異世界でカイゼン

soue kitakaze

文字の大きさ
138 / 336

第138話 オウミのコマ

しおりを挟む
「この不器用ものめ!!」

 って俺のことなんですけどね。

 ほんのちょっとこれにあれをこうするだけなのに、なんでできないのかと。俺の手と作務衣だけがひたすら汚れて行く。

 うむ。液体をこういう形で塗りつけるのは無理だ。よし逆転の発想だ。

「おーい。ユウコ。ちょっと手を貸してくれ」

「全然逆転なんかしていないノだ。ただ作業をユウコにやらせようとしているだけなノだ」
「黙ってないと逮捕するぞ」

「はーい。なんですかユウさん」
「あれ、所長って呼ぶことになったじゃなかったのか?」
「なんかしっくり来なくて。もうユウさんでいいやって」
「ユウコがいいなら俺はかまわんが」

「で、なにをするんですか? こんな明るいうちからアレですか?」
「いや、アレはアレでナニだけど。今はコレをソレにしてもらいたい」

「所長。いったいなんの話をしてるんですか?!」
「わぁお、モナカもいたのか。じつはこれをユウコに作ってもらいたくてな」
「これ? ってこのコマのことですか?」
「そう、これをこうしてこんなふうにしてもらいたいんだ。ユウコできるか?」

「ふぅん。これをここに……。じゃ。コマをこう置いて、こうしたらどうですか。ほらほら、ほれほれ。ほにほに。ほーら、できた」
「すごいな、ユウコ!」

「コマを逆さまに置いただけなノだ?」

 あとは乾かしてまた塗って乾かしてまた塗って。よーし完成した。ユウコありがと。

 そんな艱難辛苦を乗り越えてようやく完成した俺のコマ。

「どこに艱難やら辛苦やらの要素があるノだ?」
「ほとんと私がやったんですよね?」
「いちいちやかましいよ」

「ところで、なんだそのコマは。それは反則ではないノか?」
「いや、ルール違反にはならない。軸を加工するのはダメだが、軸になにかを付けることは許容範囲内だ。ルールを決めた俺が言うのだから間違いない」

「なんか釈然としないノだが、まあ良い。そんなものたいして強そうには思えんノだ」
「ふん、やれば分かるさ」

 自信はないけどな。

 そしてゲーム開始である。

「じゃ、行くわよ。せーのくるりんぱっ」

 ゲームスターターの仕事がすっかり板に付いたモナカである。

 かんからぶおぉぉぉんころころ、きんこんかんぶぉぉぉこん。からら。どどどどど。

「よっしゃー!!! 俺の勝ちだぁぁ」
「ユウさん、すごぉい」
「ぶぉぉんって、変な音がするようだが?」
「まさか、あれが強さの秘訣なの? どうして?」
「あっという間に穴に入ったノだ。ただの偶然なノだ」

「お前らはまだまだ修行が足りないのだよわはははは」
「むかっ。たかが12年しか生きてないやつに言われたくないヨ。次は負けないっ」
「そ、そうですかね。次行きますよ! くるりんぱっ」

 かんからころぼぉぉぉんころ、きんこんかんこんぶぉぉぉ。からら。どどどどど。

「わははははは。また勝ったぁぁぁ」
「おぉぉ。またユウさんだぁ」
「なんか変な音がしたのだが?」
「あん、またかヨ」
「よぉし、連勝街道一直線! すごいな俺」

 俺の6連勝で始まったゲームであったが、調子が良かったのは最初の10回ぐらいだった。
 その後は、以前のような大敗ではなくなったものの、急激に成績を落とした。

 その日、午前の部 100回での成績である(午前の部だと?)


1位 俺   32勝
2位 モナカ 22勝
3位 ミノウ 16勝
4位 ケント  8勝
5位カンキチ  8勝
6位 ジョウ  8勝
7位 ユウコ  5勝
8位 オウミ  1勝

 俺がダントツの1位を飾ったのであったわははははは! ああ、嬉しい。とても嬉しい。おもしれーな、このゲーム。

 とはいえ、最初の貯金がものを言っただけで中盤以降はモナカに押されがちであった。俺のコマのカイゼンは、有効期間が短いという欠点があるようだが、それは次のカイゼンネタになってちょうどいい感じである。
 少なくとも、俺のカイゼン方向は間違っていなかったことが証明された。このゲームは、コマの重さだけでは決まらない。それが確認できただけでも良いことだった。

 ホッカイ国3人衆(カンキチ、ケント、ジョウ)は仲良く8勝ずつとなった。いずれも俺に食われた形だ。カンキチが意外と頑張ったというべきかもしれない。

 ミノウは前回より2勝減っただけの16勝と健闘したが、悲惨なのはオウミだった。前回の13勝からわずか1勝のみとなった。
 そして安定のユウコである。

「ウソなノだ……。こんなことがあるはずないノだ……」
「落ち込むなっての。犬が西向きゃ尾は下だ」
「それ、なんの慰めにもなっていないノだ」

 オウミの凋落理由ははっきりしている。コマが進化していないからだ。

「オウミ、あれからコマになにかしたか?」
「色を塗ったのだ!」
「それ、強さと関係ないよな」

「ユウコがやってたので、そのマネを……」
「ユウコはそれでも5勝してるんだが」
「ううぅぅ。ノだ」

 やはりなにもやっていないようだ。他の連中は皆、自分のコマにいろいろな工夫を施し、少しでも強くしようと必死である。

 もともと争う気のあまりないユウコ以外は、工作室(もとは倉庫であったのだがいつの間にか工作室になってしまった)とゲーム室(食堂だったのだが)との間を頻繁に行ったり来たりしている。

 少しでも重く、重心を低く、回転数を高く、持ちやすく。そんなことを考えながらコマの改良に余念がない。

 しかしオウミは、最初の「コマを小さく軽くして隙間を狙う」という戦略から脱皮できていない。それがこの戦績に繋がっているのである。

 まあ、ゲームなので、どうでもいいのではあるが。

「よ、よくないノだ!」
「あぁ、びっくりした。いきなり大声を出すなよ」
「ミノウがあんなに勝っているのに、我が負けるのは良くないのだ!」

 どんな対抗意識だよ。

「そんなにライバル視してたとは知らなかったぞ。カンキチにも負けているようだが」
「それも良くないのだが、ミノウは特にダメなのだ」

 いや、ダメなのはお前のほうだが。

「じゃあ、お前も頑張れよ」
「うぅぅ。どうすればいいのか、さっぱり分からんノだ」
「お前は軸がまだ魔鉄だったころ、魔法をかけていただろ?」
「ノだ」

「それはどんな魔法だった?」
「流動魔法なノだ」
「なんじゃそりゃ」
「あの中央の穴と、我のコマとの間に空気の流れを作ったノだ。そうするとそれに従ってコマが流れて行くノだ」

 そんなややこしいことしてたのか。だけどそれって。

「そうなノだ。水ならともかく空気の流れでは、コマを強く引っ張る力は生まれなかったのだ。だけど、それなりに勝てていたノだ。そうだ、このゲームは水の中ですると良いノだ」
「良いノだ、じゃねぇよ。水の中じゃコマが回らんだろうが」

「うぅぅ。負い案だと思ったノに」
「いずれにしても、あのコマじゃダメだ。大きさも高さも最初に戻せ。そのほうがよほど勝率があがあがあがが」

 俺に口にコマを入れるな!! 食っちゃうとこだったじゃないか。あぁまずっ。オウミのコマまずっ。ぺぺぺぺ。

「ダメなのだ。あのコマの形状は我のコンセントなのだ。あれだけは譲れないのだ」
「電源をとってどうする。コンセプトだろ。しかし、あれでは重心が高すぎてとても勝負に……。待てよ?」

「じゃあ、軸を太くするのはかまわないよな?」
「我は良いが、軸の加工はダメだったノではないか?」
「加工はダメだが、軸になにかを付加する分にはかまわない。なにかを巻き付けて太くするという手がある。俺だって似たようなことをやってるじゃないか」

「あ、そうか。そうするとどうなるノだ?」
「まず、全体が重くなるし重心が下がる。そして。コマが高い位置にあれば……。他のコマと衝突しないぐらい高くしたらどうだ?」
「どうだ? って言われても困るノだが」

「今よりもっとコマの位置を高くすればいいじゃないか。重心は軸に巻き付け……カンキチが鉛の板があるって言ってたな? それを巻けば重くなるし重心も下がる。あの穴に入るぎりぎりまで太くすればかなりの重量が稼げるはずだ。それに軸の全体が穴に入る必要はない。飛び出ない程度に入ればいいんだ。それなら今のコンダクトは守れるぞ」
「コンセプトではなかったノか?」

「そうすると、コマが小さいということが他のコマと衝突しにくいというメリットになる。従来のサイズだといくら上げても当たるからな。このサイズならコマを回せる範囲で目一杯上に上げてしまえば、他のコマと当たるのは軸だけだ。その細さならコマとコマとの間をすり抜けることも可能になる。どうだ?」

「どうだ? とまた言われても途中からさっぱり分からんのだ。でもまかせたのだ。我のコンデンサーさえ守れるならいいノだ」
「コンセプトだっての」

 そんなこんなでツッコみとボケを交代でやりながら、工作室(もと倉庫だが定期)にふたりで入った。しかし鉛を巻こうとするが鉛の板はそこまで薄くはない。一巻きで穴の直径を越えてしまった。それに、カンキチのコマ並みに不細工である。

「わははは。こりゃダメだなオウミ」
「笑いごとではないノだ。お主のアイデアは企画倒れなノだ」
「なにを言うか。俺にはゼンシンとヤッサンという片腕がついているのだぞ」

「片腕にふたりもつけるのではないノだ。それより、こんな遊びにふたりを使って良いノか?」
「遊びじゃない、これも売るものだから仕事の一環だ。ちょっと図面を描くから、それ持って行って作ってもらえ」
「分かったのだ。料金はユウに請きゅぅぅ」

「俺じゃなくて、研究所にだ!」
「今、我がうまいこと言ったのにツッコみはないノか」
「偶然だぞ?」
「そっちはいまいちなノだ?」

 むしゃくしゃして書いた。今では反省している。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

一流冒険者トウマの道草旅譚

黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。 しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。 そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。

処理中です...