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52 魔法の特訓
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検証の結果、シルヴィアは治癒魔法を使えるということがわかった。
ただ、レベル的には初級レベルであり、まだ実戦に耐えられるものではなかった。小さな傷をじっくり時間をかけて治すことはできるが、実際の戦場で必要とされる治癒の力を的確に使えるかと言えば、その道程は遥かに遠かった。
更に、シルヴィアにはひとつ大きな問題があった。
戦闘能力がないのだ。
生まれてこの方戦闘に関する訓練などしたことがないので当然なのだが、最低でも自分の身くらいは守れるようになってもらわないと、怖くて戦場には出せない。
とは言え、自分に魔法の才能があると知ったシルヴィアの喜びようは半端なものではなかった。
「頑張って強くなります。鍛えてください!」
背後に燃え盛る炎が幻視できるくらいシルヴィアは燃えていた。
あれ? 意外と体育会系の気質だったりする?
「どんなに厳しくても頑張ります! わたしもパーティに入れてください」
「うん、大歓迎だよ。一緒に頑張ろう!」
こういうノリが大好きなカズサさんが、シルヴィアと固い握手を交わした。
「こういうのもお導きってやつなのかねえ。必要とするタイミングで必要とするものが現れてくるなんて」
「あれ、リョウさんって運命論者ですか?」
「そういうわけじゃないんだけど、最近のおまえらを見てると、信じてもいいかな、って気にもなるな」
「言われてみれば……」
そう考えるのも悪くないか。こっ恥ずかしい気もするが、まあ許容範囲内だ。
「まずは戦えるようになるのが先決かな。両方いっぺんには大変でしょ」
「わたしにいい考えがあるわ。ガッツリ治癒魔法の経験値を稼ぐ方法」
にんまり笑ったユキノさんが言った。
うわー、ダメだ、この顔。絶対黒いこと考えてる顔だ。
見た目おとなしそうなユキノさんだが、人に関節技をかけたがる問題行動に加え、思考がかなり悪魔的である。平地に乱を起こすのを好む傾向があるし、下ネタも得意分野である。何が言いたいかというと、シルヴィアには見習って欲しくない、ってことだ。
「シルヴィア、聞いちゃダメだ」
「絶対に一番効率良くレベルアップできるわよ」
そんな風に言われれば、今の向上心に燃えるシルヴィアの答えは自然と決まってくる。
「教えてください」
「治癒魔法の別名は回復魔法でしょ。だからコータローをカラカラになるまで搾り取った後、回復魔法をかけるの。それを繰り返せば一晩で結構レベルアップできるはずよ。このやり方ならコータローも嬉しいでしょ」
おもいっきりゲスなことを、これ以上ないドヤ顔でのたまいやがった。
「…リョウさん、殴っていいかな?」
「いいぞ。その後で俺も殴る」
「何でよっ!?」
…この人、本気で疑問に思ってんのか?
「あの……」
見ろ、シルヴィアが困ってるじゃねえか。
「いいから。何も聞かなかったことにしよう」
「…よくわからなかったんですけど…コータローを搾り取るって、どういうことですか?」
「……」
俺、リョウさん、カズサさんの非難の視線が集中しても、ユキノさんは動じる様子はなかった。
「耳かして」
シルヴィアの耳元で悪魔が囁く。
言われたことを理解したシルヴィアの顔が赤く染まった。
だから、この人の言うことを聞いちゃいけません。
ところがーー
「は、恥ずかしいけど…それで魔法が上達できるなら……協力してくれる?」
「シルヴィアさん!?」
何を言い出すんですか、あなたは!?
にしし、とユキノさんは含みのある笑いを見せた。
「我々が特訓の邪魔になってはいけない。今日はこれで引き上げよう」
そう言って、本当に帰ってしまった。
その日の夜はーー
死ぬかと思った。
ただ、レベル的には初級レベルであり、まだ実戦に耐えられるものではなかった。小さな傷をじっくり時間をかけて治すことはできるが、実際の戦場で必要とされる治癒の力を的確に使えるかと言えば、その道程は遥かに遠かった。
更に、シルヴィアにはひとつ大きな問題があった。
戦闘能力がないのだ。
生まれてこの方戦闘に関する訓練などしたことがないので当然なのだが、最低でも自分の身くらいは守れるようになってもらわないと、怖くて戦場には出せない。
とは言え、自分に魔法の才能があると知ったシルヴィアの喜びようは半端なものではなかった。
「頑張って強くなります。鍛えてください!」
背後に燃え盛る炎が幻視できるくらいシルヴィアは燃えていた。
あれ? 意外と体育会系の気質だったりする?
「どんなに厳しくても頑張ります! わたしもパーティに入れてください」
「うん、大歓迎だよ。一緒に頑張ろう!」
こういうノリが大好きなカズサさんが、シルヴィアと固い握手を交わした。
「こういうのもお導きってやつなのかねえ。必要とするタイミングで必要とするものが現れてくるなんて」
「あれ、リョウさんって運命論者ですか?」
「そういうわけじゃないんだけど、最近のおまえらを見てると、信じてもいいかな、って気にもなるな」
「言われてみれば……」
そう考えるのも悪くないか。こっ恥ずかしい気もするが、まあ許容範囲内だ。
「まずは戦えるようになるのが先決かな。両方いっぺんには大変でしょ」
「わたしにいい考えがあるわ。ガッツリ治癒魔法の経験値を稼ぐ方法」
にんまり笑ったユキノさんが言った。
うわー、ダメだ、この顔。絶対黒いこと考えてる顔だ。
見た目おとなしそうなユキノさんだが、人に関節技をかけたがる問題行動に加え、思考がかなり悪魔的である。平地に乱を起こすのを好む傾向があるし、下ネタも得意分野である。何が言いたいかというと、シルヴィアには見習って欲しくない、ってことだ。
「シルヴィア、聞いちゃダメだ」
「絶対に一番効率良くレベルアップできるわよ」
そんな風に言われれば、今の向上心に燃えるシルヴィアの答えは自然と決まってくる。
「教えてください」
「治癒魔法の別名は回復魔法でしょ。だからコータローをカラカラになるまで搾り取った後、回復魔法をかけるの。それを繰り返せば一晩で結構レベルアップできるはずよ。このやり方ならコータローも嬉しいでしょ」
おもいっきりゲスなことを、これ以上ないドヤ顔でのたまいやがった。
「…リョウさん、殴っていいかな?」
「いいぞ。その後で俺も殴る」
「何でよっ!?」
…この人、本気で疑問に思ってんのか?
「あの……」
見ろ、シルヴィアが困ってるじゃねえか。
「いいから。何も聞かなかったことにしよう」
「…よくわからなかったんですけど…コータローを搾り取るって、どういうことですか?」
「……」
俺、リョウさん、カズサさんの非難の視線が集中しても、ユキノさんは動じる様子はなかった。
「耳かして」
シルヴィアの耳元で悪魔が囁く。
言われたことを理解したシルヴィアの顔が赤く染まった。
だから、この人の言うことを聞いちゃいけません。
ところがーー
「は、恥ずかしいけど…それで魔法が上達できるなら……協力してくれる?」
「シルヴィアさん!?」
何を言い出すんですか、あなたは!?
にしし、とユキノさんは含みのある笑いを見せた。
「我々が特訓の邪魔になってはいけない。今日はこれで引き上げよう」
そう言って、本当に帰ってしまった。
その日の夜はーー
死ぬかと思った。
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