出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人

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第13話「ざまぁ展開、そして兄の断罪」

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「き、貴様……! いったい、どんな妖術を使った!?」

 穴の底からダリルが顔を真っ赤にして叫んでいる。
 プライドをズタズタにされた怒りと、未知の力への恐怖で完全に混乱しているようだった。

 俺はそんなダリルを冷ややかに見下ろし、答える。

「さあな。出来損ないのお前には、一生かかっても理解できない力だろうな」

 俺はダリルが俺に言い放った言葉を、そのままそっくり返してやった。

「ぐっ……ぬかせ……!」

 ダリルは悔しさに顔を歪ませ、穴の壁をよじ登ろうとするが、スキルで固められた壁はツルツルで全く手がかりがない。

 他の兵士たちもなすすべなく穴の底で右往左往しているだけだ。

 村人たちは最初は何が起こったのか分からず呆然としていたが、やがて状況を理解するとわっと歓声を上げた。

「すげえ! カイさんが悪党どもをやっつけたぞ!」
「ざまあみろ!」

 トムたちが穴に向かって石を投げつけようとするのを、俺は手で制した。
 これ以上の暴力は必要ない。

 俺はセレスティアの方を振り返った。
 彼女は少し驚いた顔をしていたが、俺の目を見るとこくりと小さくうなずいてくれた。
 俺の行動を理解し、受け入れてくれたようだった。

「さて、と」

 俺は改めて穴の中のダリルに向き直った。

「兄さん。あんたたちがこの村で何を探していたのか知らないが……。もう諦めて帰ってもらおうか。これ以上、この村と俺の平穏を乱すつもりなら、今度はこれだけじゃ済まない」

 俺の言葉は脅しではない。本気だ。
 大切なものを守るためなら、俺はどんな力でも使う。

 ダリルは俺の静かな怒気に、ゴクリと喉を鳴らした。
 初めて俺に対して、本物の恐怖を感じたのだろう。

 しかし、その時だった。
 村の外から新たな馬の蹄の音が、けたたましく響いてきた。

 現れたのはクロービス王国の紋章を掲げた、一隊の騎士たちだった。
 先頭を走るのは、白銀の鎧に身を包んだ騎士団長エリアナその人だ。

「カイ殿! セレスティア様! ご無事か!」

 エリアナは馬から飛び降りると、村の惨状と広場に空いた巨大な穴を見て、目を見開いた。

「これは……いったい、何があったのだ?」

 俺が説明するより先にセレスティアが前に出て、状況を簡潔に伝えた。
 アシュフィールド家の次男ダリルが王家の密命と偽り村で狼藉を働いていたこと。そして俺がそれを阻止したこと。

 全てを聞き終えたエリアナは、怒りに燃える瞳で穴の底のダリルを睨みつけた。

「ダリル・アシュフィールド! 貴様、王家の名を騙り聖女様の前で剣を抜くとは、万死に値するぞ!」

 エリアナの怒声に、ダリルは顔面蒼白になった。
 聖女への反逆罪。それがどれほどの重罪か、貴族である彼が知らないはずがない。

「ち、違う! 俺は、その男が聖女様を騙していると……!」

「黙れ、見苦しい言い訳を!」

 エリアナは一喝する。
 もはやダリルに弁解の余地はなかった。

 エリアナは部下の騎士たちに命じた。

「アシュフィールド家の者どもを全員捕らえよ! 王家への反逆、および聖女様への不敬の罪で、王都へ連行する!」

「はっ!」

 騎士たちは手際よく穴にロープを降ろし、ダリルたちを次々と引きずり上げていく。
 完全に戦意を喪失した彼らは、何の抵抗もできずに縄で縛られていった。

「ま、待ってくれ! 兄上に、グレン兄上に伝えれば……!」

 ダリルは最後まで見苦しくわめいていたが、猿ぐつわを噛まされ馬車に押し込まれていった。

 あっという間に村は静けさを取り戻した。
 エリアナは俺の前にやってくると、深々と頭を下げた。

「カイ殿。またしても君に助けられたな。そして君の一族の者がこのような不祥事を起こし、本当に申し訳ない」

「いえ、もう俺はあの一家とは関係ありませんから」

 俺は静かに首を振った。

「それよりも、エリアナさん。どうしてあなたがここに?」

 俺の問いにエリアナは少し気まずそうに答えた。

「実はアシュフィールド家の長男グレンが、『奇跡の作物』の出所について執拗に嗅ぎまわっているという報告を受けてな。何かきな臭いものを感じて、様子を見に来たのだが……まさか弟がこんな暴挙に出ているとは」

 やはり兄たちの仕業だったか。
 俺の予想は当たっていた。

 エリアナは村人たちに王家から慰謝料を支払うことを約束し、村の復旧を手伝うよう部下に指示を出した。
 村人たちはエリアナと、そして俺に何度も頭を下げて感謝していた。

 一件落着。
 ダリルは王都で裁かれ、相応の罰を受けるだろう。
 これぞまさしく『ざまぁ展開』というやつだ。胸がすくような思いだった。

 だが俺の心は、完全には晴れなかった。
 ダリルを操っていたのは長兄のグレンだ。
 狡猾なあの男が、このまま黙っているとは思えない。
 きっとまた何か、厄介なことを仕掛けてくるに違いない。

 俺の戦いはまだ始まったばかりなのかもしれない。

 そんな俺の不安を察したかのように、セレスティアがそっと俺の手に自分の手を重ねてきた。
 その温かさに俺は、はっと我に返る。

「大丈夫です、カイ様。わたくしたちが、ついています」

 彼女の優しい微笑みに、俺の心の中の不安が少しだけ和らいでいく。
 そうだ。俺はもう一人じゃない。
 守ってくれる仲間がいる。そして守るべき大切な人たちがいる。

 俺はセレスティアの手に、そっと力を込めて握り返した。

「……ありがとうございます、セレスティアさん」

 今は目の前にある平穏を、大切にしよう。
 そしてそれを脅かす者が現れたなら、今度も容赦なく叩き潰すだけだ。

 俺は夕日に照らされるテル村を眺めながら、改めてそう心に誓うのだった。
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