異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第141話 ミノ国でなにが起こった?!

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「えっと、それはホッカイ国の第2孤児院です。コマを12個も忘れないでください」
「はいよ。ぱこぱこぽんっと梱包終了。じゃ、次はイテコマシの中盤を買ってくれたところか。これは?」

「それは、イシカリ市の市民球場です」
「市民きゅうじょ……球場だと?! なにをするところだ、それは?」
「ホッカイ国に伝わる伝統芸能である魔球をするところです」

「魔球? で、伝統芸能だと? ちょっとオウミ。準備はいいか?」
「ほい、のだヨ」

「誓いの?」
「魔球ヨ」

「ジェット?」
「それは快球ヨ」

「大リーグボール2号?」
「消える魔球ヨ」

「番場蛮の?」
「ハイジャンプ魔球ヨ」

「ジャコビニ流星打法?」
「アストロ球団。それは打法だヨ」

「スカイフォーク?」
「ドカベンの里中だヨ」

「わたるが?」
「ぴゅん。ハブボールのことか。だんだん遠ざかってるヨうな」

「所長。わけの分からないことを言ってないで、梱包してください」
「いや、ちょっと待てモナカ。魔球っていったいどんな芸能だ?」

「えっとね。私もそんなに詳しくは。あ、ケントさんなら詳しいのではないですか?」
「おーい、ケント。魔球って知ってるか?」

「はい、自慢じゃないですが、私はいつもエースで4番です」
「元気はつらつで勝利の合い言葉か! それはどんな芸能だ?」
「芸能というよりも競技ですね。両チームが9人ずつで、9回まで戦います。各回は3アウトまで攻撃が続けられます」

 どう考えてもそれ野球なんだが。

「その競技の始まりは、やっぱり球を投げるところからか?」
「そうです。魔球を投げます」

 ああ、それで野球じゃなくて魔球なのね。

「あれ。魔球の話をしてるんですか!?」

 そこに目を輝かせてユウコが混じってきた

「イシカリ大学は魔球の名門ですからね。かつては7連覇したこともあるんですよ」
「ユウコも大学に行っていたのか?」
「いえ、エルフの財力では大学なんてとても。だけど、エルフの里では魔球に使う魔バットを作っているので、私も納品に行ったことがあります。そのときに見せてもらった試合がすっごいカッコ良かったんです」

「なんだよ魔バットって」

「魔バットですか? 説明するより見せたほうが早いと思います。里には在庫が何本かありますよ? 見ますか」
「1本ぐらい買ってもいいな。いくらぐらいする?」
「高いですよ。1本350円します。魔バットはエルフの里にしか生えていない魔木・トネコリの木からしかできないんですよ」

 だからもうネコはいいっての。ややこしいとこにネコを入れやがって。バットの原料ならトネリコだろ。

「じゃ、じゃあ2本買おう。察するところ、魔球を投げてそれを魔バットで打つ。そういう競技だよな?」
「なんだ知ってるじゃないですか。トウシュが投げてダシャが打つんです。しかし魔球はトウシュの魔力によってぐにゃぐにゃに変化して飛んできます。それを同じようにぐにゃぐにゃする魔バットで打つんですよ」

 なにそれキモい。

「でも、トウシュの魔力が高くても、魔バットを操る技術が高ければ打てますし、ダシャの魔力が高くても打った魔球がヤシュの正面に飛んだりします。偶然もあり知力、体力、魔力、火力、走力、そんないろいろな要素が複雑に絡み合って試合が進むのですはぁはぁはぁ」

 いつものように気になる単語が混じってるが、ユウコよ、落ち着け。

 トウシュが魔球を投げて、ダシャが魔バットで打つ。それを3アウト交代で9イニング。

 野球そのものじゃねぇか!!

「魔力は分かるが、火力とはなんだヨ?」
「魔球を投げるときには、火がつきますからね」

 つけるな、そんなもん!!!!

「その火をいかに残したままで打つか、というものダシャの技術なのです」
「火が残っているとどうなるんだ?」
「ヤシュが熱くて投げられないでしょ? その隙に塁を盗るんですよ」

 あぶねぇ競技だな、おい。

「やけどぐらいは当たり前。たまに死人がでますが、それもこのゲームの」
「また心意気か?」
「突貫工事です」

 意外すぎるやろ、それ!?

「そのぐらい盛り上がるんですよ。特にライバルであるクシロ大学とは毎年優勝を争うライバルで、名勝負を繰り広げています。
「お前はそのぐらい、っていう言葉の意味を辞書で引け。そしてそのまま活字になってしまえ。突貫工事と盛り上がるの関連性がまったく分からんぞ」

「その戦いは今ではソウケイ戦と呼ばれて、この国の名物になっています」
「待て?! どこにソウとケイの成分があった? イシカリとクシロならイシクロ戦とかそんな感じじゃないのか」

「知りませんよ。ずっと昔からそう言われてるんですから。ソウケイ戦です」
「誰が名付けたんだ?」
「さぁ。誰とも知れずにそう言われるようになりましたね。ソウケイセンベイとかソウケイうちわ、なんかも作られてますよ?」

 名物にまでなってんのか。商魂たくましいな。

 それにしても、誰だよいい加減な名前をつけやがった奴は。見つけたらどついたるねん。俺は怒るとカンサイ弁になるねんぞ。

「それは初めて知ったのだヨ?」

 まあ、ダマク・ラカスやイテコマシなんてのを作った俺が、言えた義理ではない……待てよ? 以前に俺と同じような目にあった人がいたのか? その人、本当は普通の野球をやりたかったんじゃないのか? それならむしろ同情すべき案件か。知らんけど。

 この国の問題点のひとつ。それは、記録を文章で残すことが少ないという点だ。いろいろなことが魔法でなんとかなってしまうために、文章をきちんと書ける人が少ないのだ。だから口コミで情報が広まるのだ。

 そしてそれはいつしか伝言ゲームと化し、意図していない名前に変化して定着してしまう。

「おもろいからええやろ ヨ」
「面白がるなよ」

 魔球の試合は、雪が溶けたら見に行くこととして、俺たちは日銭稼ぎに精を出したのであった。しかし、そこに。

「ユウ、ユウ。大変なのだヨ。我はすぐにミノ国に帰らないといけないのだヨ」
「おや、どうしたんだ。ミノウが慌てるって珍しいな」
「こうしている場合ではないのだ。洪水なのだ。洪水が起きたのだ」

 えええっ!! 

「それは、大災害になりそうなのか? タケウチは大丈夫か? 研究所は?」
「すでに大災害になったようなのだヨ。タケウチは高台にあるから水の被害はないが、鉱山は土砂崩れを起こしたようだ。我はすぐに行かねばならない。オウミも連れて行きたいヨ」
「わかった、それは大変だ。手伝えるものは全部連れて行け。カンキチも行けるな?」

「ああ、もちろん、手伝わせてもらう。ケガ人や病人が出たら俺が面倒みよう」
「我も世話になった土地なノだ。水のコントロールならまかせるノだ」

「助かるのだ。感謝なのだヨ。では、これだけ持ってすぐに行ってくるのだヨ」
「じゃ我もこれだけ持ってゆくノだ。ユウ。またな」
「じゃあ、俺も」

 そういって慌ただしく魔王3人組はミノ国に飛んで行った。ちゃっかりふたり用のイテコマシを各自が1セットずつ持って。

「ほんとに災害が起こったんだろうな?!」
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