出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人

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番外編2「聖女様のはじめての畑仕事(その後)」

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「ふんふふーん♪」

 私はカイ様の奥様になった、セレスティアと申します。
 今日は朝からとってもご機嫌です。
 なぜならカイ様が王都での会議に出かけていて、今日一日このお家のことは全て私に任されているからです!

 以前、カイ様に畑仕事を教えていただいたことがありました。
 その時は泥だらけになってしまい少し恥ずかしかったですが、自分の手で作物を収穫する喜びは忘れられません。
 今日こそ完璧な奥様として、家事も畑仕事も全て一人でこなしてみせます!
 そして帰ってきたカイ様をびっくりさせて、たくさん褒めてもらうのです!

 うふふ。計画は完璧ですわ。

 まずはお洗濯。
 これは得意です。聖女時代、自分のローブは自分で洗っていましたから。
 井戸水を汲み、ゴシゴシと洗っていく。
 うん、綺麗になりました。

 次にお掃除。
 ログハウスの中を隅々までピカピカにします。
 これも神殿の掃除で慣れています。
 完璧ですわ。

 そして、いよいよメインイベント。
 畑仕事です!

 私はカイ様が作ってくれた、私専用の可愛らしい麦わら帽子とエプロンを身につけ、畑へと向かいました。
 今日のミッションはニンジンを収穫すること。

「よいしょ、こらしょ」

 私はカイ様に教わった通り、クワを優しく土に入れていきます。
 おお、ありました!
 土の中からオレンジ色の立派なニンジンが顔を出します。

「やりましたわ!」

 私は楽しくなって、夢中でニンジンを収穫していきました。
 あっという間にカゴがいっぱいです。
 私、意外と才能があるのかもしれませんわ。

 収穫を終えた私は、ふと畑の隅にある小さな苗木に目が留まりました。
 これはカイ様が昨日植えていたリンゴの苗木です。
『早く大きくなって、美味しい実をつけておくれ』
 そうおっしゃっていました。

『……そうだわ!』

 私に素晴らしいアイデアがひらめきました。
 カイ様が帰ってくるまでに、このリンゴの木を大きくしてびっくりさせてあげましょう!

 私には聖なる力があります。
 この力を使えば、植物の成長を少しだけ早めることができるのです。
 世界樹様に比べれば微々たる力ですが、苗木くらいならなんとかなるはず。

 私はリンゴの苗木の前にひざまずき、両手をかざしました。
 そして祈りを込めます。

「おお、聖なる光よ。この若き命に成長の祝福を……!」

 私の手から柔らかな光が溢れ出し、苗木に降り注いでいきます。

 するとどうでしょう!
 苗木はみるみるうちに成長し、ぐんぐんと枝を伸ばし始めました!

「まあ! すごいですわ!」

 私は嬉しくなって、さらに力を込めていきます。
 もっと、もっと大きくなあれ!

 苗木はあっという間に私の背丈を超え、立派な若木へと成長しました。
 そしてその枝には、可愛らしい白い花が咲き始めたのです。

「綺麗……」

 私はその美しい光景にうっとりと見惚れていました。
 その時でした。

 ミチミチミチ……!

 何やら不穏な音が聞こえてきます。
 見ると、リンゴの木が異常な速度で成長を続けているのです。
 私の制御を離れて。

「えっ……? えっ……!?」

 私は慌てて力の供給を止めようとしましたが、もう遅かったのです。
 リンゴの木はまるで怪物のように暴走を始め、天に向かってどこまでもどこまでも伸びていきます。
 その勢いは、まるで、あの時の世界樹のようでした。

「きゃあああああっ!」

 暴走する木の根が地面を割り、私はその衝撃で尻餅をついてしまいました。
 あっという間にリンゴの木はログハウスよりも高くなり、その巨大な枝は空を覆い尽くさんばかりです。

 そしてその枝に、ありえないほどの数のリンゴの実がなり始めました。
 一つ一つがカボチャほどもある巨大なリンゴです。

 ドサッ!
 一つの巨大リンゴが重さに耐え切れず、地面に落下しました。
 私のすぐ目の前に。
 もし直撃していたらと思うと、ぞっとします。

 そしてそれを皮切りに、次々と巨大リンゴが雨のように地上に降り注ぎ始めたのです!
 ドッスーン! バッシャーン!
 畑は見るも無残にリンゴに埋め尽くされ、いくつかのリンゴは洗濯物を直撃し、泥だらけにしてしまいました。
 ああ、私のお掃除が……!

「ど、どうしましょう……!」

 私は完全にパニックに陥ってしまいました。
 サプライズが大惨事に。
 これではカイ様に叱られてしまいます……!

 私が涙目で途方に暮れていると。

「――ただいまー」

 一番聞きたくなかった声が聞こえてきました。
 カイ様が予定より早く帰ってきてしまったのです。

 カイ様は目の前の惨状を見てしばらく固まっていました。
 そして巨大なリンゴの木の下でべそをかいている私を見つけると、全てを察したように大きな大きいため息をつきました。

「……セレスティアさん……。一体、何があったのかな……?」

 その声は怒っているというより、心底呆れているようでした。

「う……うう……。ごめんなさい、カイ様……」

 私はもう謝ることしかできませんでした。

 その日の夜。
 アークライト家では、食卓に乗り切らないほどのリンゴ料理が並ぶことになりました。
 焼きリンゴ、アップルパイ、リンゴのコンポート、リンゴサラダ……。
 そしてその日から一週間、我が家の食事はリンゴ尽くしになったのです。

 ちなみに、暴走したリンゴの木はカイ様がスキルでなんとか元の大きさに戻してくれました。
 カイ様にはこっぴどく叱られましたが、最後は頭を優しく撫でて許してくれました。

「君は、本当に目が離せないな」

 そう言って苦笑するカイ様の顔が、とっても素敵でした。

 完璧な奥様への道はまだまだ遠いようです。
 でも、失敗しても優しく許してくれるカイ様がいるから、私は頑張れます。
 明日もめげずに奥様修行、頑張りますわ!
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