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エピローグ「創世王の伝説」
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かつてカラン村と呼ばれた地が、創生都市エデンとして興ってから、十年の歳月が流れた。
エデンは、今や大陸のどの国もが羨む、平和と豊かさの象徴となっていた。リアムが創り上げた法の下、あらゆる種族が手を取り合い、共存する理想郷。その噂は、吟遊詩人の歌となって、世界中に語り継がれていた。
ある日の昼下がり。
一人の年老いた旅人が、初めてエデンの地に足を踏み入れた。彼は、そのあまりの繁栄ぶりに目を見張った。白く輝く城壁、清潔で活気のある街並み、そして何より、道行く人々の幸福に満ちた笑顔。旅人は、長年世界中を渡り歩いてきたが、これほどまでに満ち足りた空気に包まれた都市は見たことがなかった。
旅人が中央広場の噴水で休んでいると、どこからか子供たちの楽しげな笑い声が聞こえてきた。
声のする方を見ると、一人の青年が、たくさんの子供たちに囲まれて絵本を読み聞かせている。青年は、豪華な服を着ているわけではない。だが、その佇まいには、不思議なほどの落ち着きと優しさが満ち溢れていた。
「――こうして、心優しいウサギさんは、森のみんなと仲良く暮らしましたとさ。めでたし、めでたし」
青年が本を閉じると、子供たちがわっと歓声を上げた。
「王様、次のお話はー?」
「はは、今日はもうおしまいだ。また今度な」
青年――リアムは、子供たちの頭を優しく撫でると、立ち上がった。すると、彼の元に、亜麻色の髪をした美しい女性が、小さな男の子の手を引いて歩み寄ってくる。
「あなた、お疲れ様。みんな、楽しそうだったわね」
「ああ、リーシャ。この子たちを見ていると、俺も元気をもらえるんだ」
リアムは、妻となったリーシャの肩を優しく抱き寄せ、息子の頭を撫でた。その光景は、どこにでもある、ごく普通の家族の、幸せな一場面だった。
老いた旅人は、近くで露店を開いていた店主に、そっと尋ねた。
「失礼、あの方は一体…? 王様、と呼ばれていたようだが」
すると店主は、まるで自分のことのように、誇らしげな満面の笑みを浮かべて答えた。
「へへっ、旅の方かい? あの方こそ、このエデンを、何もない荒れ地からたった一人で創り上げた、我らが偉大なる王。創生王リアム様ですよ」
その言葉に、旅人は息をのんだ。あれが、伝説に謳われる創世王。あまりにも素朴で、民に溶け込んだその姿は、旅人が想像していた王の姿とはかけ離れていた。だが、同時に深く納得した。この王だからこそ、これほどの理想郷を築けたのだと。
リアムは、リーシャと息子と共に、夕日に染まる自らの国を見渡していた。
かつて、全てを失い、絶望の淵にいた一人の青年。
彼は、神の如き力を手に入れながらも、それを私利私欲のために使うことはなかった。ただ、目の前の人々の涙を拭い、笑顔を守るためだけに、その力を使った。
その結果生まれたのが、この奇跡の都市エデンだ。
「綺麗だね、リアム」
「ああ。本当に」
リアムは、隣で微笑む最愛の妻と、その腕の中で健やかに眠る我が子を見つめる。
彼が本当に手に入れたかったもの。それは、世界の覇権でも、莫大な富でもなかった。ただ、この温かくて、かけがえのない日常。
無能と追放された鑑定士の物語は、ここで一つの終わりを告げる。
しかし、世界を創り変えた「創生王」リアムの伝説は、このエデンと共に、永遠に語り継がれていくことだろう。
これは、絶望から始まった、世界で最も幸福な建国神話である。
エデンは、今や大陸のどの国もが羨む、平和と豊かさの象徴となっていた。リアムが創り上げた法の下、あらゆる種族が手を取り合い、共存する理想郷。その噂は、吟遊詩人の歌となって、世界中に語り継がれていた。
ある日の昼下がり。
一人の年老いた旅人が、初めてエデンの地に足を踏み入れた。彼は、そのあまりの繁栄ぶりに目を見張った。白く輝く城壁、清潔で活気のある街並み、そして何より、道行く人々の幸福に満ちた笑顔。旅人は、長年世界中を渡り歩いてきたが、これほどまでに満ち足りた空気に包まれた都市は見たことがなかった。
旅人が中央広場の噴水で休んでいると、どこからか子供たちの楽しげな笑い声が聞こえてきた。
声のする方を見ると、一人の青年が、たくさんの子供たちに囲まれて絵本を読み聞かせている。青年は、豪華な服を着ているわけではない。だが、その佇まいには、不思議なほどの落ち着きと優しさが満ち溢れていた。
「――こうして、心優しいウサギさんは、森のみんなと仲良く暮らしましたとさ。めでたし、めでたし」
青年が本を閉じると、子供たちがわっと歓声を上げた。
「王様、次のお話はー?」
「はは、今日はもうおしまいだ。また今度な」
青年――リアムは、子供たちの頭を優しく撫でると、立ち上がった。すると、彼の元に、亜麻色の髪をした美しい女性が、小さな男の子の手を引いて歩み寄ってくる。
「あなた、お疲れ様。みんな、楽しそうだったわね」
「ああ、リーシャ。この子たちを見ていると、俺も元気をもらえるんだ」
リアムは、妻となったリーシャの肩を優しく抱き寄せ、息子の頭を撫でた。その光景は、どこにでもある、ごく普通の家族の、幸せな一場面だった。
老いた旅人は、近くで露店を開いていた店主に、そっと尋ねた。
「失礼、あの方は一体…? 王様、と呼ばれていたようだが」
すると店主は、まるで自分のことのように、誇らしげな満面の笑みを浮かべて答えた。
「へへっ、旅の方かい? あの方こそ、このエデンを、何もない荒れ地からたった一人で創り上げた、我らが偉大なる王。創生王リアム様ですよ」
その言葉に、旅人は息をのんだ。あれが、伝説に謳われる創世王。あまりにも素朴で、民に溶け込んだその姿は、旅人が想像していた王の姿とはかけ離れていた。だが、同時に深く納得した。この王だからこそ、これほどの理想郷を築けたのだと。
リアムは、リーシャと息子と共に、夕日に染まる自らの国を見渡していた。
かつて、全てを失い、絶望の淵にいた一人の青年。
彼は、神の如き力を手に入れながらも、それを私利私欲のために使うことはなかった。ただ、目の前の人々の涙を拭い、笑顔を守るためだけに、その力を使った。
その結果生まれたのが、この奇跡の都市エデンだ。
「綺麗だね、リアム」
「ああ。本当に」
リアムは、隣で微笑む最愛の妻と、その腕の中で健やかに眠る我が子を見つめる。
彼が本当に手に入れたかったもの。それは、世界の覇権でも、莫大な富でもなかった。ただ、この温かくて、かけがえのない日常。
無能と追放された鑑定士の物語は、ここで一つの終わりを告げる。
しかし、世界を創り変えた「創生王」リアムの伝説は、このエデンと共に、永遠に語り継がれていくことだろう。
これは、絶望から始まった、世界で最も幸福な建国神話である。
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