異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

文字の大きさ
138 / 179

138 カオス

しおりを挟む
 式は無事に終わり、披露宴、というかパーティに突入した。

 王都全体が祝賀ムードに包まれる中、俺たち三人はできるだけ多くの人たちと言葉を交わそうと、街中を歩き回っていた。

「姫様、おめでとう」

「すっごく綺麗です!」

「ありがとう」

 ミネルヴァは実にいい笑顔を振りまいている。

「あんたも綺麗だねえ」

「姫様と仲良くしてあげてね」

「よろしく頼むよ」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

 シルヴィアもいい笑顔だ。

 それに反して俺はと言えばーー

「リア充死ね」

「爆発しろ」

「わっはっは、妬むな妬むな」

「この野郎、ふざけんな」

 男どものヘイトを一身に集めていた。

 まあ、気持ちはわかる。こんな可愛い二人を両手に花しているのが自分じゃなかったら、石のひとつでも投げたくなるからな。

 平和な諍いを挟みつつ、練り歩きを続けていくと、歩いていく先々で串焼きやら、飲み物やら、お菓子やら、色々なものをいただいた。

 その場ですぐに飲み食いするのだが、消化するよりいただくペースの方が早く、大変なことになってしまう。

 ミネルヴァとシルヴィアが食べきれない分を俺にまわしてくるもんで、俺の腹ははち切れそうになっている。

「き、きつい……」

 だが、俺が苦しんでいると、周りの男どもが喜ぶこと、喜ぶこと。ますます差し入れが増えていく。

「もういい。要らん」

「まあまあ、そう言わずに」

「ふざけんな」

 この後シルヴィアとミネルヴァが助けに入ってくれたのだがーー

「あれえ、なんかへんだよお」

 いきなりミネルヴァの呂律が怪しくなった。

「どうした?」

「んとねえ、あたまがふらふらするの。なんだかきもちいいよ」

 嫌な予感がした。

「まさか…アルコール?」

「ええー、おさけなんてのんでないよ」

 間違いない。差し入れの中に酒が混ざってたな。

「シルヴィアは大丈夫か?」

「なにが?」

 あ、ダメだ。初めて見るくらい真っ赤な顔してる。こっちも飲んじまったな。

 さて、変な酒癖持ってなければいいけどな。

 でもまあ、こういう場合って絶対何かあるんだよな。

 正直あきらめた、と言うか、何があってもいいように心構えをした。

 まず変化が現れたのはミネルヴァだった。

「ふにゃああーっ」

 しなだれかかると言うよりも甘えて抱きついてくる感じ。周りから見ればイラっとくることだろう。視線が痛い。

 でもな、これって俺のせいじゃないからな。誰かが差し入れたアルコールのせいだからな。

 なんて思っているうちに、今度はシルヴィアが潰れた。何の前触れもなく、いきなり崩れ落ちる。

「あぶねっ!?」

 慌てて抱き止める。意識はあったようで、蕩けるような笑顔をしている。

「大丈夫か?」

「歩けないぃ」

 普段のシルヴィアからは想像もつかないような甘えた声。これが二人、もしくは三人だけの時だったらすぐさまことに及ぶところだが、この人前ではそういうわけにもいかない。

 どうしてこうなった……?

 せっかくの結婚式なのに、えらくカオスな状況になってしまった。

 いっそのこと俺もアルコールで乱れてしまいたいところだったが、俺のもとにアルコールがまわってくることはなかった。



しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...