出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人

文字の大きさ
37 / 41

第36話「最後の希望、俺の畑だけが」

しおりを挟む
 絶望が支配する地底の最深部。
 仲間たちが次々と戦う力を失っていく中、俺は一人立っていた。

 不思議なことに、俺の体からは力が失われていなかった。
『枯渇の呪い』はこの星のマナを枯渇させる。
 だが、俺の力の源はマナではない。
 俺自身の内に宿る純粋な『生命力』。
 そして前世から受け継いだ、農業への飽くなき探求心。
 それらが融合して生まれたユニークスキル『絶対農域』。
 それはこの星の理から外れた、奇跡の力。
 だからこそ、邪神の呪いの影響を受けなかったのだ。

『……ホウ。マダ立ッテイル蟲がいるか』

 邪神が初めて興味を示したかのように、俺に意識を集中させてくる。
 凄まじいプレッシャーが俺の全身を襲うが、俺は一歩も引かなかった。

「……お前の思い通りにはさせない」

 俺は静かに言い放った。

 そして懐から小さな麻袋を取り出す。
 中には俺の畑で採れた、様々な野菜の種が入っている。
 世界樹が枯れ、地上の全ての植物が死滅した今、この種こそがこの星に残された最後の生命だった。

 俺は瘴気に汚染された足元の地面に膝をつき、一粒のトマトの種をそっと置いた。

「何をする気だ、カイ……?」
 ダグがか細い声で尋ねる。
「そんなことをしても無駄だ。この死んだ大地では、何も育つものか……」

「いいや、育ちます」
 俺は力強く言った。
「俺の畑は、ここにある」

 俺は地面に両手をついた。
 そして目を閉じ、意識を集中させる。
 俺の生命力の全てをこの一点に、この小さな種に注ぎ込む。

『芽を出せ。俺の全てをくれてやる。だから、応えてくれ!』

 俺の体から淡い緑色の光が溢れ出す。
 その光は俺の手を通して大地へと流れ込み、邪神の瘴気に汚染された黒い大地が、俺の手の周りから少しずつ浄化され、肥沃な黒土へと変わっていく。
 俺だけの聖域、『絶対農域』がこの絶望の大地に顕現した瞬間だった。

 そして、奇跡は起きた。

 黒土の中心に置かれたトマトの種から、ぽつりと小さな緑色の芽が顔を出したのだ。
 それはこの死の世界に灯った、あまりにも小さく、しかし何よりも力強い希望の光だった。

「……!」

 仲間たちが息を呑む。
 ダグもエリアナもセレスティアも、信じられないという顔でその小さな芽を見つめている。

 芽は俺の生命力受けてぐんぐんと成長していく。
 葉を広げ、花を咲かせ、そしてあっという間に一つの真っ赤な実をつけた。
 そのトマトは、まるでルビーのように神々しい光を放っていた。

『……ナンダ、アレハ……。我ガ支配スル無ノ世界ニ生命ヲ生ミ出ストハ……! ユルサン……!』

 邪神が初めて焦りの感情を露わにした。
 黒い心臓から凝縮された闇のエネルギー弾が、俺とトマトの苗木めがけて放たれる。

「カイ!」

 仲間たちが叫ぶ。

 だが俺は動じなかった。
 俺が手をかざすと、トマトの苗木から無数のツルが伸び、俺の前に分厚い緑の盾を形成した。
 闇のエネルギー弾は緑の盾に着弾し、激しい爆発を起こす。
 だが盾はびくともしない。
 それどころか闇のエネルギーを吸収し、さらに青々と輝きを増していく。

「嘘だろ……」
「邪神の攻撃を、防いだ……?」

 俺はゆっくりと立ち上がると、実ったトマトを一つもぎ取った。

「みんな、これを食べてください」

 俺はトマトを仲間たちへと差し出す。
 彼らは戸惑いながらも俺の言葉に従い、トマトを一口ずつ分け合って食べた。

 その瞬間、彼らの身に変化が起きた。
 失われていた力が急速に回復していく。
 ダグの腕に筋肉が戻り、グラン爺の杖に魔力の光が灯る。
 そして、セレスティアの全身から再び清らかな聖なるオーラが立ち上った。

「力が……! 力が戻ってくる! 筋肉があの頃以上にみなぎってきたぜ!」
 ダグが剛腕に力を込め、血管を浮き上がらせる。

「聖なる祈りが神に届きます! 世界樹様の温かい光を感じますわ!」
 シルフィとセレスティアが安堵の表情を浮かべた。

「魔力が満ちるわい! これなら究極魔法の一発や二発、お見舞いできるぞ!」
 グラン爺の杖が再び輝きを取り戻す。

 俺の作物はただの食料ではない。
 生命力そのものの塊だ。
 それは枯渇の呪いを打ち破り、人々に再び戦う力を与える奇跡の果実だった。

「カイ……。お前、やっぱりすげえよ……」

 ダグが涙ながらに笑った。

「さあ、行こう」
 俺は仲間たちを見渡した。
 その瞳にはもう絶望の色はない。
 全員の瞳に再び闘志の炎が燃え盛っていた。
「ここからが、俺たちの反撃だ」

 俺は地面に手を触れ、叫んだ。

「起きろ! 俺の最強の軍団! 『ワールドツリー・ガーディアンズ』!」

 俺の呼びかけに応え、世界樹の種から生まれたトマトの苗木の周りから、無数の木の兵士たちが姿を現した。
 それはかつての野菜兵とは比較にならない、神々しさと力を秘めた世界樹の分身たち。

 最後の希望はここにある。
 俺は仲間たちと新たなる兵士たちを率いて、再び虚ろなる神と対峙する。
 世界の未来を賭けた最終決戦の、本当の幕が今上がる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?

黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。 古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。 これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。 その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。 隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。 彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。 一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。 痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。

処理中です...