異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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105 交わらない価値観

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「そんな時でした。コータローがわたしの前に現れてくれたんです」

 ミネルヴァがチラリとこっちを見て、そっと手を伸ばしてきた。

 その手を恋人つなぎに受けると、ミネルヴァの表情は嬉し恥ずかしそうに蕩けた。

「コータローは、モノトーンだったわたしの世界に色をくれました。わたしを褒めて、ちやほやしてくれてーーそんなことがすごく嬉しかったんです」

 そう言われると、少々と言うかかなり反省しなけりゃならなくなる。初期の頃の迷走っぷりは思い出すだけで顔が熱くなるレベルだった……

「本当のわたしは美人だ。呪いをかけられてるだけだから、その呪いを解いてくれるって言われて、正直最初は半信半疑でした。でも、徐々に効果が表れてきて、気づいたらコータローのことが大好きになってて、その思いは日増しに強くなっていきました」

 そこでミネルヴァの手に力がこもった。

「でも、わたしは自分の想いを告げることができませんでした。その時既にコータローにはシルヴィア様という素敵な奥様がいましたので」

 この一言で会場全体にどよめきが広がった。

「何だと!?」

「ミネルヴァ様を愛妾の位置に置くと言うのか!?」

「そんなことが許されるものか!」

「なぜ皆様の許可が必要になるのですか?」

 つないだ手に痛いくらいの力がこもった。激発しそうな感情を必死に抑えているのだろう。

「王族の結婚には国益を考える必要があります」

 貴族の中でも偉そうにしているおっさんが、したり顔でぬかしやがった。

「では訊きますが、わたしの呪いがかかったままだったら、この結婚は反対されなかったということですか?」

「そうですな」

 あたりまえのことのように頷きやがった。

「そーー」

 反論しかけたミネルヴァの頭を、とっさに自分の胸に抱え込んだ。

 これ以上不毛な会話を続けさせたら、ミネルヴァが傷つくだけだ。こいつらの腐れた価値観はここで議論をしたところで変わることはないだろう。嫌な思いをするだけ馬鹿馬鹿しい。

「もう話さなくていい。後は俺が実績で認めさせる」

「あんな言われ方…悔しいよ……」

「わかってる。言葉が通じないバカ相手にムキになってもしょうがねえ。おまえの価値、キチンと証明しよう」

「絶対見返す」

 ミネルヴァにしては珍しい、断固とした決意表明。

 それを受けて、俺は偉そうな貴族を睨み付けた。

「下らねえ慣習だがな、告知期間とやらにつきあってやるよ。文句があるヤツは俺に言ってこい。一人残らず返り討ちにしてやる。そんで、女をモノとしか見ていないおまえらには絶対に見つけられなかったはずの、ミネルヴァの真価を見せつけてやるよ」

「平民が。すぐに後悔させてやる」

「やれるもんならやってみな」

 こうして、めでたい話のはずが、陰湿な戦いの幕開けになってしまった。

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