まだ積もりそうな勢いで降っている。今年は異常だ、いきなり冬将軍が到来してしまった。またこの国の人口が減るなぁ」

「クラーク。減るなぁとか言っている場合じゃないだろ。放っておいていいのかよ」
「放っておく以外になにができるというのだ?」
「ここにはそういうことをする組織ってないのか?」

「そういう、とは?」
「雪かきとか、行方不明者の捜索とか」

「それは各々がすることであろう。どのみち、この状況で動ける人などおらん。エルフでもそうであろう?」
「はい、クラーク様。こうなったらもう、覚悟を決めて春を待つ以外にはありません。異常気象なんて稀に良くあることです」

(まれによく……。ミノウ、お前またあっちの言葉を教えたな?)
(ぴゅ~)
(すんなって言ってんだろ)
(勝手に覚えるのだから、仕方ないではないかヨ)
(お前が使うからだろうが!)

「しかしこれでは俺たち……」
「帰るに帰れませんね、所長」

 ミヨシは、先週アチラとソウが迎えに来て連れて帰った。ミヨシがいないとまともなご飯が食べられないから、連れ戻しに来たのだ。
 ウエモンやハルミの料理は、やたら甘かったり苦かったりで、少々食べづらいと言っていった。

 おそらくは相当にまずかったのであろうなぁ。

 帰しておいて良かった。あちらの連中が餓死するところだった。モナカも帰るかと聞いたのだが、

「私は秘書ですから所長のお供をします。帰るのなら一緒にです」

 というので残したのだが、おかげで俺の自由度はそれだけ少なくなった。あとこぶの数が増えた。帰せば良かったと、今では反省している。なんのためのユウコのおっぱいなのかと。

「この温泉街には備蓄があるから飢えて死ぬことはないと思うが、それでもこの雪が長く続いたら困ったことになるな」
「クラークは転送? だかなんだかできるんだよな?」

「ああ、そのぐらいはできる。それがどうかしたか?」
「食料とか足りなくなったら運んでもらえるのかと思って」
「俺が持てるのは手荷物レベルだからな。ここの全員分の食料を運搬なんてのは無理だ。お主らぐらいならどうにかなるが」

「ミノウはミノ国に帰れるよな?」
「一度行ったところならどこでもいつでも行けるのだヨ」
「それで助かった。さすがは運搬部長だ」
「そ、それほど、でも、あるヨ?」

 自慢かよ。

「じゃあ、とりあえずタケウチ工房に行って、この状況を説明してきてくれ。雪が止むまで帰れそうにないとな。それと、ちょこれいとの開発状況なども報告書を出せと言ってくれ」
「分かったのだ。行ってくるのだヨ」
「あと、ついでになんか食べるものを」
「ほいヨ」

 ……

「ただいまヨ」

 早いな、おい。

「ユウ!! お前はもう勝手にどこかに行くんじゃなノだ」
「おや、オウミもくっついて来たのか」
「まったく、ミノウばかりに良い思いさせおって、我のほうが先輩なノだぞプンプン」

「なんだ良い思って。しかし今回は仕方ないだろ。俺たちは気がついたらここに飛ばされていたんだから。その張本人がそこにいるぞ。文句ならそいつに言ってくれ。お前の良く知っている魔王だ」

 さあ、大騒動の始まりだぞ、わくわく。

「ふむ? ノだ? あぁぁぁぁぁっ。お前はお前はお前はお前は」

「お、お、お、お師匠様ですか!? お、お久しぶりでございます」

 だだだだだだだだだだあっっっ。と全員がコケた。

 お、お、お、おししょうさまだぁ?

「こノ、こノ、こノ。ばか者がばか者がばか者がぽかすかぼかばこ」

 お前らそういう関係だったんか。オウミのことすごく嫌っているようなことを言ってたくせに。

「あれはきんかくしだったのだヨ」
「照れ隠しだろ!」

「心配ばかりかけおってぼかすか。連絡ぐらい入れんかぽかすか」
「まったくだよヨぺちぱちぺちぺち」
「我の眷属のくせして魔王なんかになりおってからにぼかすぽんすか」
「こんな国で魔王なんかよくやっていらるものだなぺちぱちぼちぼち」

「あ、あのう。なんか殴る手がちょっと多いようなのですけど、いたたたた」

「オウミとケンカ別れしたようなことを言っていたが、そうじゃなかったのか?」
「別れるもなにも、こやつが勝手に出ていったノだよぼけなすあほたれ」

 だから悪口で叩くのは止めたげて。

「アホなのだヨ。お前なんかこうしてやるぺちばちばちぼち」

「ミノウまで一緒になって殴ってるが、お前もなんか因縁があったのか。それならどうしていま頃になって」
「あるわけないのだヨ。我はこやつとはここで初めて会ったのだから。ただ便乗しているだけなきゅうぅぅ」

 便乗すんな。

「まったくお主ってやつはもうぱすぽすぺす」

 おっ、疲れてきたようだぞ。もう少しの我慢だ、クラーク。

「はぁはぁぜぇぜぇ」
「オウミ、気が済んだか?」
「はぁはぁ、もういいノだ」

「クラークもここできっちり謝っておけ」
「あ、ああ。オウミ様。勝手なことをして申し訳ありませんでした。あのときの俺は俺じゃなかった……」
「分かったノだ。もういいノだ」

 なんか良い感じにまとまった様子。じゃあこれで、

「これで、お前を正式に破門するノだ」

「ここでかよ?!」
「今さらヨ?!」
「後付けですか!?」
「魔王が破門ってどういうこと?」
「あぁもうダメ、限界……」

 あ、モナカが気を失った。

「持病のシャクだヨ」
「それ、昔の女性の生理痛な」

 そんなこんなで賑やかな再会のあと、ミノウとオウミが持ってきてくれた酒と肴で宴会となったのであった。

 最初ぐらいは乾杯しようと言われて、ものすごく久しぶりにウイルを1杯飲んだ。

 気を失った。

「どんだけ酒に弱いんだよ!!」
「クラーク、こやつはこういうやつだヨ」
「飲ませるやつが悪いノだわははは」

「そうか。じゃあ言うけど、ユウ。どうもありがとう」
「クラーク? ヨ」
「ここでなにがあったノだ?」
「クラーク様がそんなことをおっしゃるなんて意外です」

「お前はユウコだったな、俺はこいつに感謝してるんだ。俺の間違いを指摘するやつなんていなかったし、この国を良くしようと考えてくれるやつもいなかった」
「みんな自分のことで精一杯ですものね。エルフだった同じです」

「お師匠様。俺は間違っていた。俺は人に崇められるのが嬉しくて、医者としての道を踏み外したのです。時間は戻すべきじゃなかった」
「まあ、患者を治そうとしたのだから、そんなに強く批判はできないノだが」
「治そうとすれば良かったのです。俺は奇跡を望んでしまった。その結果があれです」

「あ、ニオノウミの魚を浮かせたことか! あれだけはいまだに許せんのだぼかぼか」
「痛い痛い。そっちじゃないです!! それはもう堪忍してくださいよ。時間統制魔法のことです。患者の時間を戻したのが間違いでした。進めてやれば良かったんですよ」

「進めるとどうなるノだ? さくさくもぐ」
「回復魔法をかけた上で時間を進めてやれば、キズを化膿させることなく痛みを簡単にとることができます。それこそが医者の領分だとユウに……あれ? お師匠様? それってまさか?」

「さくさく。あ? これか。ミノウとおそろいのナイフとフォークなノだ」
「我のと一緒に作ってもらったのだヨ。これはほんとにすぐれものなのだヨ」

「えっと? ユウが作ったのはたしかニホン刀とか」
「「もちろん、それもあるノだヨ、しゃっきーん」」

「ユウ!!!! 俺にも作れぇぇぇ!!」
「「寝てるってノヨ」」

(ね、ねぇモナカ。私たち、いまものすごいものを見ているよね?)
(そうよ、ユウコ。ニホンに7人しかいない魔王を、一度に3人も見られるなんて、すごいことよ)
(そうか、良かった。エルフだけが魔王に会えないのかと思ったけど、人も同じなのね)
(そりゃそうよ。所長……ユウって人が異常なのよ。おかげで私なんか何度気を失うハメになったことか)

(あのユウさんって何者なの?)
(それが私にもさっぱり。だけどとんでもないものを、次々に作り出しているらしいわよ)
(ああ、あのポテチとか?)
(爆裂コーンもね。だけどさっき見たでしょう。あの金色のニホン刀)

(あ、見た見た。机の上のお皿を切っちゃったやつね)
(あれはミノウ様用の小型タイプだけど、もっと大きなものもあるのよ。魔刀って言われているわ。それだと数キロも離れた場所から鉄をざくざく斬っちゃうらしいわよ)

(す、すごい。それで戦争したら無敵だわね。もう私、ずっとユウさんについて行こうっと)
(あら、秘書は私よ)
(第二秘書はいらないかしら?)
(ユウコなら、魔法ボディガードってのはどう?)
(あ、それもいいな)

 どうして俺がいないところでとんとんと話を進めているのかね、この子たちは。
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