異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

文字の大きさ
52 / 179

52 魔法の特訓

しおりを挟む
 検証の結果、シルヴィアは治癒魔法を使えるということがわかった。

 ただ、レベル的には初級レベルであり、まだ実戦に耐えられるものではなかった。小さな傷をじっくり時間をかけて治すことはできるが、実際の戦場で必要とされる治癒の力を的確に使えるかと言えば、その道程は遥かに遠かった。

 更に、シルヴィアにはひとつ大きな問題があった。

 戦闘能力がないのだ。

 生まれてこの方戦闘に関する訓練などしたことがないので当然なのだが、最低でも自分の身くらいは守れるようになってもらわないと、怖くて戦場には出せない。

 とは言え、自分に魔法の才能があると知ったシルヴィアの喜びようは半端なものではなかった。

「頑張って強くなります。鍛えてください!」

 背後に燃え盛る炎が幻視できるくらいシルヴィアは燃えていた。

 あれ?   意外と体育会系の気質だったりする?

「どんなに厳しくても頑張ります!   わたしもパーティに入れてください」 

「うん、大歓迎だよ。一緒に頑張ろう!」

 こういうノリが大好きなカズサさんが、シルヴィアと固い握手を交わした。

「こういうのもお導きってやつなのかねえ。必要とするタイミングで必要とするものが現れてくるなんて」

「あれ、リョウさんって運命論者ですか?」

「そういうわけじゃないんだけど、最近のおまえらを見てると、信じてもいいかな、って気にもなるな」

「言われてみれば……」

 そう考えるのも悪くないか。こっ恥ずかしい気もするが、まあ許容範囲内だ。

「まずは戦えるようになるのが先決かな。両方いっぺんには大変でしょ」

「わたしにいい考えがあるわ。ガッツリ治癒魔法の経験値を稼ぐ方法」

 にんまり笑ったユキノさんが言った。

 うわー、ダメだ、この顔。絶対黒いこと考えてる顔だ。

 見た目おとなしそうなユキノさんだが、人に関節技をかけたがる問題行動に加え、思考がかなり悪魔的である。平地に乱を起こすのを好む傾向があるし、下ネタも得意分野である。何が言いたいかというと、シルヴィアには見習って欲しくない、ってことだ。

「シルヴィア、聞いちゃダメだ」

「絶対に一番効率良くレベルアップできるわよ」

 そんな風に言われれば、今の向上心に燃えるシルヴィアの答えは自然と決まってくる。

「教えてください」

「治癒魔法の別名は回復魔法でしょ。だからコータローをカラカラになるまで搾り取った後、回復魔法をかけるの。それを繰り返せば一晩で結構レベルアップできるはずよ。このやり方ならコータローも嬉しいでしょ」

 おもいっきりゲスなことを、これ以上ないドヤ顔でのたまいやがった。

「…リョウさん、殴っていいかな?」

「いいぞ。その後で俺も殴る」

「何でよっ!?」

 …この人、本気で疑問に思ってんのか?

「あの……」

 見ろ、シルヴィアが困ってるじゃねえか。

「いいから。何も聞かなかったことにしよう」

「…よくわからなかったんですけど…コータローを搾り取るって、どういうことですか?」

「……」

 俺、リョウさん、カズサさんの非難の視線が集中しても、ユキノさんは動じる様子はなかった。

「耳かして」

 シルヴィアの耳元で悪魔が囁く。

 言われたことを理解したシルヴィアの顔が赤く染まった。

 だから、この人の言うことを聞いちゃいけません。

 ところがーー

「は、恥ずかしいけど…それで魔法が上達できるなら……協力してくれる?」

「シルヴィアさん!?」

 何を言い出すんですか、あなたは!?

 にしし、とユキノさんは含みのある笑いを見せた。

「我々が特訓の邪魔になってはいけない。今日はこれで引き上げよう」

 そう言って、本当に帰ってしまった。



 その日の夜はーー

 死ぬかと思った。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

処理中です...