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第5章:後悔の魔導士
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辺境の街ルーンで生まれた小さな噂は、風に乗って王都にまで届いていた。
「伝説の鑑定士が、呪いのアイテムを浄化し、ガラクタを魔法の武具に変えている」
その噂を耳にした一人の女性が、長い旅の末に『物語の揺りかかご』のドアを開けた。
「……アルト」
そこに立っていたのは、見間違えるはずもない、元パーティーメンバーの天才魔導士、セレスティア・ヴァイスだった。最後に見た時よりも少し痩せたように見える彼女は、息を切らしながら、俺の名前を呼んだ。
俺の心臓が、どきりと音を立てる。追放された時の記憶が蘇り、思わず身構えてしまった。
そんな俺の様子に気づいたのか、セレスティアは悲しげに瞳を揺らし、次の瞬間、その場に崩れるように膝をついた。
「ごめんなさい……!アルト、本当に、ごめんなさい……!」
彼女は美しい顔をくしゃくしゃに歪め、涙を流しながら頭を下げた。それは、俺が知るクールビューティーな彼女からは想像もつかない姿だった。
「あの時、私はあなたを助けることができなかった。ガイウスの横暴を、ただ見ていることしかできなかった。……あなたがどれだけパーティーに貢献していたか、私だけは気づいていたのに。本当に、申し訳ないことをしたわ」
セレスティアの言葉は、心からのものだと分かった。追放されたあの日、彼女だけが浮かべていた苦しそうな表情の意味を、今になって理解する。
俺は彼女の前にしゃがみこみ、「もういいんだ、セレスティア」と静かに告げた。
「君が気に病むことじゃない。それに、俺は今、ここで元気にやってる」
「でも……!」
「それに、追放されたおかげで、俺はこの力の本当の使い方が分かったんだ。だから、今は感謝してるくらいさ」
俺が微笑みかけると、セレスティアはさらに涙をこぼした。
彼女は、俺が追放された後の「太陽の槍」の惨状を語ってくれた。俺がいなくなったことで、ダンジョン内の隠された罠を回避できなくなり、呪いのアイテムに手を出してはメンバーが負傷する。価値のある遺物(アーティファクト)とガラクタの区別もつかず、攻略効率は地に落ちた。ガイウスは苛立ちを募らせ、パーティー内の雰囲気は最悪。かつてのSランクの栄光は見る影もなく、世間の評価は下がる一方だという。
「私はもう、あのパーティーにはいられない。……もし、迷惑でなければ、私もここで、あなたを手伝わせてはもらえないかしら?」
セレスティアは、決意を秘めた瞳で俺を見つめた。彼女ほどの魔導士が、こんな辺境の骨董品店にいる必要はない。だが、彼女の贖罪の気持ちと、俺の力を純粋に評価してくれる心が、痛いほど伝わってきた。
俺は頷いた。
「ようこそ、『物語の揺りかご』へ。人手はいつでも大歓迎だよ」
こうして俺の店に、二人目の仲間が加わった。賑やかになるのは、少しだけ、悪くない。
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「ごめんなさい……!アルト、本当に、ごめんなさい……!」
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「でも……!」
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