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117 逃げるべきだが……
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久々に韋駄天を使ってみて実感したことがある。
基礎体力がバカみたいなことになってた。どれだけ走っても疲れを感じない。
ブートキャンプの成果なんだろうが、この体力は自分でもちょっとどうかと思うレベルの人間離れっぷりだ。
時折すれ違う人や追い越した人に驚かれたが、急いでいたってことで勘弁してもらおう。
そんなわけで道程は順調に進み、王都を出て三日後には被害報告があった村に到着した。
そこで目にしたものはーー
「…ひでえな……」
破壊し尽された跡がそこにあった。
建物はすべて壊され、そこここに死体が転がっている。一般の村人だけでなく、武装した兵士も倒れている。
「相当な数の魔物が出たのか…にしても、ここまでやるか……」
魔物に人間の常識が通じないのはわかっていたつもりだったが、改めて思い知らされた。
「さて、これだけで帰るわけにはいかないよな。魔物どもはまだ近くにいるんかな?」
とりあえず一番近い村を目指すことにする。
できれば魔物の動向みたいなものをつきとめたい。単なる大量発生なのか、それともキング級の個体が生まれたのか。それによって対応がまったく変わってくる。
そして、軍の部隊を全滅させるような群れが今どこにいるのか。これ以上の被害を防ぐためには一刻も早く状況を把握し、適切な処置を取らなければならない。
急いた気が自然と足を早めさせる。
どれだけ走った後だったか、進行方向に土煙が上がっているのが見えた。
自分の中でギアを入れ替え、トップスピードで走る。俺の後ろにも漫画のような土煙がたった。
すぐに現場が見えてきた。
予想していた通り、魔物が村を襲っていた。
村人たちも抵抗はしているようだが、所詮は素人だ。ほぼ一方的な虐殺になってしまっている。
「くっ……」
正直に言おう。俺はこの時躊躇した。
彼我の戦力差は論ずるにも値しない。俺一人が参戦したところで、焼け石にかける水にもならない。死体がひとつ増えるだけの話でしかない。
そして、俺がここで斃れれば、中央に情報が伝わらなくなり、ますます被害が拡大することになる。
それを理由に俺は目の前の現実から目を背けようとした。
後一秒早く踵を返していたら、多分そのまま逃げていたはずだ。
だが、逃げかけたその時、こちらへ向かって逃げてくる人影が目に入った。
姉弟なのか、俺と同じくらいの女の子ともう少し小さい男の子が必死に走っている。
その後ろからはゴブリンとオークが合わせて十匹ほど追いかけて来ている。
多分十匹くらいならなんとかなる。だが、十匹倒す間に他のが追いついてくるだろう。そうなれば、後は泥沼だ。下手すりゃ死ぬ。
シルヴィアやミネルヴァのことを思えば、ここは逃げの一手だ。
だがーー
「見ちまって知らんぷりなんてできるわけねえだろうが!」
すまん、シルヴィア。すまん、ミネルヴァ。もしかしたら戻れないかもしれん。
「うおおおおーー」
雄叫びをあげて、俺は走り出した。
基礎体力がバカみたいなことになってた。どれだけ走っても疲れを感じない。
ブートキャンプの成果なんだろうが、この体力は自分でもちょっとどうかと思うレベルの人間離れっぷりだ。
時折すれ違う人や追い越した人に驚かれたが、急いでいたってことで勘弁してもらおう。
そんなわけで道程は順調に進み、王都を出て三日後には被害報告があった村に到着した。
そこで目にしたものはーー
「…ひでえな……」
破壊し尽された跡がそこにあった。
建物はすべて壊され、そこここに死体が転がっている。一般の村人だけでなく、武装した兵士も倒れている。
「相当な数の魔物が出たのか…にしても、ここまでやるか……」
魔物に人間の常識が通じないのはわかっていたつもりだったが、改めて思い知らされた。
「さて、これだけで帰るわけにはいかないよな。魔物どもはまだ近くにいるんかな?」
とりあえず一番近い村を目指すことにする。
できれば魔物の動向みたいなものをつきとめたい。単なる大量発生なのか、それともキング級の個体が生まれたのか。それによって対応がまったく変わってくる。
そして、軍の部隊を全滅させるような群れが今どこにいるのか。これ以上の被害を防ぐためには一刻も早く状況を把握し、適切な処置を取らなければならない。
急いた気が自然と足を早めさせる。
どれだけ走った後だったか、進行方向に土煙が上がっているのが見えた。
自分の中でギアを入れ替え、トップスピードで走る。俺の後ろにも漫画のような土煙がたった。
すぐに現場が見えてきた。
予想していた通り、魔物が村を襲っていた。
村人たちも抵抗はしているようだが、所詮は素人だ。ほぼ一方的な虐殺になってしまっている。
「くっ……」
正直に言おう。俺はこの時躊躇した。
彼我の戦力差は論ずるにも値しない。俺一人が参戦したところで、焼け石にかける水にもならない。死体がひとつ増えるだけの話でしかない。
そして、俺がここで斃れれば、中央に情報が伝わらなくなり、ますます被害が拡大することになる。
それを理由に俺は目の前の現実から目を背けようとした。
後一秒早く踵を返していたら、多分そのまま逃げていたはずだ。
だが、逃げかけたその時、こちらへ向かって逃げてくる人影が目に入った。
姉弟なのか、俺と同じくらいの女の子ともう少し小さい男の子が必死に走っている。
その後ろからはゴブリンとオークが合わせて十匹ほど追いかけて来ている。
多分十匹くらいならなんとかなる。だが、十匹倒す間に他のが追いついてくるだろう。そうなれば、後は泥沼だ。下手すりゃ死ぬ。
シルヴィアやミネルヴァのことを思えば、ここは逃げの一手だ。
だがーー
「見ちまって知らんぷりなんてできるわけねえだろうが!」
すまん、シルヴィア。すまん、ミネルヴァ。もしかしたら戻れないかもしれん。
「うおおおおーー」
雄叫びをあげて、俺は走り出した。
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