出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人

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エピローグ「畑と、君と、これからの毎日」

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 あれから、五年。
 俺の領地は、豊かで平和な時を刻み続けていた。

 世界樹は今や大陸中から人々が訪れる聖地となり、その麓に広がる俺の領地とテル村は、一つの街として大きく発展した。
 アークライトと名付けられたその街は、いつも人々の笑顔と活気に満ち溢れている。

 俺は今も変わらず、この街の領主として、そして一人の農民として畑に立っていた。
 土の匂い、太陽の温かさ。
 これが俺の原点だ。

「パパー!」

 小さな元気な声がして、俺は振り返った。
 そこにいたのは俺とセレスティアの間に生まれた娘のリーリエだった。
 母親譲りのプラチナブロンドの髪を二つに結び、父親譲りの好奇心旺盛な瞳を輝かせている。
 今年で四歳になる、俺の目に入れても痛くない宝物だ。

「どうした、リーリエ。走ると危ないぞ」

 俺が言うと、リーリエは俺の足元に駆け寄ってきて、ぎゅっと抱きついてきた。

「見て、パパ! お花、摘んできたの! ママにプレゼントするの!」

 その小さな手には、色とりどりの野の花が握られていた。

「そうか。ママ、喜ぶぞ」

 俺はリーリエをひょいと抱き上げた。
 彼女はきゃっきゃと嬉しそうに笑う。

 その時、畑の向こうからセレスティアがカゴを持って歩いてくるのが見えた。
 彼女の隣には、すっかり大きくなったルプスもいる。

「あなた、リーリエ。お昼ご飯ができましたよ」

 セレスティアは少しも変わらない、聖母のような笑みを浮かべている。
 いや、母親になった彼女は以前よりもさらに美しく、強くなった気がする。

 俺たちは畑のそばにある大きな木の下にシートを広げ、ピクニックを始めた。
 セレスティアが作ってくれたサンドイッチは、俺の新鮮な野菜がたっぷりで世界一美味い。

「ママ、お花、どうぞ!」

 リーリエが花束を差し出すと、セレスティアは顔をほころばせた。

「まあ、ありがとう、リーリエ。とっても綺麗ね」

 彼女はその花を自分の髪にそっと挿した。
 その姿は花の精のようで、俺は思わず見惚れてしまう。

 そんな穏やかで幸せな時間。
 ふと遠くの空を見ると、一羽のグリフォンが飛んでくるのが見えた。
 背中にはエリアナと彼女の息子らしき少年が乗っている。
 どうやら週末を利用して遊びに来てくれたらしい。
 そういえば、ダグたちも近々顔を出すと言っていたな。

 俺の周りにはいつも大切な家族と仲間たちがいてくれる。
 俺のスローライフはちっともスロー(静か)ではないけれど。
 こんな賑やかで温かい毎日が、俺はたまらなく好きだ。

「どうしましたの? あなた」

 俺が感慨にふけっていると、セレスティアが不思議そうに顔を覗き込んできた。

 俺は彼女に微笑みかけた。
 そしてその唇に、そっとキスをする。

「ん……」

 リーリエが見ていないのを確認してからの、ささやかな愛情表現。

「……なんでもないさ。ただ、幸せだなって思っただけだよ」

 俺の言葉に、セレスティアは最高の笑顔で頷いた。

「ええ。わたくしも、幸せですわ」

 追放されたあの日から始まった俺の物語。
 それはたくさんの出会いと奇跡に彩られた、最高の物語だった。
 そしてこの物語はこれからも続いていく。
 この愛すべき畑と、君と、そしてこれから生まれてくる新しい家族と共に。
 毎日、毎日、新しい幸せの種を蒔きながら。

 俺はどこまでも青く澄み渡った空を見上げた。
 ありがとう、この世界。
 俺は、ここにいる。
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