異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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153 ブロディの闇

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 往来で騒いでいたせいか、巡回中らしい兵士がやって来た。

 まあそれはしょうがない。向こうは仕事でやってるわけで、怠慢よりはずっといい。

 しょうがないで済まなかったのが、ブロディが一緒だった点だ。

 こっちがヤツに気づくのとほぼ同時にヤツもこっちに気づいて顔をしかめた。

「またおまえか。目障りだから俺の視界に入ってくるな」

 それはこっちの台詞だと喉まで出かかった言葉を呑み込む。今日はいきなり斬りかかってくることはないようなので、ことが荒立つ前にとっとと退散しよう。

 無言のまま皆を促そうとした時、占い師さんの様子がおかしいことに気がついた。

「おい、どうした?」

  目の焦点が合わず、全身が小刻みに震えている。明らかにただ事ではない。

「しっかりしろ、どうした?」

 呼びかけるが、返事がない。そうこうする内にますます震えが大きくなっていく。

「何だ、その女は」

 ブロディが覗きこんできたが、占い師さんの顔を見てすぐに興味をなくしたようだった。

 が、数歩歩いたところで立ち止まり、こちらを振り返った。

「おい、その女はおまえの目にどう映ってるんだ?」

「…何の話だ?」

「とぼけるな。その女もおまえには美しく見えるのか?」

 なるほど。少しは学習能力があるようだ。だが、こいつにバカ正直に答えてやらなきゃならん義理はない。

「さすがに傷までなかったことにはできねえよ」

 シルヴィアたちが傷がどうとか言ってたのを思い出してそう言った。嘘は言ってないぞ、うん。

「…ふん」

 それで完全に興味を失ったらしいブロディは、兵士たちを率いて去っていった。

 すると、占い師さんは少しだけ落ち着きを取り戻した。とは言ってもまだかなり怯えた感じがある。落ち着かせようと背中をぽんぽん叩いてやったら、強い力でしがみついてきた。

「大丈夫か?   深呼吸できるか?」

 素直に深呼吸を繰り返した占い師さんは、ようやく話せる状態まで回復した。

「…怖かった……」

 占い師さんは血の気の退いた顔で呟いた。

「あんなの初めて見た……」

「何を見たんだ?」

「あの男の人の未来…ちらっと見えてしまっただけだけど、吸い込まれそうな深い闇…一度囚われたら逃げ出すことができなさそうな……」

 占い師さんはブルッと身震いした。

 やっぱりヤツはロクでもねえ野郎なんだな。

 認識を新たにしたが、今は占い師さんのケアを最優先にすることにして、一緒に連れ帰った。

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