ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人

文字の大きさ
4 / 15

第3話「神眼の覚醒と最初の一滴」

しおりを挟む
 夜が明けるのももどかしく、俺はさっそく行動を開始した。
 昨夜の発見が本物かどうか、確かめなければならない。もし本当に、そこら辺の石ころと雑草でポーションが作れるなら、俺の人生は根底から覆る。
 まずは道具の確保だ。幸い、この廃屋には昔の住人が置いていったであろう、錆びた鍋や割れた瓶がいくつか残っていた。煮沸消毒すれば、なんとか使えるだろう。
 次に材料の調達。といっても、廃屋の周りにいくらでも転がっている『風化した石』と、そこら中に生えている『名もなき草』を拾い集めるだけだ。他の冒険者が見たら、ゴミ拾いをしている頭のおかしな奴にしか見えないだろう。

『だが、俺には分かる。これは宝の山だ』
 スキルのウィンドウを開くと、昨日までは見えなかった『隠し効果』がはっきりと表示されるようになっていた。どうやら、膨大な鑑定経験を積んだことでスキルがレベルアップしたらしい。
 試しにスキル名を確認してみると、【素材鑑定】だった文字が、淡い金色に輝く【神眼鑑定】に変わっていた。

『神眼鑑定……!』
 名前からして、とんでもないスキルに進化したことが分かる。興奮で自然と口角が上がった。
 廃屋に戻り、早速ポーション作りにとりかかる。まずは『名もなき草』の根っこだけを丁寧に洗い、鍋に入れて煮込む。鑑定情報にあった通り強力なアルカリ性の液体が必要だが、今は手元にない。代用品として、植物の灰を水に溶かした灰汁(あく)を使うことにした。これも前世の知識が役立った瞬間だ。
 鍋を火にかけると、すぐに青臭い匂いが立ち上ってきた。ぐつぐつと煮込むこと一時間。緑色だった液体は、徐々に粘り気のある琥珀色へと変化していく。

『よし、第一段階は成功だ』
 次に、この液体に砕いた『風化した石』の粉末を加える。鑑定情報によれば、これが触媒となって草の成分を増幅させるはずだ。
 石の粉末を鍋に投入した、その瞬間、鍋の中がまばゆい光を放った。

「うおっ!?」
 思わず顔を覆う。光はすぐに収まったが、目の前の光景に俺は息をのんだ。
 さっきまでの琥珀色の液体が、まるで宝石のように透き通った淡い翠色の液体へと変貌していたのだ。そして、鍋からは生命力に満ち溢れた、芳しい香りが立ち上っている。
 ゴクリと、喉が鳴った。
 これは間違いなく、ただの薬草を煮詰めただけのものとは次元が違う。
 俺は震える手で近くにあった空き瓶にその液体を注いだ。完成したそれを、改めて【神眼鑑定】で見てみる。

【名もなきポーション(試作品)】
 品質:極上
 効果:傷を瞬時に再生させ、失われた生命力を大幅に回復させる。ごく微量だが、魔力の回復効果も確認できる。
 備考:未知のレシピによって生み出された奇跡の一滴。その効果は、既存のあらゆる回復薬を凌駕する。

「……マジかよ」
 鑑定結果を見て、全身に鳥肌が立った。
『エリクサー』。ゲームや物語に登場する、あらゆる傷や病を癒すと言われる伝説の秘薬。今、俺が作ったこのポーションは、それに限りなく近いものではないだろうか。
 こんなものが、道端の石ころと雑草から作れてしまった。信じられない。だが、目の前にある翠色の液体が紛れもない現実だと告げている。

『試してみるしかない』
 俺は意を決して、近くに落ちていた鋭い石の破片を拾い、自分の左腕に浅く切りつけた。ピリッとした痛みが走り血が滲み出る。
 すぐに瓶の蓋を開け、傷口にポーションを数滴垂らす。
 すると、信じられないことが起こった。
 液体が傷に触れた瞬間、シュワッと音を立てて蒸発し、次の瞬間には切り傷が跡形もなく消え去っていたのだ。痛みも完全に消えている。まるで、最初から何もなかったかのように。

「すげえ……」
 あまりの効果に、しばらく自分の腕を呆然と見つめてしまった。市販の安物のポーションとは比べ物にならない。いや、ギルドで売られている最高級ポーションですら、ここまでの即効性はないはずだ。
 興奮が、じわじわと全身を駆け巡る。
 これは、とんでもない大発見だ。
 このポーションがあれば大金が稼げる。ダリオを見返すことができる。そして、こんな廃屋暮らしからも抜け出せる。

『いや、待てよ。落ち着け、俺』
 興奮する頭を無理やり冷静に切り替える。
 このポーションの価値は計り知れない。下手に売りに出せば、厄介な連中に目をつけられる可能性がある。まずは慎重に、このポーションの正当な価値を見極め、安全に金に換える方法を探るべきだ。
 幸い、この街には薬師ギルドがある。あそこなら、正当な鑑定をしてくれるかもしれない。
 俺は完成したポーションを小瓶に詰め、懐にしまうと、しっかりとフードを目深にかぶった。
 人生のどん底で掴んだ、奇跡の光。
 この一滴から、俺の逆転劇が始まる。そう思うと、自然と足取りは軽くなっていた。街の中心部へと向かう道が、輝かしい未来へと続いているように思えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ

黒崎隼人
ファンタジー
人事コンサルタントの相馬司が転生した異世界で得たのは、人の才能を見抜く【才能鑑定】スキル。しかし自身の戦闘能力はゼロ! 「魔力もない無能」と貴族主義の宮廷魔術師団から追放されてしまう。 だが、それは新たな伝説の始まりだった! 「俺は、ダイヤの原石を磨き上げるプロデューサーになる!」 前世の知識を武器に、司は酒場で燻る剣士、森に引きこもるエルフなど、才能を秘めた「ワケあり」な逸材たちを発掘。彼らの才能を的確に見抜き、最高の育成プランで最強パーティーへと育て上げる! 「あいつは本物だ!」「司さんについていけば間違いない!」 仲間からの絶対的な信頼を背に、司がプロデュースしたパーティーは瞬く間に成り上がっていく。 一方、司を追放した宮廷魔術師たちは才能の壁にぶつかり、没落の一途を辿っていた。そして王国を揺るがす戦乱の時、彼らは思い知ることになる。自分たちが切り捨てた男が、歴史に名を刻む本物の英雄だったということを! 無能と蔑まれた男が、知略と育成術で世界を変える! 爽快・育成ファンタジー、堂々開幕!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

異世界転生した元開発担当、チート農業スキルで最高級米を作って「恵方巻」を流行らせます!没落令嬢と組んでライバル商会をざまぁする

黒崎隼人
ファンタジー
コンビニ弁当の開発担当だった俺は、過労の果てに異世界へ転生した。 手に入れたのは、触れるだけで作物を育て、品種改良までできる農業チートスキル『豊穣の指先』。 でも、俺が作りたいのは普通の野菜じゃない。 前世で最後に食べ損ねた、あの「恵方巻」だ! 流れ着いた先は、パンとスープが主食の田舎町。 そこで出会ったのは、経営難で倒産寸前の商会を切り盛りする、腹ペコお嬢様のリリアナだった。 「黒くて太い棒を、無言で丸かじりするんですか……? そんな野蛮な料理、売れるわけがありません!」 最初はドン引きしていた彼女も、一口食べればその美味さに陥落寸前? 異世界の住人に「今年の吉方位を向いて無言で願い事をする」という謎の風習を定着させろ! 米作りから海苔の養殖、さらにはライバル商会とのバトルまで。 チート農家と没落令嬢がタッグを組んで挑む、おいしくておかしなグルメ・サクセスストーリー、開店!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

【完結】勇者に折られた魔王のツノは、幼児の庇護者になりました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
旧タイトル:膨大な魔力と知識ありのチートだけど、転生先がツノはないよね? 異世界転生、胸躍らせる夢の展開のはず。しかし目の前で繰り広げられる勇者vs魔王の激戦に、僕は飽きていた。だって王の頭上で、魔力を供給するだけのツノが僕だ。魔王が強いからツノがあるのではなく、ツノである僕がいるから彼が最強だった。 ずっと動けない。声は誰にも聞こえない。膨大な魔力も知識チートも披露できぬまま、魔王の頭上で朽ちるのか。諦めかけていた。 勇者の聖剣が僕を折るまでは……!  動けなかったツノは、折れたことで新たな仲間と出会う。チート無双はできないが、ツノなりに幸せを掴めるのか!? いつか自力で動ける日を夢見て、僕は彼と手を組んだ。 ※基本ほのぼの、時々残酷表現あり(予告なし) 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2021/11/17 完結

処理中です...