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第11話:文化祭と謎の流行
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学園生活最大のイベント、文化祭の季節がやってきた。
当然、面倒くさがりな私が、積極的に参加するはずもない。クラスの出し物を決める会議でも、私はひたすら窓の外を眺めていた。
「イザベラ様は、何かご意見はございますか?」
クラス委員長が、恐る恐る私に尋ねてくる。
周囲の生徒たちも、固唾を呑んで私を見守っている。おそらく「この稀代の天才令嬢なら、きっと誰も思いつかないような素晴らしい企画を提案してくださるに違いない」とでも思っているのだろう。
迷惑な期待だ。
出し物なんて、何でもいい。というか、何もしなくていいならそれが一番だ。
しかし、何か言わないとこの場は収まりそうにない。
私は、前世でよく食べた、あの食べ物を思い出した。安くて、手軽で、美味しくて、お祭りには欠かせない、あの粉物グルメを。
「……丸くて、熱くて、中にタコが入っているようなお菓子は、どうかしら」
「た、タコ、でございますか……?」
「ええ。生地は小麦粉と卵を水で溶いて……鉄板に丸いくぼみがたくさんあるようなもので焼くの。ソースと、あと鰹節……魚を燻して乾燥させて削ったものをかけると、熱で踊るように揺れて、見た目も楽しいわ」
私が前世の記憶を頼りに「たこ焼き」の作り方を雑に説明すると、教室は静まり返った。誰も、そんな料理を聞いたことがないからだ。
「……まあ、ただの戯言よ。忘れてちょうだい」
これ以上面倒になる前に、私は話を打ち切ろうとした。
しかし、その時、私の後ろの席に座っていた生徒が、カッと目を見開いた。彼女は、私の専属メイドであるリリアの従妹にあたる魔導具技師見習いの少女だった。偶然にも同じクラスだったのだ。
「お、お嬢様! いえ、イザベラ様! なんと画期的なご発想でしょう!」
彼女は興奮して立ち上がった。
「異文化の食生活を取り入れ、新たな文化を創造する……! しかも、調理工程にエンターテインメント性を持たせ、客の購買意欲をそそる! 完璧です! 完璧な企画ですわ!」
違う。私はただ、たこ焼きが食べたかっただけだ。
「こういうのがあったら、まあ、売れるんじゃないかしら……」
適当にごまかすと、彼女は「売れるなんてものではありません! これは、王都に新しい食文化の革命を起こします!」と断言した。
話は、あっという間に進んだ。
リリアの従妹は、すぐにリリア本人に連絡を取り、私の雑な説明を基に、姉妹で「自動たこ焼き調理魔導具」を開発してしまった。鉄板が自動で回転し、完璧な焼き加減でたこ焼きを量産できるという、オーパーツもびっくりの代物だ。
生地の配合やソースの味付けも、リリアが科学的に分析し、黄金比を叩き出したらしい。
そして、文化祭当日。
私たちのクラスが出した「踊る謎の球体菓子」の店は、開店と同時に長蛇の列ができた。
ソースの香ばしい匂いと、鰹節がゆらゆらと踊る珍しい見た目が、生徒たちの興味を引いたのだ。一口食べた者は、皆、その未知の美味しさに衝撃を受けた。
「なんだこの食べ物は! 外はカリッ、中はトロッとしていて、最高に美味い!」
「ソースとマヨネーズの組み合わせが絶妙だ!」
噂は学園内を駆け巡り、しまいには文化祭に訪れていた一般客や、他の貴族たちまでが列に並び始めた。
もちろん、視察に来ていたアルフォンス皇太子とエマも、その例外ではなかった。
「これが、イザベラが考案したという新しい菓子か……。見たこともない調理法だが、実に合理的で、美味だ。彼女の思考は、食文化にまで及ぶというのか……」
アルフォンスは、たこ焼きを片手に真剣な顔でうなっている。
「美味しいです、イザベラ様! こんなに幸せな気持ちになる食べ物は初めてです!」
エマは、満面の笑みで頬張っている。
私はといえば、店の裏で椅子に座り、ただひたすら完成したたこ焼きを食べているだけ。何もしないのが一番だ。
この「たこ焼き」は、文化祭の大賞をかっさらい、その後、ヴァレンシュタイン商会によって王都で販売が開始されると、爆発的な人気を博した。手軽で安くて美味しいファストフードとして、王都に新しい食文化を根付かせてしまったのだ。
当然、その功績は、またしても私のものになった。
「食文化の革命家」。
そんな、大げさで恥ずかしい二つ名までついてしまった。
もう、私の称号はいくつあるのだろう。数えるのも面倒くさい。私はただ、平和に暮らしたいだけなのに。
当然、面倒くさがりな私が、積極的に参加するはずもない。クラスの出し物を決める会議でも、私はひたすら窓の外を眺めていた。
「イザベラ様は、何かご意見はございますか?」
クラス委員長が、恐る恐る私に尋ねてくる。
周囲の生徒たちも、固唾を呑んで私を見守っている。おそらく「この稀代の天才令嬢なら、きっと誰も思いつかないような素晴らしい企画を提案してくださるに違いない」とでも思っているのだろう。
迷惑な期待だ。
出し物なんて、何でもいい。というか、何もしなくていいならそれが一番だ。
しかし、何か言わないとこの場は収まりそうにない。
私は、前世でよく食べた、あの食べ物を思い出した。安くて、手軽で、美味しくて、お祭りには欠かせない、あの粉物グルメを。
「……丸くて、熱くて、中にタコが入っているようなお菓子は、どうかしら」
「た、タコ、でございますか……?」
「ええ。生地は小麦粉と卵を水で溶いて……鉄板に丸いくぼみがたくさんあるようなもので焼くの。ソースと、あと鰹節……魚を燻して乾燥させて削ったものをかけると、熱で踊るように揺れて、見た目も楽しいわ」
私が前世の記憶を頼りに「たこ焼き」の作り方を雑に説明すると、教室は静まり返った。誰も、そんな料理を聞いたことがないからだ。
「……まあ、ただの戯言よ。忘れてちょうだい」
これ以上面倒になる前に、私は話を打ち切ろうとした。
しかし、その時、私の後ろの席に座っていた生徒が、カッと目を見開いた。彼女は、私の専属メイドであるリリアの従妹にあたる魔導具技師見習いの少女だった。偶然にも同じクラスだったのだ。
「お、お嬢様! いえ、イザベラ様! なんと画期的なご発想でしょう!」
彼女は興奮して立ち上がった。
「異文化の食生活を取り入れ、新たな文化を創造する……! しかも、調理工程にエンターテインメント性を持たせ、客の購買意欲をそそる! 完璧です! 完璧な企画ですわ!」
違う。私はただ、たこ焼きが食べたかっただけだ。
「こういうのがあったら、まあ、売れるんじゃないかしら……」
適当にごまかすと、彼女は「売れるなんてものではありません! これは、王都に新しい食文化の革命を起こします!」と断言した。
話は、あっという間に進んだ。
リリアの従妹は、すぐにリリア本人に連絡を取り、私の雑な説明を基に、姉妹で「自動たこ焼き調理魔導具」を開発してしまった。鉄板が自動で回転し、完璧な焼き加減でたこ焼きを量産できるという、オーパーツもびっくりの代物だ。
生地の配合やソースの味付けも、リリアが科学的に分析し、黄金比を叩き出したらしい。
そして、文化祭当日。
私たちのクラスが出した「踊る謎の球体菓子」の店は、開店と同時に長蛇の列ができた。
ソースの香ばしい匂いと、鰹節がゆらゆらと踊る珍しい見た目が、生徒たちの興味を引いたのだ。一口食べた者は、皆、その未知の美味しさに衝撃を受けた。
「なんだこの食べ物は! 外はカリッ、中はトロッとしていて、最高に美味い!」
「ソースとマヨネーズの組み合わせが絶妙だ!」
噂は学園内を駆け巡り、しまいには文化祭に訪れていた一般客や、他の貴族たちまでが列に並び始めた。
もちろん、視察に来ていたアルフォンス皇太子とエマも、その例外ではなかった。
「これが、イザベラが考案したという新しい菓子か……。見たこともない調理法だが、実に合理的で、美味だ。彼女の思考は、食文化にまで及ぶというのか……」
アルフォンスは、たこ焼きを片手に真剣な顔でうなっている。
「美味しいです、イザベラ様! こんなに幸せな気持ちになる食べ物は初めてです!」
エマは、満面の笑みで頬張っている。
私はといえば、店の裏で椅子に座り、ただひたすら完成したたこ焼きを食べているだけ。何もしないのが一番だ。
この「たこ焼き」は、文化祭の大賞をかっさらい、その後、ヴァレンシュタイン商会によって王都で販売が開始されると、爆発的な人気を博した。手軽で安くて美味しいファストフードとして、王都に新しい食文化を根付かせてしまったのだ。
当然、その功績は、またしても私のものになった。
「食文化の革命家」。
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