出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人

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第22話「戦後処理と帝国の影」

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 グレンを捕らえたことで、戦いは終わった。
 アシュフィールド家の兵士たちは皆おとなしく投降し、俺たちは一人も死者を出すことなく完全勝利を収めることができた。
 狂戦士の仮面を外された兵士たちは、皆自分たちがしたことに青ざめていた。彼らもまた、グレンの野心の被害者なのかもしれない。

 俺は彼らを罰することはせず、武装解除させた上で王都へ送り返すことにした。
 問題は首謀者である、グレンの処遇だ。

「カイ様……」

 セレスティアが心配そうな顔で俺を見つめている。
 捕らえられたグレンはもはや何の力もなく、ただ虚ろな目で地面を見つめているだけだった。
 あれほど憎んだ相手だが、その無様な姿を見るとさすがに憐れみを感じてしまう。

 俺がどうするべきか悩んでいると、王都からエリアナ率いる王国騎士団が到着した。
 グレンの反乱の報を聞きつけ、急行してくれたのだ。
 エリアナは捕らえられたグレンを一瞥すると、俺に深々と頭を下げた。

「カイ殿。見事な手腕だった。君がいなければこの国は内乱で大きな被害を受けていただろう」

 そして彼女は冷たい声で、グレンに告げた。
「グレン・アシュフィールド。貴様を国家反逆罪で逮捕する。王都にて厳正な裁きを受けてもらうぞ」

 騎士たちがグレンを縄で縛り上げ、馬車へと連行していく。
 彼は最後まで何も語らなかった。
 ただ一度だけ俺の方を振り返った。
 その瞳にはもはや憎悪の色はなく、ただ深い、深い後悔と絶望の色が浮かんでいるだけだった。

 こうして俺を長年苦しめてきたアシュフィールド家は、完全に没落した。
 ダリルは国外追放。
 グレンはおそらく死罪か終身刑だろう。
 当主であった父も監督不行き届きを問われ、爵位を剥奪され領地も没収されることになった。
 自業自得という言葉が、これほどしっくりくる結末もないだろう。

 戦いの後始末は大変だった。
 ダグたち冒険者の力を借りて、戦場を片付けていく。
 野菜兵たちは役目を終え、また土の中へと帰っていった。ご苦労様、俺の可愛い兵士たち。

 そんな中、グラン爺が兵士たちが身につけていた『狂戦士の仮面』をいくつか拾い集め、調べていた。

「ふむ……。これは興味深いのぅ」

 グラン爺は仮面の裏に刻まれた小さな紋章を、指でなぞる。

「どうしました、グラン爺?」

 俺が尋ねると、グラン爺は渋い顔で答えた。
「この紋章……。ワシに見覚えがある。これはゼニス帝国の紋章じゃ」

「ゼニス帝国……?」

 それはクロービス王国の東に位置する、巨大な軍事国家の名前だった。
 近年、急速に勢力を拡大しており、クロービス王国とも緊張関係にあると聞いている。

「やはり、そうか」

 話を聞いていたエリアナが顔をしかめる。
「以前からアシュフィールド家が帝国と内通しているという噂はあった。この仮面がその動かぬ証拠というわけか」

「つまり今回のグレンの反乱は、ただの兄弟喧嘩なんかじゃない。ゼニス帝国が裏で糸を引いていた、ということですか?」

「おそらくはな」

 エリアナは頷く。
「帝国はグレンを手駒として使い、クロービス王国を内側から崩壊させようとしていたのだろう。だが君のおかげで、その計画は未然に防がれた」

 俺は知らず知らずのうちに、国家間の大きな陰謀に巻き込まれていたらしい。
 スローライフは一体どこへやら。
 もはや笑うしかない。

 エリアナは深刻な表情で続けた。
「だがこれで終わりではないだろう。帝国は計画を邪魔した君のことを、面白くは思っていないはずだ。おそらく近いうちに何らかの形で接触してくるだろう。カイ殿、君は帝国からも狙われる存在になったのだ」

「……上等じゃないですか」

 俺は不敵に笑ってみせた。
「兄貴だろうが帝国だろうが関係ない。俺のこの平穏な生活を邪魔する奴は、誰であろうと容赦はしない」

 俺の言葉に、ダグが豪快に笑った。
「そうだ、そうだ! 面白くなってきたじゃねえか! 帝国が相手だってんなら、俺たちの出番だな!」

 紅蓮のグリフォンのメンバーも、やる気に満ち溢れている。

 エリアナも頼もしそうに頷いた。
「うむ。王国も全力で君を支援する。帝国なんぞに好きにはさせん」

 セレスティアも俺の手をぎゅっと握りしめてくる。
「わたくしもカイ様と共に戦います」

 俺の周りにはこんなにも頼もしい仲間たちがいる。
 もはや恐れるものは何もなかった。

「さて、と。暗い話はこれくらいにしようぜ!」

 ダグがパンパンと手を叩いた。
「戦いも終わったことだし、今夜は勝利の大宴会だ! カイ、お前の美味い野菜料理で、パーッとやろうじゃねえか!」

「賛成!」
「異議なしですわ!」
「肉! 肉!」

 その提案に全員が賛同する。
 さっきまでのシリアスな空気はどこへやら。
 俺たちはいつものようにバカ騒ぎを始めるのだった。

 帝国の影が忍び寄ろうと、俺たちの日常は変わらない。
 美味いものを食い、仲間と笑い合う。
 その当たり前の幸せを守るためなら、俺はどんな敵とでも戦おう。
 俺は宴会の準備をしながら、そう強く心に誓った。
 俺の辺境スローライフは、これからますます騒がしく、そして壮大なものになっていくのだろう。
 それもまた一興か。
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