異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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87 俺って……

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 ミネルヴァ姫の解呪を行うにあたって、俺たちは城内に部屋をもらった。

 とりあえずシルヴィアの時と同じやり方でアプローチを試みる。

「おはようございます、ミネルヴァ姫。今日も可愛いですね」

 朝、顔を合わせた時にそう言うと、ミネルヴァ姫は嬉しそうな困ったような複雑な顔を見せた。

 言われ慣れてないのが丸わかりの態度だ。詳しくは聞いていなかったが、シルヴィアと似たような扱いを受けていたんだろうなあ、というのが容易に想像できた。

 シルヴィアの時はまず俺が本気で言っているというのを信じてもらうところから始めなければならなかったが、実績があるおかげで、そこはもうクリアできているようだ。

 ただ、そこからの歩みは順調とは言い難かった。

 目に見える形での結果がなかなか表れないのだ。

 ミネルヴァ姫が本当は可愛いということを疑っている者はいない。受け入れる下地ができているにも関わらず結果が出ないというのは、やっぱり俺に問題があるということか。

 自分でも何となくわかっているんだ。心を込めきれていないことは。

 これはあくまでも治療みたいなもの。本気ではない。それを求められているんだから、やるべきだと。そう頭では理解しているのだが、いざ突っ込んで褒めようとすると、口が上手くまわらなくなってしまうのだ。

 結果、俺の言葉は人の心に響かない、薄っぺらなものに成り果てていた。

 多分、俺がここに至るまでにシルヴィア以外の女の子とつきあう経験をしてきていれば、少しは違ったのではないかと思う。

 どうしても浮気をしているような罪悪感が拭えないのだ。そうではないし、シルヴィアの了承もあるのだが、自分の気持ちだけが納得してくれないのだ。

 何なんだ、俺……

「難しく考え過ぎてない?」

「自分でもわかっているんだけど……」

「コータローは真面目だからね」

 シルヴィアは苦笑いしている。

「そういうとこ、嫌いじゃないけど、ちょっと融通が利かなすぎるんじゃないかと思うの」

「……」

「ミネルヴァはコータローに助けを求めてるんだよ。助けられるのはコータローだけなんだよ」

「…わかってる……」

「こんなこと言うの自惚れてるみたいで嫌なんだけどーーミネルヴァ姫のこと、わたしだと思ってやってみたらどうかな?」

「…やってみたけど、ダメだった……」

 一応試してはみたのだ。が、効果はなかった。

「そう……」

 シルヴィアの表情も曇る。

「ーーコータロー、ミネルヴァ姫とちゃんと話してる?」

「話って?」

「どんなことでもいいんだけど…例えば、好きな食べ物とか知ってる?」

「知らない……」

「趣味とか特技は?」

「誕生日」

「……」

「これじゃ上手くいかないよね……」

「そうだな……」

「どうしたの?   コータローらしくないじゃない」

 …シルヴィアになら正直に話してもいいか。

「どうしていいのかわかんねえんだよ」

「何が?」

「シルヴィアの時は本気で口説いたんだよ。自分でも恥ずかしくなるくらい必死にな」

「うん。そうだったね」

 ちょっとシルヴィアの顔が赤くなった。

「だからこそ解けたと思うんだけどーー同じようにやって、口説けちゃったらどうすりゃいいんだよ」

 結構真面目に心配していたのだが、シルヴィアには笑われてしまった。

「そんなこと心配してたの?」

「そんなことって……」

 かなり重要なことだと思うんだけど。

「そこは覚悟の上だから」

「へ?」

「この話を受けた時からその辺はちゃんと想定してます。だから、遠慮なくやっていいよ、っていうか、やりなさい」

「シルヴィアはそれでいいのか?」

「正直、やきもちは妬くわよ。でも、心変わりさせない自信はあるからーーそれとも、これって自惚れかしら?」

「い、いや、そんなことない」

 何だか気圧されてしまう。

 シルヴィア、強くなったなぁ……

「だから、ちゃんと呪い解いてあげてね」

「わかった」

 これ以上へたれたこと言ってたらシルヴィアに愛想尽かされちまう。

 こんなこと言われてる時点でダメダメだが、まだ取り返しはつくはずだ。

 気持ちを入れ替え、性根を据えることにした。

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