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71 突き抜けたバカ
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工房に現れたのは、身を屈めないと扉をくぐれないような大男だった。
うお、でけえ……
こんなでかい人間、初めて見た。本当に同じ人類なのかと疑いたくなる。
ただでけえだけじゃねえ。ちょっとした身のこなしでそれがわかる。こいつは強い。
男は工房内を見回し、ガンテスさんに目を止めた。
「おまえがガンテスか。用向きはこいつらが伝えたな。この中で一番の剣はどれだ?」
「おまえに渡すものはない」
「何だと?」
「たとえ金をいくら積まれても、おまえにわしの剣は売らんよ。帰ってくれ」
ガンテスさんの口調は淡々としていたが、確固たる意志が込められていた。
「ほう」
ブロディの目が剣呑な光を帯びた。
「俺が強くなるのを邪魔するというのだな。それはすなわち我が国の敵を利することに他ならん。貴様は利敵行為で死罪だ」
はあ!?
目が点になるとはこのことか、と初めて思った。
どんな理屈だよ、それ。
俺を含めて誰もが冗談だと思っていた。そりゃそうだろう。こんな無法がまかり通るようじゃ、国として欠陥だ。
そう思ったのだがーー
次の瞬間、ブロディは問答無用で剣を抜き放ち、ガンテスさんに斬りつけた。
「うおっ!?」
自分を褒めてもいい反応だったと思う。とっさに二人の間に飛び込み、双剣で斬撃を受け止めた。
「ぐっ!?」
想像を遥かに超えた重い一撃。このオリハルコンの剣でなければ、剣ごとぶった斬られていたかもしれない。
「ほう」
ブロディは面白そうに目を細めた。
「その剣、オリハルコンか。冒険者風情にはもったいない。俺に献上しろ」
「やなこった」
「ならば貴様も死ぬがいい。利敵行為だ」
どうやらこいつは真性のバカらしい。本気で自分の思い通りにならないことは罪だと思っているようだ。
「やめなさい!」
初めて聞く、シルヴィアの鋭い声。
ブロディが訝しげにシルヴィアを見た。
その目が細められた。
「ブロディ将軍、恥を知りなさい! あなたはそれでも王国の騎士なのですか!?」
「…何だ、おまえ? 生意気だが、いい女だな。俺の女になれ」
「は?」
こいつ、場の空気を読めないにもほどがあるだろう。
「何を言い出すかと思えば…呆れますね……」
「何だと?」
「わかりませんか? わたし、シルヴィアですよ」
ブロディは眉をひそめた。何を言われたのか、わからなかったらしい。
「昔あなたが醜いと罵った女ですよ」
「…シルヴィア姫だというのか……?」
「はい。シルヴィアです」
「嘘だ。まるっきり別人ではないか」
「旦那様が呪いを解いてくれたんです」
「呪いのせいで醜女に見えていたというのか。そういうことなら是非もない。改めて嫁に迎えることにしよう」
「は?」
こいつはどこまで人の想像力を超えていくんだろうか?
「人の話聞いてましたか? 旦那様が呪いを解いてくれたと言ったんですよ」
あまりの話の通じなさ加減に怖くなってきたのか、シルヴィアは俺の背に回ってきた。
「貴様か」
「ああ、俺だ」
真正面からやり合ったら勝ち目がないのはわかっているが、ここは絶対に退いちゃいけない場面だ。
「退きなさい、ブロディ将軍。王族相手にそのような無法を通せると思っているのですか」
本当はもう王族ではないのだが、俺もあえて余計な口は挟まない。シルヴィアが結婚したことも知らなかったみたいだし、話をややこしくして得することは何もない。
「…名を聞いておこうか」
「高杉孝太郎だ」
「覚えておくがいい。俺は欲しいと思ったものは必ず手にいれるーーどんな手を使ってでもな」
「はっ、いかにも三流の悪役が言いそうな台詞だな。芸がなさすぎるぜ。出直してきな」
ブロディは口角を吊り上げ、猛獣の笑みを見せた。
「その言葉、後悔させてやる」
「やれるもんならやってみな」
もう売り言葉に買い言葉だ。勝てる気はまったくしないが、言葉が止まらない。
「おまえの脳みそで考えられそうなことぐらい完封してやるよ。せいぜいない知恵絞って頑張れや」
これには答えず、ブロディは黙って工房を出ていった。
最後に残した不気味な笑みはかなり粘着質で、この先が思いやられるものだった。
うお、でけえ……
こんなでかい人間、初めて見た。本当に同じ人類なのかと疑いたくなる。
ただでけえだけじゃねえ。ちょっとした身のこなしでそれがわかる。こいつは強い。
男は工房内を見回し、ガンテスさんに目を止めた。
「おまえがガンテスか。用向きはこいつらが伝えたな。この中で一番の剣はどれだ?」
「おまえに渡すものはない」
「何だと?」
「たとえ金をいくら積まれても、おまえにわしの剣は売らんよ。帰ってくれ」
ガンテスさんの口調は淡々としていたが、確固たる意志が込められていた。
「ほう」
ブロディの目が剣呑な光を帯びた。
「俺が強くなるのを邪魔するというのだな。それはすなわち我が国の敵を利することに他ならん。貴様は利敵行為で死罪だ」
はあ!?
目が点になるとはこのことか、と初めて思った。
どんな理屈だよ、それ。
俺を含めて誰もが冗談だと思っていた。そりゃそうだろう。こんな無法がまかり通るようじゃ、国として欠陥だ。
そう思ったのだがーー
次の瞬間、ブロディは問答無用で剣を抜き放ち、ガンテスさんに斬りつけた。
「うおっ!?」
自分を褒めてもいい反応だったと思う。とっさに二人の間に飛び込み、双剣で斬撃を受け止めた。
「ぐっ!?」
想像を遥かに超えた重い一撃。このオリハルコンの剣でなければ、剣ごとぶった斬られていたかもしれない。
「ほう」
ブロディは面白そうに目を細めた。
「その剣、オリハルコンか。冒険者風情にはもったいない。俺に献上しろ」
「やなこった」
「ならば貴様も死ぬがいい。利敵行為だ」
どうやらこいつは真性のバカらしい。本気で自分の思い通りにならないことは罪だと思っているようだ。
「やめなさい!」
初めて聞く、シルヴィアの鋭い声。
ブロディが訝しげにシルヴィアを見た。
その目が細められた。
「ブロディ将軍、恥を知りなさい! あなたはそれでも王国の騎士なのですか!?」
「…何だ、おまえ? 生意気だが、いい女だな。俺の女になれ」
「は?」
こいつ、場の空気を読めないにもほどがあるだろう。
「何を言い出すかと思えば…呆れますね……」
「何だと?」
「わかりませんか? わたし、シルヴィアですよ」
ブロディは眉をひそめた。何を言われたのか、わからなかったらしい。
「昔あなたが醜いと罵った女ですよ」
「…シルヴィア姫だというのか……?」
「はい。シルヴィアです」
「嘘だ。まるっきり別人ではないか」
「旦那様が呪いを解いてくれたんです」
「呪いのせいで醜女に見えていたというのか。そういうことなら是非もない。改めて嫁に迎えることにしよう」
「は?」
こいつはどこまで人の想像力を超えていくんだろうか?
「人の話聞いてましたか? 旦那様が呪いを解いてくれたと言ったんですよ」
あまりの話の通じなさ加減に怖くなってきたのか、シルヴィアは俺の背に回ってきた。
「貴様か」
「ああ、俺だ」
真正面からやり合ったら勝ち目がないのはわかっているが、ここは絶対に退いちゃいけない場面だ。
「退きなさい、ブロディ将軍。王族相手にそのような無法を通せると思っているのですか」
本当はもう王族ではないのだが、俺もあえて余計な口は挟まない。シルヴィアが結婚したことも知らなかったみたいだし、話をややこしくして得することは何もない。
「…名を聞いておこうか」
「高杉孝太郎だ」
「覚えておくがいい。俺は欲しいと思ったものは必ず手にいれるーーどんな手を使ってでもな」
「はっ、いかにも三流の悪役が言いそうな台詞だな。芸がなさすぎるぜ。出直してきな」
ブロディは口角を吊り上げ、猛獣の笑みを見せた。
「その言葉、後悔させてやる」
「やれるもんならやってみな」
もう売り言葉に買い言葉だ。勝てる気はまったくしないが、言葉が止まらない。
「おまえの脳みそで考えられそうなことぐらい完封してやるよ。せいぜいない知恵絞って頑張れや」
これには答えず、ブロディは黙って工房を出ていった。
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