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第30話「共同戦線と帝国の皇帝」
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ゼニス帝国と手を組む。
それは俺の人生にとって大きな転換点だった。
エリアナはすぐさま王都に戻り、国王陛下に事の次第を報告した。
最初は半信半疑だった国王も、リリスが持参した古代の文献や証拠の品々を目の当たりにし、最終的には帝国との共同戦線を受け入れた。
こうしてクロービス王国とゼニス帝国は、歴史的な同盟を結ぶことになった。
長年の緊張関係にあった両国が手を取り合う。
その中心に俺がいるという事実が、なんとも不思議な感じだった。
数日後。
俺の領地に帝国の皇帝ヴァルハルトその人が、リリスと数名の側近だけを連れて極秘に訪れた。
現れた皇帝は、俺の想像とは全く違う人物だった。
もっと威圧的で冷酷な暴君のような男を想像していたが、そこにいたのは穏やかで知的な雰囲気をまとった銀髪の美青年だった。
その歳は俺とさほど変わらないように見える。
「君がカイ・アークライトか。リリスから話は聞いている」
皇帝ヴァルハルトは友人のように気さくに俺に話しかけてきた。
その紫色の瞳は、全てを見透かすような深い叡智を宿している。
「よくぞ我々と手を組むことを決断してくれた。心から感謝する」
彼はそう言って、俺に深々と頭を下げた。
一国の皇帝が、だ。
その謙虚な態度に、俺は少し驚いた。
俺たちは世界樹の麓でささやかな会談を開いた。
クロービス王国側からは俺とセレスティア、エリアナ。
帝国側からは皇帝ヴァルハルトとリリス。
そしてオブザーバーとして、ダグたち紅蓮のグリフォンが同席した。
会談でヴァルハルトは、『虚ろなる神』についての詳細な情報を俺たちに共有してくれた。
彼の一族は代々この星を蝕む邪神と戦ってきた一族なのだという。
リリスもその一族の末裔らしい。
彼女の人間離れした強さも納得がいった。
「『虚ろなる神』の本体は王都の地下数千メートルに存在する巨大な空洞に眠っている。我々はそれを『虚無の揺り籠』と呼んでいる」
ヴァルハルトは地図を広げながら説明する。
「近々、星のマナの流れが最も弱まる日が来る。おそらく邪神はその日を狙って完全に覚醒するだろう。残された時間は多くない」
「我々の作戦はこうだ」
リリスが引き継ぐ。
「決戦の日、我々帝国の魔導兵団が王都の周辺に出現する邪神の眷属たちを引きつける。その隙にあなたたち精鋭部隊が、地下の『虚無の揺り籠』へと突入し本体を直接叩くのよ」
それはあまりにも危険な作戦だった。
少数で敵の本拠地に乗り込む、自殺行為にも等しい。
「突入部隊のメンバーは決まっている」
リリスは俺たちを見渡した。
「カイ・アークライト。聖女セレスティア。王国騎士団長エリアナ。そしてAランク冒険者『紅蓮のグリフォン』。あなたたち九名よ」
俺と俺の大切な仲間たちが、世界の命運を担う突入部隊に選ばれたのだ。
「無茶だ!」
エリアナが反論する。
「たったそれだけの人数で、邪神の本拠地を落とせると言うのか!?」
「無茶ではないわ」
リリスは静かに首を振った。
「大軍で行っても意味はない。邪神の本体が放つ精神汚染の瘴気は、並の兵士では一瞬で正気を失う。それに耐えられるのは強靭な精神力を持つあなたたちだけ」
そして彼女は俺を見つめて言った。
「そして何よりこの作戦の鍵を握るのは、カイ、あなたの力よ。あなたの生命を生み出す力だけが、邪神の虚無の力を打ち破ることができる。あなたは我々の最後の切り札なの」
俺が、切り札。
その重圧に、俺はゴクリと喉を鳴らした。
会談は終わった。
作戦の決行日は一ヶ月後。
それまでに俺たちは万全の準備を整えなければならない。
ヴァルハルトは帰る前に、俺の畑を興味深そうに眺めていた。
「素晴らしい場所だな。ここには生命が満ち溢れている。リリスが君に固執する理由が分かった気がするよ」
彼は穏やかに微笑んだ。
「カイ・アシュフィールド……いや、カイ・アークライト。君のような男がなぜあの愚かなアシュフィールド家から生まれたのか。不思議でならないな」
彼は俺の過去も知っているようだった。
「俺はもうあの家とは関係ありません」
「そうだな」
ヴァルハルトは頷いた。
「君は君だ。君のその優しさと強さでこの世界を救ってくれ。頼んだぞ、勇者殿」
彼は悪戯っぽくウィンクすると、転移魔法で姿を消した。
後に残された俺たちは、改めて決意を固めた。
一ヶ月後、俺たちは世界の存亡を賭けた戦いに挑む。
その日までの間、俺たちはそれぞれ決戦に備えた。
ダグたちは武器を研ぎ澄まし、グラン爺は古代魔法の解読を進めた。
エリアナは王国の精鋭騎士たちを鍛え上げ、セレスティアは世界樹の麓で祈りを捧げ続けた。
そして俺は。
俺はただひたすらに畑を耕した。
最高の作物を作る。
それが俺にできる最高の戦準備だ。
俺は信じている。
俺の農業の力が、必ず世界を救うと。
決戦の日は刻一刻と近づいていた。
俺の辺境スローライフは、ついに最終章へと突入する。
全てはこの愛すべき日常を守るために。
俺は静かに土を握りしめた。
それは俺の人生にとって大きな転換点だった。
エリアナはすぐさま王都に戻り、国王陛下に事の次第を報告した。
最初は半信半疑だった国王も、リリスが持参した古代の文献や証拠の品々を目の当たりにし、最終的には帝国との共同戦線を受け入れた。
こうしてクロービス王国とゼニス帝国は、歴史的な同盟を結ぶことになった。
長年の緊張関係にあった両国が手を取り合う。
その中心に俺がいるという事実が、なんとも不思議な感じだった。
数日後。
俺の領地に帝国の皇帝ヴァルハルトその人が、リリスと数名の側近だけを連れて極秘に訪れた。
現れた皇帝は、俺の想像とは全く違う人物だった。
もっと威圧的で冷酷な暴君のような男を想像していたが、そこにいたのは穏やかで知的な雰囲気をまとった銀髪の美青年だった。
その歳は俺とさほど変わらないように見える。
「君がカイ・アークライトか。リリスから話は聞いている」
皇帝ヴァルハルトは友人のように気さくに俺に話しかけてきた。
その紫色の瞳は、全てを見透かすような深い叡智を宿している。
「よくぞ我々と手を組むことを決断してくれた。心から感謝する」
彼はそう言って、俺に深々と頭を下げた。
一国の皇帝が、だ。
その謙虚な態度に、俺は少し驚いた。
俺たちは世界樹の麓でささやかな会談を開いた。
クロービス王国側からは俺とセレスティア、エリアナ。
帝国側からは皇帝ヴァルハルトとリリス。
そしてオブザーバーとして、ダグたち紅蓮のグリフォンが同席した。
会談でヴァルハルトは、『虚ろなる神』についての詳細な情報を俺たちに共有してくれた。
彼の一族は代々この星を蝕む邪神と戦ってきた一族なのだという。
リリスもその一族の末裔らしい。
彼女の人間離れした強さも納得がいった。
「『虚ろなる神』の本体は王都の地下数千メートルに存在する巨大な空洞に眠っている。我々はそれを『虚無の揺り籠』と呼んでいる」
ヴァルハルトは地図を広げながら説明する。
「近々、星のマナの流れが最も弱まる日が来る。おそらく邪神はその日を狙って完全に覚醒するだろう。残された時間は多くない」
「我々の作戦はこうだ」
リリスが引き継ぐ。
「決戦の日、我々帝国の魔導兵団が王都の周辺に出現する邪神の眷属たちを引きつける。その隙にあなたたち精鋭部隊が、地下の『虚無の揺り籠』へと突入し本体を直接叩くのよ」
それはあまりにも危険な作戦だった。
少数で敵の本拠地に乗り込む、自殺行為にも等しい。
「突入部隊のメンバーは決まっている」
リリスは俺たちを見渡した。
「カイ・アークライト。聖女セレスティア。王国騎士団長エリアナ。そしてAランク冒険者『紅蓮のグリフォン』。あなたたち九名よ」
俺と俺の大切な仲間たちが、世界の命運を担う突入部隊に選ばれたのだ。
「無茶だ!」
エリアナが反論する。
「たったそれだけの人数で、邪神の本拠地を落とせると言うのか!?」
「無茶ではないわ」
リリスは静かに首を振った。
「大軍で行っても意味はない。邪神の本体が放つ精神汚染の瘴気は、並の兵士では一瞬で正気を失う。それに耐えられるのは強靭な精神力を持つあなたたちだけ」
そして彼女は俺を見つめて言った。
「そして何よりこの作戦の鍵を握るのは、カイ、あなたの力よ。あなたの生命を生み出す力だけが、邪神の虚無の力を打ち破ることができる。あなたは我々の最後の切り札なの」
俺が、切り札。
その重圧に、俺はゴクリと喉を鳴らした。
会談は終わった。
作戦の決行日は一ヶ月後。
それまでに俺たちは万全の準備を整えなければならない。
ヴァルハルトは帰る前に、俺の畑を興味深そうに眺めていた。
「素晴らしい場所だな。ここには生命が満ち溢れている。リリスが君に固執する理由が分かった気がするよ」
彼は穏やかに微笑んだ。
「カイ・アシュフィールド……いや、カイ・アークライト。君のような男がなぜあの愚かなアシュフィールド家から生まれたのか。不思議でならないな」
彼は俺の過去も知っているようだった。
「俺はもうあの家とは関係ありません」
「そうだな」
ヴァルハルトは頷いた。
「君は君だ。君のその優しさと強さでこの世界を救ってくれ。頼んだぞ、勇者殿」
彼は悪戯っぽくウィンクすると、転移魔法で姿を消した。
後に残された俺たちは、改めて決意を固めた。
一ヶ月後、俺たちは世界の存亡を賭けた戦いに挑む。
その日までの間、俺たちはそれぞれ決戦に備えた。
ダグたちは武器を研ぎ澄まし、グラン爺は古代魔法の解読を進めた。
エリアナは王国の精鋭騎士たちを鍛え上げ、セレスティアは世界樹の麓で祈りを捧げ続けた。
そして俺は。
俺はただひたすらに畑を耕した。
最高の作物を作る。
それが俺にできる最高の戦準備だ。
俺は信じている。
俺の農業の力が、必ず世界を救うと。
決戦の日は刻一刻と近づいていた。
俺の辺境スローライフは、ついに最終章へと突入する。
全てはこの愛すべき日常を守るために。
俺は静かに土を握りしめた。
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