出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人

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第15話「領主カイの初仕事と村の発展計画」

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 男爵になって王都から帰ってきた俺を、テル村の皆はまるで英雄のように出迎えてくれた。

「カイ男爵様、万歳!」
「俺たちの領主様だ!」

 村中がお祭り騒ぎだった。
 俺はその熱狂ぶりに少し照れくさく思いながらも、村人たちの喜びが素直に嬉しかった。

「みんな、大げさだよ。俺は今までと何も変わらない。ただの農業好きのカイだ」

 俺がそう言うと、村人たちはどっと笑った。

 村長が代表して俺の前に進み出た。
「カイ様……いえ、カイ男爵様。我々テル村の民は、あなた様に心からの忠誠を誓います。これからはあなた様を我々の領主としてお支えさせていただきます」

 そう言って村長をはじめ、村人全員が俺の前にひざまずいた。
 その光景に、俺は胸が熱くなった。
 追放され、誰にも必要とされなかった俺が、今これだけの人々から信頼を寄せられている。
 この人たちのためにも、俺はこの土地をもっと豊かにしなければならない。
 領主としての責任が、確かに芽生えた瞬間だった。

「みんな、顔を上げてくれ。俺は君たちの領主である前に、君たちの仲間だ。これから一緒にこの土地を最高の場所にしていこう」

 俺の言葉に、村人たちは再び大きな歓声を上げた。

 ***

 さて、領主になったからには早速仕事を始めなければならない。
 俺の領地はこのテル村と、広大な『嘆きの荒野』一帯だ。
 まずはこのテル村を、もっと住みやすく豊かな村にすることから始めよう。

 俺は村長やトムたち村の主だった者たちを集め、即席の会議を開いた。

「まず、俺がやりたいことがいくつかある」

 俺は地面に木の枝で簡単な地図を描きながら説明を始めた。

「一つ目は、安定した水源の確保だ。今は小さな川から水を引いているだけだが、これでは心許ない。俺のスキルを使えばもっと大きな井戸を掘ったり、用水路を整備したりできる」

「おお! それはありがたい!」

 村人たちの顔が輝く。

「二つ目は、住居の改築だ。今の家は古くて小さいものが多い。これも俺のスキルで、新しくて頑丈な家を建てることができる。全員分の家を新しくしよう」

「本当かい、カイ様!?」

 村人たちは信じられないといった顔だ。

「そして三つ目。これが一番重要だ。新しい産業を興すことだ」

 俺は自分の畑で採れた、色とりどりの作物を指さした。
「俺の作る作物は美味いし、特殊な効果もある。これをただ村で消費するだけじゃなく、加工して他の町へ売りに行くんだ。例えばトマトをソースにしたり、果物をジャムにしたり。そうすれば村はもっと豊かになる」

 俺の計画に、村人たちは目を輝かせて聞き入っていた。
 今までその日暮らしで精一杯だった彼らにとって、それは夢のような話だったのだろう。

「でもカイ様、他の町へ売りに行くって言っても、ここから一番近い町でも馬車で何日もかかる。それに道中は魔物も出るし……」

 トムが現実的な問題を口にした。

「その点も問題ない」

 俺はにやりと笑った。

「道は俺が作る。魔物が出ない安全で最短距離の道を作るんだ。それに輸送手段も俺に考えがある」

 俺の自信に満ちた言葉に、村人たちの不安は期待へと変わっていった。

 会議が終わると、俺は早速計画を実行に移した。
 まずは水源の確保だ。
 俺は村の中心に立ち、スキルを発動させる。
 地面に手を触れ、深く清らかな水脈を探る。

「……ここだ!」

 俺が力を込めると、地面がゴゴゴと音を立てて陥没し、あっという間にレンガで縁取られた立派な井戸が完成した。
 中からはこんこんと清水が湧き出している。

「うおおお! 水だ! 綺麗な水が無限に湧いてくるぞ!」

 村人たちは歓喜の声を上げた。

 次に家の建築だ。
 これもスキルを使えば朝飯前だった。
 村人たちの希望を聞きながら、一軒一軒快適で頑丈なレンガ造りの家を土から作り出していく。
 一日で、村の家々が全て新築に生まれ変わってしまった。
 村人たちは自分の新しい家を前に、感極まって涙を流していた。

 そして翌日。
 俺は村人たちの中から屈強な若者を数名選び出し、一緒に領域の外へと出た。
 目的地はこの辺りで一番大きな商業都市、ロックウェルだ。

「カイ様、本当に道なんて作れるのか?」

 不安そうなトムに、俺は笑いかけた。

「まあ、見てろって」

 俺はロックウェルの方角を向くと、再び地面に手を触れた。
 そして強く念じる。
『道になれ』と。

 ズズズズズ……!

 俺たちの目の前の大地が、まるで生き物のように隆起し始めた。
 草木は自ら道を譲り、岩は砕けて砂利となり、地面は平らにならされていく。
 目の前に、馬車が余裕ですれ違えるほどの幅の広い立派な道が、地平線の彼方へとまっすぐに伸びていった。

「「「…………」」」

 トムたちはあまりの神業に、声も出せずに立ち尽くしている。

「さあ、行こうか。一日でロックウェルに着くはずだ」

 俺は呆然とする彼らの背中を叩いた。
 こうしてカイ男爵としての俺の最初の仕事は、大成功に終わった。
 テル村は生まれ変わり、未来への希望に満ち溢れている。

 だが、このテル村の急激な発展と、嘆きの荒野に突如として現れた街道の噂は、すぐに、ある男の耳にも届くことになった。
 王都で俺への次なる妨害を画策していた、グレン・アシュフィールドの耳に。
 俺の領地経営はまだ始まったばかり。
 そしてそれは同時に、兄との本格的な対決の始まりを告げる合図でもあった。
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