異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

文字の大きさ
149 / 179

149 ちょっと妬けちゃうんですけど……

しおりを挟む
 マリエールを城へ送り届け、すぐにお暇しようと思っていたのだが、王様が執務を放り出して心配していたために、取っ捕まって熱烈歓迎されることになった。

 マリエールの無事はもちろん、王様にとってはシルヴィアの里帰りが殊の外嬉しかったらしい。デレデレになって出国以後の話を聞きたがっている。

 これも親孝行かとほっこりしていると、執務を終えたアンジェリーナが合流してきた。

 その姿を見て、俺は思わず目を瞠った。前に会った時からそれほど経っていないはずなのだが、まるで別人であるかのような印象を受けたのだ。

 風格みたいな空気をまとい、自信に満ちたいい表情をしている。

 ああ、いい方向に向かって行けてるんだな。

 それが伝わってきて、自然に口元がほころんだ。

 アンジェリーナと目が合うと、実にいい笑顔を見せてくれた。

「今度はマリエールの命まで助けていただいたそうで、本当に何とお礼を言っていいのか。王家一同コータロー様には頭が上がりませんね」

「水臭いこと言わんでくれ」

「それでもお礼は言わせてくださいーーありがとうございました」

「どういたしまして。これからも何かあれば遠慮なく言ってくれ。できることなら何でもやるから」

「じゃあそこはお互いさまということで単刀直入に訊きますねーーわたしたちは何をすればいいですか?」

「…参ったな。頼みがあるのはお見通しか」

「そりゃそうですよ。何もなしでコータローさんたちが今ここにいるわけないじゃないですか。ミネルヴァまで一緒ってことは、オルタナ王国絡みの大事な話ですよね」

「ああ、実はなーー」

 ブライト王子の結婚事情にはじまり、レジーナ王国の後ろ楯が欲しい話、ブロディがシルヴィアとミネルヴァにちょっかいを出してくる話、そこに危ういものを感じている旨を説明した。

「なるほど。あの将軍の病気は治りませんね」

 アンジェリーナは小さくため息をついた。

「ではこうしましょう。こちらで誓約の文言を作りますので、それをブライト殿下に届けてください。同盟を公なものにせず、密約という形をとれば問題ないと思います」

「おう、それいいな。お願いできる?」

「承知しましたーーお父様もよろしいですね?」

「こっちもそれでいいよな?」

 それぞれに確認すると、全員揃ってポカーンとしている。

「どうした?」

 訊くと、なぜか深刻なダメージを受けた様子のシルヴィアが、震える声を絞り出した。

「…な、何…今の息ドンピシャのやりとりは……」

 続けて同じようにうちひしがれたミネルヴァが口を開く。

「口を挟む余地がどこにもなかった」

「それでいて導き出されたのは完璧な結論」

「胸がモヤモヤするわ」

「右に同じ」

 二人から敵意に似た視線を向けられて、アンジェリーナは急にオロオロし始めた。

「ね、姉さん……?」

「うー」

「うー」

「いい加減にしろ」

 二人の頭にアイアンクローをかませる。

「痛いいたいいたい」

「目がさめたか?」

「ひどいよお」

「どっちがひどいんだ。アンジェが怯えてるじゃねえか」

「だってぇ、わたしたち、あんなに息の合ったやりとりしたことないし……」

「コータローも楽しそうだし……」

 二人揃って半べそかかれると、強く言えなくなってしまう。

「はあ……」

 今度は二人の頭をポンポンと叩く。

「変な心配すんな。今のは仕事、アンジェは義妹。ただそれだけ」

「「ごめんなさい」」

「ん。ーーごめんな、アンジェ」

「大丈夫ですよ。ちょっとびっくりしましたけど」

 アンジェリーナはにっこり笑って謝罪を受け入れてくれた。

「今の話はそういうことでいいんですか?」

「それでお願いします」

 ミネルヴァが頷き、話はまとまった。

 
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...