ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人

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第6話「守るための力と新たな仲間」

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 アイカワ商会は、開店から一ヶ月も経たないうちに街で最も有名な店の一つになった。
 ハイポーションの需要はとどまるところを知らず、作っても作ってもすぐに売り切れてしまう。俺とエマは毎日、素材の採取とポーション作りに追われ、嬉しい悲鳴を上げていた。
 店の規模が大きくなるにつれて、新たな問題も出てきた。それは、チンピラやゴロツキからの嫌がらせだ。急に金持ちになった店は、いつの世も悪党の標的になりやすい。

「おい、兄ちゃん。いい商売してるじゃねえか。用心棒代、払ってもらおうか」
 ある日の閉店後、柄の悪い男たちが店に押し掛けてきた。俺はこういうことには慣れていない。どう対応すればいいか分からず、立ち尽くすしかなかった。
 エマが俺の背中に隠れて恐怖に震えている。守らなければ、と思うが、元研究者の俺に腕っぷしの強さなど期待できるはずもなかった。
 男たちが下品な笑みを浮かべて、じりじりと距離を詰めてくる。万事休すか、と思われたその時。

「お前たち、その辺にしておけ」
 店の入り口から、低く、しかしよく通る声が響いた。
 声の主は、屈強な体格をした白髪混じりの壮年の男だった。使い込まれた革鎧を身につけ、腰には長剣を差している。その佇まいからは、歴戦の強者だけが持つ独特の威圧感が放たれていた。

「な、なんだてめえは!」
 チンピラの一人がすごむが、男は全く動じない。

「俺はゴードン。この街で世話になっている者だ。若い芽を摘むような真似は、見ていられないんでな」
 ゴードンと名乗る男は、ゆっくりとチンピラたちの方へ歩を進める。その一歩一歩に、チンピラたちは気圧されて後ずさった。

「ひいっ! お、覚えてろよ!」
 結局、チンピラたちは捨て台詞を残して、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
 俺は助けてくれた男に、深々と頭を下げた。

「ありがとうございました。助かりました」

「気にするな。それより、あんたがこの店の主か? 大したもんだ。あんたのポーションのおかげで、助かった冒険者は多いと聞く」
 ゴードンは豪快に笑った。話を聞くと、彼はかつて「不動のゴードン」と呼ばれたBランクの腕利き冒険者だったらしい。数年前に引退し、今は静かに暮らしているとのことだった。

「もしよければ、俺があんたたちの護衛をしよう。用心棒代は、あのポーションで構わん」

「え、本当ですか!?」
 願ってもない申し出だった。ゴードンのようなベテランがいてくれれば、これほど心強いことはない。俺たちは彼の申し出を、ありがたく受け入れることにした。
 こうして、不動のゴードンがアイカワ商会の護衛兼アドバイザーとして仲間になった。彼の存在は絶大で、それ以来、店にちょっかいをかけてくる者はいなくなった。
 さらに、ゴードンの加入は思わぬ効果をもたらした。彼の昔の仲間たちが、彼の顔を立ててこぞってうちのポーションを買いに来てくれるようになったのだ。顧客層はさらに広がり、店の経営はますます安定していった。

『人が人を呼ぶ、か……』
 追放された時は一人ぼっちだった俺の周りに、いつの間にか信頼できる仲間が集まってくれていた。エマの明るさと、ゴードンの頼もしさ。二人がいるだけで、精神的にどれだけ救われたか分からない。

「師匠、ゴードンさん、休憩にしてください! お茶、淹れましたよ!」
 エマの明るい声が作業場に響く。

「おう、すまんな、お嬢ちゃん」
 ゴードンが人の良さそうな笑顔で応える。
 そんな穏やかな日常が、とても温かく幸せなものに感じられた。
 この幸せを守るためにも、もっと頑張らなければ。
 俺は新たな決意を胸に、新商品の開発に取り掛かることにした。ハイポーションだけでは、いずれ限界が来る。他の店には真似できない、アイカワ商会だけのオリジナル商品を作るんだ。
 幸い、俺の頭の中には前世で培った植物学の膨大な知識がある。そして、どんな素材の隠された効果も見抜く【神眼鑑定】スキルがある。
 この二つを組み合わせれば、不可能はないはずだ。

『さて、次はどんな伝説を作ってやろうか』
 作業台に並べた未知の素材たちを前に、俺は不敵な笑みを浮かべた。
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