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第29話「明かされる真実とリリスの正体」
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セレスティアが目覚めてから数日が過ぎた。
彼女は世界樹の涙の力で、すっかり元の元気を取り戻していた。
それどころか以前よりも、その身に宿す聖なる力が増しているようだった。
復活した世界樹は、俺の領地の新たなシンボルとなった。
その巨大な姿は遠くロックウェルの街からも見えるらしく、巡礼者や見物人が訪れるようになり、領地はますます活気づいている。
世界樹の恩恵はそれだけではなかった。
その生命力豊かなオーラは領地全体を覆い、テル村の畑では俺が手を加えなくても見事な作物が育つようになった。
嘆きの荒野にも少しずつ緑が戻り始めている。
まさに奇跡の樹だ。
俺たちはそんな平和で幸せな日常を取り戻していた。
だが俺の心の中には、一つの疑問が残っていた。
なぜセレスティアは突然、生命力を失い始めたのか。
その原因は未だに分かっていない。
グラン爺も首をひねるばかりだった。
その答えは、思わぬ形でもたらされた。
その日、俺たちの元に再びあの女が現れたのだ。
ゼニス帝国からの使者、リリス・フォン・ドラクル。
彼女はまたしてもたった一人で、世界樹の麓に悠然と立っていた。
「見事なものね、世界樹。まさか本当に蘇らせてしまうとは。あなたは本当にわたくしを飽きさせない男だわ」
リリスは感心したように世界樹を見上げている。
俺たちはすぐに彼女を取り囲んだ。
だが彼女は全く動じる様子もない。
「何の用だ、リリス。また俺をスカウトしにでも来たのか?」
俺が警戒しながら尋ねる。
するとリリスはゆっくりとこちらを振り返った。
その赤い瞳が、回復したセレスティアの姿を捉える。
「あら、聖女様。すっかりお元気になられたようで何よりだわ」
その言い方はまるで、セレスティアが回復することを知っていたかのようだった。
「……あなた、何か知っているのですね?」
セレスティアが問いかける。
「わたくしの身に何が起きていたのかを」
リリスはにやりと妖艶に笑った。
「ええ、もちろん。全てわたくしが仕組んだことなのだから」
「……!」
その衝撃的な告白に、俺たちは言葉を失った。
セレスティアの不調は、この女の仕業だったというのか。
「どういうことだ! 説明しろ!」
ダグが怒りの声を上げる。
リリスは楽しそうに語り始めた。
「簡単なことよ。わたくしはあなたたちの絆を試しただけ」
彼女は指先から小さな闇の塊を生み出した。
それは禍々しい負のエネルギーの塊だった。
「わたくしのこの『生命吸収(ライフ・ドレイン)』の呪いは、遠隔から対象の生命力を少しずつ奪い取る特殊な魔法。聖女様、あなたのその清らかな生命力は、格好の的だったわ」
「なっ……! そんな卑劣なことを!」
エリアナが激昂する。
「卑劣? 人聞きの悪いこと。これは必要な儀式だったのよ」
リリスは俺を見つめて言った。
「カイ・アークライト。あなたに世界樹を復活させる力と覚悟が本当にあるのか。それを見極めるためのね。愛する女の命がかかっていれば、あなたも本気を出すでしょう?」
そのあまりにも身勝手な言い分に、俺は怒りで体が震えた。
こいつはセレスティアの命を、ただの実験道具として使ったというのか。
「……ふざけるな」
俺の声は自分でも驚くほど低く、冷たかった。
俺は地面に手を触れ、無数の茨の槍を出現させリリスへと放った。
だがリリスは指一本動かさない。
茨の槍は彼女の体に触れる寸前で、全て塵となって消滅してしまった。
彼女の周りには不可視の障壁が張られているようだった。
「無駄よ。今のあなたではわたくしには勝てない」
リリスは冷たく言い放つ。
「さて、茶番はこれくらいにしましょうか。本題に入りましょう。カイ・アークライト、あなたに『本当の交渉』をしに来たわ」
リリスの雰囲気が変わった。
今までのどこか遊んでいるような空気は消え、絶対的な王者の威厳が彼女を包み込む。
「あなたももう気づいているでしょう? この世界が今、大きな危機に瀕していることを」
リリスは語り始めた。
ゼニス帝国がなぜクロービス王国を狙うのか。
その本当の理由を。
「この星の生命力……マナは、枯渇し始めている。原因は遥か古の時代にこの星に飛来した、邪悪なる存在『虚ろなる神』の仕業よ」
「虚ろなる神……?」
「そう。それは星々の生命力を喰らい尽くす寄生生物。今、その本体が永い眠りから目覚めようとしている。そしてその復活の地が、このクロービス王国の地下深くなのよ」
リリスの話は、にわかには信じがたい壮大なものだった。
だが彼女の瞳は真実だけを語っていた。
「ゼニス帝国皇帝ヴァルハルト陛下は、その虚ろなる神を完全に滅ぼすため動いている。そのためにはこの国の地下に眠る本体を叩く必要がある。だからクロービス王国に侵攻しようとしていたのよ」
「そんな大事なことを、なぜ今まで……!」
エリアナが叫ぶ。
「言ったところであなたたちが信じたかしら? それに事を荒立てずに済ませる方法はいくらでもあった。グレン・アシュフィールドを利用したのもその一つ。だが全てこの男が、台無しにしてくれたわ」
リリスは俺をじろりと睨んだ。
「カイ・アークライト。あなたのその生命を生み出す力は、『虚ろなる神』に対抗できる唯一の希望かもしれない。セレスティアの命を弄んだこと、許されることではないでしょう。ですが、生半可な覚悟の者に世界の命運は託せません。わたくしは、あなたに『愛する者一人も救えない無力さ』ではなく、『愛する者を救うための絶対的な力』をその手に掴んでほしかったのです。だからわたくしはあなたを試し、育ててきた」
セレスティアの一件も世界樹の復活も、全て俺を成長させるための彼女のシナリオだったというのか。
「単刀直入に言うわ。我々と手を組み、共に『虚ろなる神』と戦いなさい。これはもう国と国との争いではない。この星の存亡を賭けた戦いなのよ」
リリスは俺に手を差し伸べてきた。
その赤い瞳は、絶対的な力と覚悟に満ちていた。
俺はしばらく黙っていた。
そして隣に立つセレスティアを見た。
彼女は静かに頷いていた。
そうだ。
俺が守りたいのは、この平穏な日常だ。
この美しい世界だ。
それを脅かす存在がいるのなら。
俺は戦わなければならない。
俺はリリスの手を取った。
「……分かった。協力しよう」
俺の答えに、リリスは初めて心からの満足そうな笑みを浮かべた。
「話が分かる男は好きよ」
こうして俺はゼニス帝国と手を組み、世界の脅威と戦うことを決意した。
俺のスローライフは、いつの間にか世界を救うための壮大な戦いへと変わっていた。
だが俺は後悔していない。
大切な仲間たちと、この美しい世界を守れるのなら。
俺は喜んでその運命を受け入れよう。
俺の本当の戦いはこれからだ。
俺は天にそびえる世界樹を見上げながら、そう誓いを新たにした。
彼女は世界樹の涙の力で、すっかり元の元気を取り戻していた。
それどころか以前よりも、その身に宿す聖なる力が増しているようだった。
復活した世界樹は、俺の領地の新たなシンボルとなった。
その巨大な姿は遠くロックウェルの街からも見えるらしく、巡礼者や見物人が訪れるようになり、領地はますます活気づいている。
世界樹の恩恵はそれだけではなかった。
その生命力豊かなオーラは領地全体を覆い、テル村の畑では俺が手を加えなくても見事な作物が育つようになった。
嘆きの荒野にも少しずつ緑が戻り始めている。
まさに奇跡の樹だ。
俺たちはそんな平和で幸せな日常を取り戻していた。
だが俺の心の中には、一つの疑問が残っていた。
なぜセレスティアは突然、生命力を失い始めたのか。
その原因は未だに分かっていない。
グラン爺も首をひねるばかりだった。
その答えは、思わぬ形でもたらされた。
その日、俺たちの元に再びあの女が現れたのだ。
ゼニス帝国からの使者、リリス・フォン・ドラクル。
彼女はまたしてもたった一人で、世界樹の麓に悠然と立っていた。
「見事なものね、世界樹。まさか本当に蘇らせてしまうとは。あなたは本当にわたくしを飽きさせない男だわ」
リリスは感心したように世界樹を見上げている。
俺たちはすぐに彼女を取り囲んだ。
だが彼女は全く動じる様子もない。
「何の用だ、リリス。また俺をスカウトしにでも来たのか?」
俺が警戒しながら尋ねる。
するとリリスはゆっくりとこちらを振り返った。
その赤い瞳が、回復したセレスティアの姿を捉える。
「あら、聖女様。すっかりお元気になられたようで何よりだわ」
その言い方はまるで、セレスティアが回復することを知っていたかのようだった。
「……あなた、何か知っているのですね?」
セレスティアが問いかける。
「わたくしの身に何が起きていたのかを」
リリスはにやりと妖艶に笑った。
「ええ、もちろん。全てわたくしが仕組んだことなのだから」
「……!」
その衝撃的な告白に、俺たちは言葉を失った。
セレスティアの不調は、この女の仕業だったというのか。
「どういうことだ! 説明しろ!」
ダグが怒りの声を上げる。
リリスは楽しそうに語り始めた。
「簡単なことよ。わたくしはあなたたちの絆を試しただけ」
彼女は指先から小さな闇の塊を生み出した。
それは禍々しい負のエネルギーの塊だった。
「わたくしのこの『生命吸収(ライフ・ドレイン)』の呪いは、遠隔から対象の生命力を少しずつ奪い取る特殊な魔法。聖女様、あなたのその清らかな生命力は、格好の的だったわ」
「なっ……! そんな卑劣なことを!」
エリアナが激昂する。
「卑劣? 人聞きの悪いこと。これは必要な儀式だったのよ」
リリスは俺を見つめて言った。
「カイ・アークライト。あなたに世界樹を復活させる力と覚悟が本当にあるのか。それを見極めるためのね。愛する女の命がかかっていれば、あなたも本気を出すでしょう?」
そのあまりにも身勝手な言い分に、俺は怒りで体が震えた。
こいつはセレスティアの命を、ただの実験道具として使ったというのか。
「……ふざけるな」
俺の声は自分でも驚くほど低く、冷たかった。
俺は地面に手を触れ、無数の茨の槍を出現させリリスへと放った。
だがリリスは指一本動かさない。
茨の槍は彼女の体に触れる寸前で、全て塵となって消滅してしまった。
彼女の周りには不可視の障壁が張られているようだった。
「無駄よ。今のあなたではわたくしには勝てない」
リリスは冷たく言い放つ。
「さて、茶番はこれくらいにしましょうか。本題に入りましょう。カイ・アークライト、あなたに『本当の交渉』をしに来たわ」
リリスの雰囲気が変わった。
今までのどこか遊んでいるような空気は消え、絶対的な王者の威厳が彼女を包み込む。
「あなたももう気づいているでしょう? この世界が今、大きな危機に瀕していることを」
リリスは語り始めた。
ゼニス帝国がなぜクロービス王国を狙うのか。
その本当の理由を。
「この星の生命力……マナは、枯渇し始めている。原因は遥か古の時代にこの星に飛来した、邪悪なる存在『虚ろなる神』の仕業よ」
「虚ろなる神……?」
「そう。それは星々の生命力を喰らい尽くす寄生生物。今、その本体が永い眠りから目覚めようとしている。そしてその復活の地が、このクロービス王国の地下深くなのよ」
リリスの話は、にわかには信じがたい壮大なものだった。
だが彼女の瞳は真実だけを語っていた。
「ゼニス帝国皇帝ヴァルハルト陛下は、その虚ろなる神を完全に滅ぼすため動いている。そのためにはこの国の地下に眠る本体を叩く必要がある。だからクロービス王国に侵攻しようとしていたのよ」
「そんな大事なことを、なぜ今まで……!」
エリアナが叫ぶ。
「言ったところであなたたちが信じたかしら? それに事を荒立てずに済ませる方法はいくらでもあった。グレン・アシュフィールドを利用したのもその一つ。だが全てこの男が、台無しにしてくれたわ」
リリスは俺をじろりと睨んだ。
「カイ・アークライト。あなたのその生命を生み出す力は、『虚ろなる神』に対抗できる唯一の希望かもしれない。セレスティアの命を弄んだこと、許されることではないでしょう。ですが、生半可な覚悟の者に世界の命運は託せません。わたくしは、あなたに『愛する者一人も救えない無力さ』ではなく、『愛する者を救うための絶対的な力』をその手に掴んでほしかったのです。だからわたくしはあなたを試し、育ててきた」
セレスティアの一件も世界樹の復活も、全て俺を成長させるための彼女のシナリオだったというのか。
「単刀直入に言うわ。我々と手を組み、共に『虚ろなる神』と戦いなさい。これはもう国と国との争いではない。この星の存亡を賭けた戦いなのよ」
リリスは俺に手を差し伸べてきた。
その赤い瞳は、絶対的な力と覚悟に満ちていた。
俺はしばらく黙っていた。
そして隣に立つセレスティアを見た。
彼女は静かに頷いていた。
そうだ。
俺が守りたいのは、この平穏な日常だ。
この美しい世界だ。
それを脅かす存在がいるのなら。
俺は戦わなければならない。
俺はリリスの手を取った。
「……分かった。協力しよう」
俺の答えに、リリスは初めて心からの満足そうな笑みを浮かべた。
「話が分かる男は好きよ」
こうして俺はゼニス帝国と手を組み、世界の脅威と戦うことを決意した。
俺のスローライフは、いつの間にか世界を救うための壮大な戦いへと変わっていた。
だが俺は後悔していない。
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