悪役令嬢は辺境で農業革命を起こす~追放された私が知識チートで会社を作り、気づけば国ごと豊かにしちゃいました~

黒崎隼人

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エピローグ:そして、未来へ

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 リリアーナがアースガルディア王国を旅立ってから、十年の歳月が流れた。
 世界は、彼女という存在を中心に、緩やかに、しかし確実に変わり続けていた。彼女が立ち上げた国際食糧支援プロジェクト「アグリーズ・ホープ(農業の希望)」は、世界各地の飢餓に苦しむ地域に、アースガルディアの農業技術と、何よりも「自らの手で未来を切り開ける」という希望をもたらしていた。

 アースガルディア王国は、アルフレッド国王の賢明な統治と、エリックが率いる巨大企業「アースガルディア・アグリカルチャー・カンパニー」の経済力によって、世界で最も豊かで安定した国として、その名を轟かせていた。人々は、豊かな食に感謝し、その礎を築いた「豊穣の女神」リリアーナの物語を、子供たちに語り聞かせるのが日常となっていた。

 リリアーナは、時折、ふらりと故郷に帰ってきた。彼女の帰郷は、国を挙げての祭りとなり、人々は彼女の帰りを心から歓迎した。彼女は、王宮でアルフレッドと世界の情勢について語り合い、研究所でトーマスと新しい作物の種について議論を交わし、会社のオフィスでエリックと未来のビジネスについて夢を語った。

 ある晴れた日、リリアーナは、全ての始まりの場所である、辺境の村のあの畑に立っていた。かつての荒れ地は、今や美しいハーブ園となり、心地よい香りが風に乗って運ばれてくる。

 彼女の隣には、アルフレッド、トーマス、そしてエリックがいた。彼らは、それぞれの人生で最も重要な存在となった、この女性の周りに自然と集まっていた。

「まさか、あの時の嬢ちゃんが、世界を股にかける大人物になるとはなあ」
 トーマスが、しわくちゃの顔で笑う。

「リリアーナさん、次はどんな突拍子もないことを考えているんですか? うちの会社も、いつでも協力しますよ」
 エリックが、悪戯っぽく言う。

「君が帰ってくると、この国の空気が明るくなるようだ」
 アルフレッドが、穏やかな眼差しで彼女を見つめる。

 リリアーナは、大切な仲間たちに囲まれ、心の底から満たされた幸福を感じていた。悪役令嬢として演じた偽りの人生。追放されて始まった本当の人生。数々の困難も、試練も、全てはこの瞬間に繋がっていた。

 彼女は、空を見上げて深く息を吸い込んだ。
「次は……そうですね。そろそろ、月で野菜でも作ってみようかしら」

 彼女の冗談に、三人は顔を見合わせて、大きな笑い声を上げた。その笑い声は、平和と豊かさに満ちたアースガルディアの空に、どこまでも高く響き渡っていった。

 リリアーナ・フォン・アースガルディア。
 一人の悪役令嬢が、逆境を乗り越え、自らの手で運命を切り開き、国を、そして世界を救った物語。

 彼女が築き上げたものは、経済的な繁栄だけではない。それは、人々の意識を変え、社会のあり方を変え、未来そのものを変える、希望という名の種だった。

 そして、その物語は、まだ終わらない。
 彼女が生き、夢を見、挑戦を続ける限り、世界はさらに豊かで、素晴らしい場所になっていくだろう。自由と選択、そして希望に満ちた未来への物語は、これからも、永遠に続いていく。
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