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第32話「いざ、虚無の揺り籠へ」
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決戦の日の朝は、嘘のように静かに、そして穏やかに訪れた。
俺とセレスティアは夜が明ける前に、二人で世界樹の麓を訪れた。
朝日を浴びて黄金色に輝く巨木は、まるで俺たちに祝福を与えてくれているかのようだった。
「行こう」
「はい」
短い言葉を交わし、俺たちは仲間たちが待つ広場へと向かった。
そこには既に全員が顔を揃えていた。
ダグ、シルフィ、レオ、グラン爺、そしてエリアナ。
誰もが覚悟を決めた、引き締まった表情をしている。
だがその瞳の奥には恐怖ではなく、仲間への信頼と未来への希望の光が宿っていた。
「準備はいいか、お前ら!」
ダグが全員の顔を見渡して檄を飛ばす。
「「「応!!」」」
力強い声が一つになって、朝の澄んだ空気に響き渡った。
俺たちは王都からエリアナが手配してくれた高速のグリフォンに乗り、王都へと向かった。
眼下に広がる俺の領地。
緑豊かな畑、新しくなったテル村、そして天を突く世界樹。
俺が命を懸けて守りたいものが、そこにはあった。
王都に到着すると、街は既に厳戒態勢が敷かれていた。
上空からはゼニス帝国の巨大な飛空艇団が、王都を威圧するように旋回しているのが見えた。
彼らが陽動役だ。
「時間だ」
リリスが黒いドレスを戦装束に改め、俺たちの前に現れた。
その手には禍々しい闇のオーラを放つ、大鎌が握られている。
「皇帝陛下からの伝言よ。『武運を祈る』、ですって」
彼女は不敵に笑うと続けた。
「邪神の眷属たちが現れ始めたわ。我々が地上で時間を稼ぐ。あなたたちはその隙に地下へ向かいなさい」
ゴオオオオオッ!
リリスの言葉を裏付けるように、王都の城壁の外から地鳴りのような咆哮が響き渡った。
大地が裂け、そこから異形の魔物たちが次々と這い出してくる。
邪神の眷属だ。
「行くぞ!」
エリアナの号令一下、俺たちは王城の地下深くへと続く秘密の通路へと駆け出した。
そこは王家の者とごく一部の人間しか知らない、古代の地下神殿へと通じる道だ。
ひんやりとした湿った空気が肌を刺す。
長い長い螺旋階段を下っていく。
深く潜れば潜るほど、空気が重くなっていくのを感じた。
鼻を突く腐臭と、精神を直接圧迫してくるような邪悪な瘴気。
「……これが、邪神の瘴気か」
ダグが顔をしかめてつぶやく。
ただそこにいるだけで、体中の力が吸い取られていくようだ。
「皆さん、これを」
セレスティアが小さな護符を全員に配った。
彼女が世界樹の葉で作った、聖なる護符だ。
それを身につけると、不思議と瘴気の圧力が和らいだ。
「助かるぜ、聖女様」
レオがにっと笑う。
どれくらい下っただろうか。
螺旋階段は終わり、俺たちは広大な地下空間にたどり着いた。
そこはまるでアリの巣のように、無数の洞窟が入り組んだ巨大な地下迷宮だった。
そしてその迷宮の入り口で、一体の魔物が俺たちを待ち構えていた。
全身がぬらりとした黒い粘液で覆われた、巨大な軟体生物。
無数の触手と、その中央にはギョロリとした赤い目が一つだけついていた。
「最初のお出ましか」
俺は地面に手を触れ、いつでもスキルを発動できるように身構える。
「ここは私に任せてもらおう」
エリアナが一歩前に出て剣を抜いた。
「こいつは『深淵の監視者(アビス・ウォッチャー)』。邪神の瘴気から生まれた最初の眷属。こいつを倒さねば先へは進めん!」
「グシャアアアアッ!」
監視者は甲高い咆哮を上げ、その無数の触手を鞭のようにしならせ、エリアナに襲いかかってきた。
「はあっ!」
エリアナはその触手の嵐を紙一重でかわし、懐へと飛び込む。
そしてその剣に聖なる光をまとわせた。
それはセレスティアの祝福を受けた、破魔の剣。
「王国の未来を脅かす不浄なるものよ! この一撃の元に滅びよ! 『セイクリッド・ブレード』!」
エリアナの剣が閃光を放ち、監視者の巨大な一つ目を正確に貫いた。
「ギッ……ギャアアアアアアッ!」
監視者は断末魔の悲鳴を上げ、その体は黒い霧となって消滅していった。
見事な一撃だった。
「さすがだな、騎士団長」
ダグが感心したように口笛を吹く。
エリアナは剣を収め、静かに言った。
「行くぞ。本当の地獄はここからだ」
彼女の言葉通り、この先に待ち受けるものは今しがたの魔物など比較にならないほどの絶望と恐怖だった。
俺たちはゴクリと唾を飲み込み、覚悟を決めて地下迷宮の暗闇へと足を踏み入れていく。
世界の運命を賭けた俺たちの戦いが、今始まった。
俺とセレスティアは夜が明ける前に、二人で世界樹の麓を訪れた。
朝日を浴びて黄金色に輝く巨木は、まるで俺たちに祝福を与えてくれているかのようだった。
「行こう」
「はい」
短い言葉を交わし、俺たちは仲間たちが待つ広場へと向かった。
そこには既に全員が顔を揃えていた。
ダグ、シルフィ、レオ、グラン爺、そしてエリアナ。
誰もが覚悟を決めた、引き締まった表情をしている。
だがその瞳の奥には恐怖ではなく、仲間への信頼と未来への希望の光が宿っていた。
「準備はいいか、お前ら!」
ダグが全員の顔を見渡して檄を飛ばす。
「「「応!!」」」
力強い声が一つになって、朝の澄んだ空気に響き渡った。
俺たちは王都からエリアナが手配してくれた高速のグリフォンに乗り、王都へと向かった。
眼下に広がる俺の領地。
緑豊かな畑、新しくなったテル村、そして天を突く世界樹。
俺が命を懸けて守りたいものが、そこにはあった。
王都に到着すると、街は既に厳戒態勢が敷かれていた。
上空からはゼニス帝国の巨大な飛空艇団が、王都を威圧するように旋回しているのが見えた。
彼らが陽動役だ。
「時間だ」
リリスが黒いドレスを戦装束に改め、俺たちの前に現れた。
その手には禍々しい闇のオーラを放つ、大鎌が握られている。
「皇帝陛下からの伝言よ。『武運を祈る』、ですって」
彼女は不敵に笑うと続けた。
「邪神の眷属たちが現れ始めたわ。我々が地上で時間を稼ぐ。あなたたちはその隙に地下へ向かいなさい」
ゴオオオオオッ!
リリスの言葉を裏付けるように、王都の城壁の外から地鳴りのような咆哮が響き渡った。
大地が裂け、そこから異形の魔物たちが次々と這い出してくる。
邪神の眷属だ。
「行くぞ!」
エリアナの号令一下、俺たちは王城の地下深くへと続く秘密の通路へと駆け出した。
そこは王家の者とごく一部の人間しか知らない、古代の地下神殿へと通じる道だ。
ひんやりとした湿った空気が肌を刺す。
長い長い螺旋階段を下っていく。
深く潜れば潜るほど、空気が重くなっていくのを感じた。
鼻を突く腐臭と、精神を直接圧迫してくるような邪悪な瘴気。
「……これが、邪神の瘴気か」
ダグが顔をしかめてつぶやく。
ただそこにいるだけで、体中の力が吸い取られていくようだ。
「皆さん、これを」
セレスティアが小さな護符を全員に配った。
彼女が世界樹の葉で作った、聖なる護符だ。
それを身につけると、不思議と瘴気の圧力が和らいだ。
「助かるぜ、聖女様」
レオがにっと笑う。
どれくらい下っただろうか。
螺旋階段は終わり、俺たちは広大な地下空間にたどり着いた。
そこはまるでアリの巣のように、無数の洞窟が入り組んだ巨大な地下迷宮だった。
そしてその迷宮の入り口で、一体の魔物が俺たちを待ち構えていた。
全身がぬらりとした黒い粘液で覆われた、巨大な軟体生物。
無数の触手と、その中央にはギョロリとした赤い目が一つだけついていた。
「最初のお出ましか」
俺は地面に手を触れ、いつでもスキルを発動できるように身構える。
「ここは私に任せてもらおう」
エリアナが一歩前に出て剣を抜いた。
「こいつは『深淵の監視者(アビス・ウォッチャー)』。邪神の瘴気から生まれた最初の眷属。こいつを倒さねば先へは進めん!」
「グシャアアアアッ!」
監視者は甲高い咆哮を上げ、その無数の触手を鞭のようにしならせ、エリアナに襲いかかってきた。
「はあっ!」
エリアナはその触手の嵐を紙一重でかわし、懐へと飛び込む。
そしてその剣に聖なる光をまとわせた。
それはセレスティアの祝福を受けた、破魔の剣。
「王国の未来を脅かす不浄なるものよ! この一撃の元に滅びよ! 『セイクリッド・ブレード』!」
エリアナの剣が閃光を放ち、監視者の巨大な一つ目を正確に貫いた。
「ギッ……ギャアアアアアアッ!」
監視者は断末魔の悲鳴を上げ、その体は黒い霧となって消滅していった。
見事な一撃だった。
「さすがだな、騎士団長」
ダグが感心したように口笛を吹く。
エリアナは剣を収め、静かに言った。
「行くぞ。本当の地獄はここからだ」
彼女の言葉通り、この先に待ち受けるものは今しがたの魔物など比較にならないほどの絶望と恐怖だった。
俺たちはゴクリと唾を飲み込み、覚悟を決めて地下迷宮の暗闇へと足を踏み入れていく。
世界の運命を賭けた俺たちの戦いが、今始まった。
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