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第10話「絶望の戦場と紅蓮の崩壊」
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戦いは、熾烈を極めた。
城壁に殺到するモンスターの波は途切れることがない。騎士や冒険者たちは、死に物狂いでそれに応戦していた。剣と魔法が交差し、怒号と悲鳴が絶え間なく響き渡る。
俺は店の窓から、その地獄のような光景を見ていた。今、この瞬間も誰かが傷つき、命を落としている。
「師匠、できました!」
エマが、新しく完成したポーションの箱を運んでくる。俺たちはそれを、城壁で戦う兵士たちのもとへ休むことなく運び続けた。
「アイカワ商会のポーションだ! これでまだ戦える!」
「うおおお! 傷が治った! 全然痛くねえ!」
俺たちのポーションは絶大な効果を発揮していた。瀕死の重傷を負った兵士が、一瞬で回復し再び戦線に復帰していく。その奇跡のような光景が、あちこちで繰り広げられていた。
【闘神の霊薬】を使った冒険者たちは普段の数倍の力を発揮し、巨大なオーガを一人で薙ぎ倒していく。
アイカワ商会のポーションがなければ、この防衛戦はとっくに崩壊していただろう。アルフォード卿の判断は、正しかったのだ。
だが、その一方で。
最も多くの冒険者を抱えるはずの「紅蓮の牙」の戦線は、見るも無惨な状況だった。
「くそっ! ポーションが効かねえ!」
「回復するどころか、気分が悪くなってきた……!」
彼らが頼りにしているのは、ギルドから支給された粗悪なポーションだけ。傷は癒えず、毒の効果で逆に体力を奪われていく。まともに戦えるはずもなかった。
次々とモンスターの餌食になり、仲間たちが倒れていく中、ダリオは顔を真っ青にして震えていた。
「な、なんでだ……! なんで、俺のギルドのポーションは効かないんだ!」
彼は未だに、自分が冒険者たちに毒を配っていたという事実を認めることができずにいた。
「それに比べて、アイカワ商会のポーションを使った奴らは、なんて強さだ……。あんなの、インチキだろ……」
ダリオは、目覚ましい活躍を見せる他の冒険者たちを、ただ妬ましげに眺めることしかできなかった。
彼の部下の一人が、深手を負いながらダリオのもとへ這ってきた。
「ダリオ様……もう、ダメです……! このままでは、我々は全滅します……!」
「う、うるさい! 黙れ!」
「お願いします……! あの男に……ケイに頭を下げてでも、ポーションを分けてもらってください! でなければ、みんな死んでしまいます!」
部下の悲痛な訴え。それは、残された「紅蓮の牙」のメンバー全員の心の声だった。
プライドか、仲間の命か。
ダリオは、ギリギリと歯を食いしばった。脳裏に、自分が追放した男の顔が浮かぶ。
ゴミ鑑定だと罵り、無能だと嘲笑った男。その男が作ったポーションだけが、この地獄のような戦場で唯一の希望の光となっている。
その男に、助けを乞う? この俺が?
冗談じゃない。そんな屈辱、耐えられるはずがない。
だが、彼の耳に次々と仲間たちの断末魔が飛び込んでくる。かつて自分を慕い、ついてきてくれた者たちが、犬死にしていく。
その光景が、ついにダリオの鋼鉄のプライドを粉々に打ち砕いた。
「……ああ……」
彼の膝が、ガクンと折れた。
「俺が……俺が、間違っていたのか……?」
初めて、自分の過ちを認めた瞬間だった。しかし、それはあまりにも多くの犠牲を払った後での、遅すぎた後悔だった。
戦況は、もはや絶望的だった。モンスターの群れはついに城壁の一部を突破し、街の中へとなだれ込んできた。市民たちの悲鳴が、あちこちから上がり始める。
このままでは、街が陥落するのも時間の問題だ。
誰もが、死を覚悟した。
その、まさにその時だった。
ひときわ大きな地響きと共に、モンスターの群れの背後で巨大な爆発が起こった。
城壁に殺到するモンスターの波は途切れることがない。騎士や冒険者たちは、死に物狂いでそれに応戦していた。剣と魔法が交差し、怒号と悲鳴が絶え間なく響き渡る。
俺は店の窓から、その地獄のような光景を見ていた。今、この瞬間も誰かが傷つき、命を落としている。
「師匠、できました!」
エマが、新しく完成したポーションの箱を運んでくる。俺たちはそれを、城壁で戦う兵士たちのもとへ休むことなく運び続けた。
「アイカワ商会のポーションだ! これでまだ戦える!」
「うおおお! 傷が治った! 全然痛くねえ!」
俺たちのポーションは絶大な効果を発揮していた。瀕死の重傷を負った兵士が、一瞬で回復し再び戦線に復帰していく。その奇跡のような光景が、あちこちで繰り広げられていた。
【闘神の霊薬】を使った冒険者たちは普段の数倍の力を発揮し、巨大なオーガを一人で薙ぎ倒していく。
アイカワ商会のポーションがなければ、この防衛戦はとっくに崩壊していただろう。アルフォード卿の判断は、正しかったのだ。
だが、その一方で。
最も多くの冒険者を抱えるはずの「紅蓮の牙」の戦線は、見るも無惨な状況だった。
「くそっ! ポーションが効かねえ!」
「回復するどころか、気分が悪くなってきた……!」
彼らが頼りにしているのは、ギルドから支給された粗悪なポーションだけ。傷は癒えず、毒の効果で逆に体力を奪われていく。まともに戦えるはずもなかった。
次々とモンスターの餌食になり、仲間たちが倒れていく中、ダリオは顔を真っ青にして震えていた。
「な、なんでだ……! なんで、俺のギルドのポーションは効かないんだ!」
彼は未だに、自分が冒険者たちに毒を配っていたという事実を認めることができずにいた。
「それに比べて、アイカワ商会のポーションを使った奴らは、なんて強さだ……。あんなの、インチキだろ……」
ダリオは、目覚ましい活躍を見せる他の冒険者たちを、ただ妬ましげに眺めることしかできなかった。
彼の部下の一人が、深手を負いながらダリオのもとへ這ってきた。
「ダリオ様……もう、ダメです……! このままでは、我々は全滅します……!」
「う、うるさい! 黙れ!」
「お願いします……! あの男に……ケイに頭を下げてでも、ポーションを分けてもらってください! でなければ、みんな死んでしまいます!」
部下の悲痛な訴え。それは、残された「紅蓮の牙」のメンバー全員の心の声だった。
プライドか、仲間の命か。
ダリオは、ギリギリと歯を食いしばった。脳裏に、自分が追放した男の顔が浮かぶ。
ゴミ鑑定だと罵り、無能だと嘲笑った男。その男が作ったポーションだけが、この地獄のような戦場で唯一の希望の光となっている。
その男に、助けを乞う? この俺が?
冗談じゃない。そんな屈辱、耐えられるはずがない。
だが、彼の耳に次々と仲間たちの断末魔が飛び込んでくる。かつて自分を慕い、ついてきてくれた者たちが、犬死にしていく。
その光景が、ついにダリオの鋼鉄のプライドを粉々に打ち砕いた。
「……ああ……」
彼の膝が、ガクンと折れた。
「俺が……俺が、間違っていたのか……?」
初めて、自分の過ちを認めた瞬間だった。しかし、それはあまりにも多くの犠牲を払った後での、遅すぎた後悔だった。
戦況は、もはや絶望的だった。モンスターの群れはついに城壁の一部を突破し、街の中へとなだれ込んできた。市民たちの悲鳴が、あちこちから上がり始める。
このままでは、街が陥落するのも時間の問題だ。
誰もが、死を覚悟した。
その、まさにその時だった。
ひときわ大きな地響きと共に、モンスターの群れの背後で巨大な爆発が起こった。
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