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第4話「相棒は伝説のもふもふ聖獣」
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ルプスが家族に加わってから、俺のスローライフはさらに充実したものになった。
朝は一緒に畑に出て、俺が農作業をする傍らでルプスは元気に走り回る。昼は採れたての野菜で一緒に食事をし、午後は木陰で昼寝をする。
『最高すぎる……』
前世では考えられなかった、穏やかで満ち足りた時間。
ルプスは非常に賢く、俺の言うことをよく理解してくれた。それに、とにかく可愛い。もふもふの体に顔をうずめるのが、俺の最近の日課になっている。
そんなある日のこと。
俺は『絶対農域』の新たな可能性を探るため、少し変わった実験を試みていた。
「作物を育てるだけじゃなくて、もっとこう、何かできないもんかな」
例えば、植物を操るとか。
俺は畑の隅に植えたカボチャのツルに意識を集中させ、伸びろ、と念じてみた。
するとツルは意思を持ったかのように、にょきにょきと俺の望む方向へと伸びていく。
「お、いけるぞ!」
さらにツルを鞭のようにしならせ、近くの岩を叩かせてみる。
ビシッ! と鋭い音を立ててツルが岩に命中し、表面にくっきりと亀裂が入った。
「すげぇ……攻撃にも使えるのか」
これなら万が一魔物なんかが現れても、撃退できるかもしれない。まあ今のところ、俺の領域に魔物が近づいてくる気配は一切ないけど。
俺が一人で盛り上がっていると、ルプスが何かに気づいたように領域の外れに向かって鋭く吠え始めた。
「ワン! ワン! ヴァウッ!」
普段の愛らしい鳴き声とは違う、野性的な警告を発するような声だ。
「どうした、ルプス?」
俺が駆け寄ると、ルプスは低い姿勢で唸り声を上げ、赤茶けた大地の向こう側を睨みつけている。
その視線の先を追ってみると、地平線の彼方から巨大な土煙がこちらに向かってくるのが見えた。
『なんだ、あれは……?』
土煙はものすごい速度で近づいてくる。
やがてその正体が見えてきた。
猪のような体に巨大な二本の牙を生やした魔物。体長は三メートルはあろうかという巨体だ。
「あれは……確か、グレートボア!」
アシュフィールド家で読んだ魔物の図鑑に載っていた。Cランクの魔物で、その突進は鎧をも砕くと書かれていたはずだ。
なぜ、魔物が寄り付かないはずのこの土地に?
もしかしたら、俺の『絶対農域』が放つ生命の気に引き寄せられたのかもしれない。だとしたら厄介なことになった。
グレートボアは、明らかに俺の領域を目指して突進してきている。
領域の境界線まで、あとわずか。
「くそっ、やるしかないか!」
俺は先ほど練習したように植物を操って応戦しようと覚悟を決めた。
その時だった。
「グルルルルル……!」
隣にいたルプスが、低く地を這うような唸り声を上げた。
次の瞬間、ルプスの体が眩い光に包まれる。
「うおっ!?」
あまりの眩しさに目を細め、再び目を開けた時、俺は我が目を疑った。
そこにいたのは、さっきまでの愛らしい子犬の姿ではなかった。
体長はグレートボアをも上回る、五メートルはあろうかという巨大な銀色の狼。
鋭く輝く黄金の瞳。月光を編み込んだかのような神々しい毛並み。その口からは、全てを切り裂かんばかりの鋭い牙が覗いている。
圧倒的な存在感と、神聖さすら感じさせる威圧感。
『こ、こいつ……本当にルプスか?』
巨大化したルプスは俺を背後にかばうように立ち、突進してくるグレートボアを真正面から睨みつけた。
グレートボアも目の前に現れた規格外の存在に一瞬怯んだようだが、勢いは止まらない。
「ブモォォォォッ!!」
咆哮と共にグレートボアが最後の加速をする。
それに対しルプスは静かに、そして力強く地を蹴った。
まるで疾風。
銀色の閃光が、グレートボアの巨体と交錯する。
ズバァッ!
一瞬の静寂の後、グレートボアの巨体が、まるで何事もなかったかのようにルプスの脇を通り過ぎていった。
そして数メートル進んだところでぴたりと動きを止める。
次の瞬間、グレートボアの体は首から綺麗に真っ二つに分かれ、崩れ落ちた。
「…………」
俺はあまりの光景に声も出なかった。
Cランクの強力な魔物が、文字通り一撃。瞬殺だ。
ルプスは返り血一つ浴びることなく、ふぅ、と小さく息を吐いた。
そしてくるりと俺の方を振り返ると、その巨大な体は再び光に包まれ、あっという間にいつもの子犬サイズへと戻っていく。
「クゥン?」
ルプスは、何事もなかったかのように俺の足元に駆け寄り、尻尾を振っている。
その瞳は「褒めて」と訴えかけているようだ。
俺はまだ震える手で、その頭を撫でてやった。
「す、すごいじゃないか、ルプス……お前、一体何者なんだ?」
もはや、ただの子狼ではないことは明らかだ。
銀色の毛並み、そしてこの圧倒的な戦闘力。
俺の脳裏に、一つの名前が浮かび上がった。
『銀狼フェンリル』
神話や伝説に登場する、聖獣の王。神の使いとも、終末の獣とも呼ばれる最強の存在。
その特徴はまさしく銀色の毛並みと、自在に大きさを変える能力だと伝えられている。
「まさか、お前……本当にフェンリルなのか?」
「ワン!」
ルプスは肯定するように元気よく鳴いた。
『伝説の聖獣が、俺の相棒……?』
出来損ないと追放された俺が、聖獣の王をテイムしてしまった。
人生、何が起こるか分からないにも程がある。
俺は目の前に転がるグレートボアの死骸と、足元でじゃれついてくるルプスを交互に見つめ、乾いた笑いを漏らすしかなかった。
「はは……スローライフ、だよな……?」
俺が目指しているのは、あくまでも平穏な農業生活のはずだ。
なんだか、どんどん物騒な方向へと進んでいる気がしてならない。
とりあえずグレートボアの死骸を片付けないといけない。幸い俺の領域の外なのでそのまま放置してもいいだろうが、なんだか後味が悪い。
『そういえば、魔物の素材って売れるんじゃなかったか?』
牙や毛皮は武具の材料として高く売れると聞いたことがある。
いつかこの土地の外に出て、町で生活必需品をそろえる時の資金になるかもしれない。
俺は『農具創造』でナイフを作り出すと、グレートボアの解体作業に取り掛かった。前世で動画サイトのサバイバル動画を見た知識が、こんなところで役立つとは。
作業を終えた頃にはすっかり日も暮れていた。
その日の夕食はグレートボアの肉を使ったステーキだ。魔物の肉を食べるのは少し抵抗があったが、食べてみると驚くほど美味かった。臭みは全くなく、ジューシーで濃厚な味わいだ。
「これも、俺の領域の近くにいたから肉質が良くなったとか……?」
もはや何が起きても驚かない。
ルプスも巨大なステーキをぺろりと平らげ、満足そうに腹をさすっている。
一人と一匹の食卓は今日も賑やかだ。
最強の相棒を得て、俺の辺境生活はますます安泰なものになった。
……はずだった。
こうして俺は伝説の聖獣という、もふもふで最強の相棒を手に入れた。この出会いがやがて王都をも巻き込む大事件の引き金になるとは、まだ知る由もない。
朝は一緒に畑に出て、俺が農作業をする傍らでルプスは元気に走り回る。昼は採れたての野菜で一緒に食事をし、午後は木陰で昼寝をする。
『最高すぎる……』
前世では考えられなかった、穏やかで満ち足りた時間。
ルプスは非常に賢く、俺の言うことをよく理解してくれた。それに、とにかく可愛い。もふもふの体に顔をうずめるのが、俺の最近の日課になっている。
そんなある日のこと。
俺は『絶対農域』の新たな可能性を探るため、少し変わった実験を試みていた。
「作物を育てるだけじゃなくて、もっとこう、何かできないもんかな」
例えば、植物を操るとか。
俺は畑の隅に植えたカボチャのツルに意識を集中させ、伸びろ、と念じてみた。
するとツルは意思を持ったかのように、にょきにょきと俺の望む方向へと伸びていく。
「お、いけるぞ!」
さらにツルを鞭のようにしならせ、近くの岩を叩かせてみる。
ビシッ! と鋭い音を立ててツルが岩に命中し、表面にくっきりと亀裂が入った。
「すげぇ……攻撃にも使えるのか」
これなら万が一魔物なんかが現れても、撃退できるかもしれない。まあ今のところ、俺の領域に魔物が近づいてくる気配は一切ないけど。
俺が一人で盛り上がっていると、ルプスが何かに気づいたように領域の外れに向かって鋭く吠え始めた。
「ワン! ワン! ヴァウッ!」
普段の愛らしい鳴き声とは違う、野性的な警告を発するような声だ。
「どうした、ルプス?」
俺が駆け寄ると、ルプスは低い姿勢で唸り声を上げ、赤茶けた大地の向こう側を睨みつけている。
その視線の先を追ってみると、地平線の彼方から巨大な土煙がこちらに向かってくるのが見えた。
『なんだ、あれは……?』
土煙はものすごい速度で近づいてくる。
やがてその正体が見えてきた。
猪のような体に巨大な二本の牙を生やした魔物。体長は三メートルはあろうかという巨体だ。
「あれは……確か、グレートボア!」
アシュフィールド家で読んだ魔物の図鑑に載っていた。Cランクの魔物で、その突進は鎧をも砕くと書かれていたはずだ。
なぜ、魔物が寄り付かないはずのこの土地に?
もしかしたら、俺の『絶対農域』が放つ生命の気に引き寄せられたのかもしれない。だとしたら厄介なことになった。
グレートボアは、明らかに俺の領域を目指して突進してきている。
領域の境界線まで、あとわずか。
「くそっ、やるしかないか!」
俺は先ほど練習したように植物を操って応戦しようと覚悟を決めた。
その時だった。
「グルルルルル……!」
隣にいたルプスが、低く地を這うような唸り声を上げた。
次の瞬間、ルプスの体が眩い光に包まれる。
「うおっ!?」
あまりの眩しさに目を細め、再び目を開けた時、俺は我が目を疑った。
そこにいたのは、さっきまでの愛らしい子犬の姿ではなかった。
体長はグレートボアをも上回る、五メートルはあろうかという巨大な銀色の狼。
鋭く輝く黄金の瞳。月光を編み込んだかのような神々しい毛並み。その口からは、全てを切り裂かんばかりの鋭い牙が覗いている。
圧倒的な存在感と、神聖さすら感じさせる威圧感。
『こ、こいつ……本当にルプスか?』
巨大化したルプスは俺を背後にかばうように立ち、突進してくるグレートボアを真正面から睨みつけた。
グレートボアも目の前に現れた規格外の存在に一瞬怯んだようだが、勢いは止まらない。
「ブモォォォォッ!!」
咆哮と共にグレートボアが最後の加速をする。
それに対しルプスは静かに、そして力強く地を蹴った。
まるで疾風。
銀色の閃光が、グレートボアの巨体と交錯する。
ズバァッ!
一瞬の静寂の後、グレートボアの巨体が、まるで何事もなかったかのようにルプスの脇を通り過ぎていった。
そして数メートル進んだところでぴたりと動きを止める。
次の瞬間、グレートボアの体は首から綺麗に真っ二つに分かれ、崩れ落ちた。
「…………」
俺はあまりの光景に声も出なかった。
Cランクの強力な魔物が、文字通り一撃。瞬殺だ。
ルプスは返り血一つ浴びることなく、ふぅ、と小さく息を吐いた。
そしてくるりと俺の方を振り返ると、その巨大な体は再び光に包まれ、あっという間にいつもの子犬サイズへと戻っていく。
「クゥン?」
ルプスは、何事もなかったかのように俺の足元に駆け寄り、尻尾を振っている。
その瞳は「褒めて」と訴えかけているようだ。
俺はまだ震える手で、その頭を撫でてやった。
「す、すごいじゃないか、ルプス……お前、一体何者なんだ?」
もはや、ただの子狼ではないことは明らかだ。
銀色の毛並み、そしてこの圧倒的な戦闘力。
俺の脳裏に、一つの名前が浮かび上がった。
『銀狼フェンリル』
神話や伝説に登場する、聖獣の王。神の使いとも、終末の獣とも呼ばれる最強の存在。
その特徴はまさしく銀色の毛並みと、自在に大きさを変える能力だと伝えられている。
「まさか、お前……本当にフェンリルなのか?」
「ワン!」
ルプスは肯定するように元気よく鳴いた。
『伝説の聖獣が、俺の相棒……?』
出来損ないと追放された俺が、聖獣の王をテイムしてしまった。
人生、何が起こるか分からないにも程がある。
俺は目の前に転がるグレートボアの死骸と、足元でじゃれついてくるルプスを交互に見つめ、乾いた笑いを漏らすしかなかった。
「はは……スローライフ、だよな……?」
俺が目指しているのは、あくまでも平穏な農業生活のはずだ。
なんだか、どんどん物騒な方向へと進んでいる気がしてならない。
とりあえずグレートボアの死骸を片付けないといけない。幸い俺の領域の外なのでそのまま放置してもいいだろうが、なんだか後味が悪い。
『そういえば、魔物の素材って売れるんじゃなかったか?』
牙や毛皮は武具の材料として高く売れると聞いたことがある。
いつかこの土地の外に出て、町で生活必需品をそろえる時の資金になるかもしれない。
俺は『農具創造』でナイフを作り出すと、グレートボアの解体作業に取り掛かった。前世で動画サイトのサバイバル動画を見た知識が、こんなところで役立つとは。
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その日の夕食はグレートボアの肉を使ったステーキだ。魔物の肉を食べるのは少し抵抗があったが、食べてみると驚くほど美味かった。臭みは全くなく、ジューシーで濃厚な味わいだ。
「これも、俺の領域の近くにいたから肉質が良くなったとか……?」
もはや何が起きても驚かない。
ルプスも巨大なステーキをぺろりと平らげ、満足そうに腹をさすっている。
一人と一匹の食卓は今日も賑やかだ。
最強の相棒を得て、俺の辺境生活はますます安泰なものになった。
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