元悪役令嬢、偽聖女に婚約破棄され追放されたけど、前世の農業知識で辺境から成り上がって新しい国の母になりました

黒崎隼人

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番外編3:公王カイの、夜明けの誓い

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 俺は、ロゼリアと出会う前、ずっと孤独だった。
 シルベストリ家の末裔として、この「灰色の谷」で生まれた時から、俺の背中には、没落した一族の宿命が重くのしかかっていた。いつか、この土地を取り戻し、先祖の名誉を回復する。それが、物心ついた頃からの、俺の唯一の夢であり、呪いだった。
 だが、現実はあまりに過酷だった。痩せた土地、希望を失った人々。俺はただ一人、来る日も来る日も、黙々と土を耕し続けた。それは、夢への一歩というよりは、絶望に抗うための、意地のようなものだったかもしれない。
 そんな俺の前に、彼女は現れた。
 ロゼリア・フォン・ヴェルフェン。
 王都から追放されてきた、美しい公爵令嬢。最初は、他の村人たちと同じように、警戒していた。どうせ、すぐに音を上げて泣き出す、か弱いお嬢様だろうと。
 だが、彼女は違った。
 その華奢な手で土に触れ、汗を流すことを厭わず、俺ですら知らなかった知識で、死んだような大地に命を吹き込んでいった。彼女の瞳は、いつも真っ直ぐに未来を見ていた。その姿は、あまりに眩しく、俺の頑なだった心を、少しずつ溶かしていった。
 彼女は、俺が一人で抱え込んでいた夢を、いつの間にか「私たちの夢」に変えてくれた。彼女と共にいると、不可能だと思っていたことが、可能になるような気がした。
 そして今、俺はアグリア公国の公王として、この地に立っている。隣には、俺の妃となった、最愛のロゼリアがいる。
 夜明け前、まだロゼリアが安らかな寝息を立てている隣で、俺は一人、静かに城のバルコニーに出るのが日課になっている。眼下に広がる、俺たちの国を眺めるためだ。畑の緑、民家の灯り、その全てが愛おしい。
 俺は、この国を、そしてロゼリアを、命を懸けて守ると誓う。
 彼女が、あの夜会で俺に見せてくれた強さ。
 辺境で、俺に見せてくれたひたむきさ。
 そして今、俺の隣で、穏やかに微笑んでくれる優しさ。
 その全てが、俺の宝物だ。
 俺は、もう孤独じゃない。
 ロゼリア、お前が俺を見つけてくれた。お前が、俺に光をくれたんだ。
 だから、俺は王として、夫として、そして一人の男として、お前を世界で一番幸せにすることを、このアグリアの夜明けの空に、改めて誓う。
 俺たちの物語は、まだ始まったばかりなのだから。
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