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第11章:独立宣言と女王の誕生
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レオンとセシリアという二人の頼もしい仲間を得て、「緑の谷」はもはや単なる開拓地ではなく、組織化された共同体としての機能を完璧に備えつつあった。軍事、内政、経済、その全てが、リーゼリットという太陽を中心に、それぞれの惑星のように的確に機能し始めていた。
しかし、アルカディア王国からの圧力は、弱まるどころか、むしろ増していった。交易路の封鎖は続き、魔物の質と量は、明らかに谷を滅ぼすという明確な殺意を持って送り込まれてきている。
ある嵐の夜、リーゼリットは谷の指導者たち――カイル、ジョージ爺さん、レオン、セシリア、そして住民の代表者たち――を、新しく建てられた集会所に集めた。
「皆さん、集まってくれてありがとう。今宵、私は皆さんに、一つの重大な決意を伝えたいと思います」
リーゼリットの声は、静かだったが、集会所の隅々まで響き渡る力強さを持っていた。彼女は、集まった全員の顔を一人一人見つめながら、言葉を続けた。
「ご存じの通り、私たちは今、アルカディア王国からの不当な弾圧を受けています。彼らは、私たちが築き上げてきたこの平和と豊かさを、力ずくで奪い取ろうとしている。このままでは、私たちはいつか、彼らの欲望の前に屈することになるでしょう」
集会所は、水を打ったように静まり返った。誰もが、リーゼリットの次の言葉を固唾をのんで待っている。
「私は、もう彼らの言いなりになるのはごめんです。奪われるだけの存在でいるのは、もう終わりにする。私たちは、自分たちの運命を、自分たちの手で切り拓くべきです」
リーゼリットは、そこで一度言葉を切り、深く息を吸い込んだ。そして、高らかに宣言した。
「本日をもって、私たちはアルカディア王国からの独立を宣言します! そして、この『緑の谷』を国土とする、新たな独立国家『テラ・ノヴァ』の建国を、ここに誓います!」
その瞬間、集会所は爆発的な歓声に包まれた。「うおおおお!」「テラ・ノヴァ、万歳!」「リーゼリット女王、万歳!」
住民たちは、涙を流しながら抱き合い、自分たちの国の誕生を喜んだ。彼らは、追放された令嬢に導かれ、荒れ地を開拓し、幾多の困難を乗り越えてきた。その努力が、今、一つの国家として結実したのだ。その感動は、何物にも代えがたいものだった。
リーゼリットは、民の歓声に、女王として応えた。
「国の名は『テラ・ノヴァ』。古の言葉で、大地と豊穣の女神『テラ』と、新しいという意味を持つ『ノヴァ』を合わせました。この地が、永遠に豊かで、新しい希望に満ちた場所であるようにとの願いを込めて」
彼女は、セシリアがデザインした国旗を広げて見せた。それは、緑豊かな大地から、黄金の太陽が昇る様を描いた旗だった。
「私が、この国の初代女王、リーゼリット・フォン・テラ・ノヴァです。そして、ここにいる皆が、この国の建国を支えた、誇り高き国民です」
こうして、歴史的な一夜は明けた。
翌日から、「テラ・ノヴァ」は国家としての体制を急ピッチで整え始めた。
女王はもちろん、リーゼリット。
軍事の全てを統括する軍事総司令官には、レオン・ハートが就任した。彼の元、谷の防衛隊は正式な国軍として再編成された。
国の法律、経済、外交といった内政の全てを取り仕切る内政担当大臣(宰相)には、セシリア・ローズが就任。彼女は早速、国家の基本となる憲法の草案作りに取り掛かった。
そして、女王の側近であり、国軍の最高指揮官の一人である親衛隊長には、カイル・ウッドが任命された。彼は、リーゼリットが最も信頼する男であり、国民からの人望も厚い。
農業顧問には、もちろんジョージ爺さん。そして、女王付きの秘書官として、聡明に育ったエルザが抜擢された。
しかし、独立宣言は、アルカディア王国に対する明確な宣戦布告を意味していた。案の定、「テラ・ノヴァ」建国の知らせは、王都に大きな衝撃と怒りをもたらした。
「反逆者め……! あの女、国を乗っ取るつもりか!」
エドワード王子は、報告を聞いて激昂した。リリアーナは、その隣で「やはり、私の思った通りでしたわ」と悲劇のヒロインを演じながら、内心ではほくそ笑んでいた。これで、リーゼリットを反逆者として公に討伐する大義名分ができたのだから。
「全軍に通達! ただちに反乱軍『テラ・ノヴァ』を鎮圧せよ! 首謀者リーゼリットを生け捕りにするのだ!」
王国の総力を挙げた討伐軍が、刻一刻と「テラ・ノヴァ」に迫りつつあった。女王リーゼリットは、自ら鎧をまとい、民の前に立つ。
「国民の皆さん、恐れることはありません。私たちは、自分たちの国を守るために戦うのです。この戦いは、我々の未来をかけた、聖なる戦いです!」
女王の言葉に、国民は雄叫びで応えた。新生国家「テラ・ノヴァ」の、存亡をかけた最初の戦いが、今、始まろうとしていた。
しかし、アルカディア王国からの圧力は、弱まるどころか、むしろ増していった。交易路の封鎖は続き、魔物の質と量は、明らかに谷を滅ぼすという明確な殺意を持って送り込まれてきている。
ある嵐の夜、リーゼリットは谷の指導者たち――カイル、ジョージ爺さん、レオン、セシリア、そして住民の代表者たち――を、新しく建てられた集会所に集めた。
「皆さん、集まってくれてありがとう。今宵、私は皆さんに、一つの重大な決意を伝えたいと思います」
リーゼリットの声は、静かだったが、集会所の隅々まで響き渡る力強さを持っていた。彼女は、集まった全員の顔を一人一人見つめながら、言葉を続けた。
「ご存じの通り、私たちは今、アルカディア王国からの不当な弾圧を受けています。彼らは、私たちが築き上げてきたこの平和と豊かさを、力ずくで奪い取ろうとしている。このままでは、私たちはいつか、彼らの欲望の前に屈することになるでしょう」
集会所は、水を打ったように静まり返った。誰もが、リーゼリットの次の言葉を固唾をのんで待っている。
「私は、もう彼らの言いなりになるのはごめんです。奪われるだけの存在でいるのは、もう終わりにする。私たちは、自分たちの運命を、自分たちの手で切り拓くべきです」
リーゼリットは、そこで一度言葉を切り、深く息を吸い込んだ。そして、高らかに宣言した。
「本日をもって、私たちはアルカディア王国からの独立を宣言します! そして、この『緑の谷』を国土とする、新たな独立国家『テラ・ノヴァ』の建国を、ここに誓います!」
その瞬間、集会所は爆発的な歓声に包まれた。「うおおおお!」「テラ・ノヴァ、万歳!」「リーゼリット女王、万歳!」
住民たちは、涙を流しながら抱き合い、自分たちの国の誕生を喜んだ。彼らは、追放された令嬢に導かれ、荒れ地を開拓し、幾多の困難を乗り越えてきた。その努力が、今、一つの国家として結実したのだ。その感動は、何物にも代えがたいものだった。
リーゼリットは、民の歓声に、女王として応えた。
「国の名は『テラ・ノヴァ』。古の言葉で、大地と豊穣の女神『テラ』と、新しいという意味を持つ『ノヴァ』を合わせました。この地が、永遠に豊かで、新しい希望に満ちた場所であるようにとの願いを込めて」
彼女は、セシリアがデザインした国旗を広げて見せた。それは、緑豊かな大地から、黄金の太陽が昇る様を描いた旗だった。
「私が、この国の初代女王、リーゼリット・フォン・テラ・ノヴァです。そして、ここにいる皆が、この国の建国を支えた、誇り高き国民です」
こうして、歴史的な一夜は明けた。
翌日から、「テラ・ノヴァ」は国家としての体制を急ピッチで整え始めた。
女王はもちろん、リーゼリット。
軍事の全てを統括する軍事総司令官には、レオン・ハートが就任した。彼の元、谷の防衛隊は正式な国軍として再編成された。
国の法律、経済、外交といった内政の全てを取り仕切る内政担当大臣(宰相)には、セシリア・ローズが就任。彼女は早速、国家の基本となる憲法の草案作りに取り掛かった。
そして、女王の側近であり、国軍の最高指揮官の一人である親衛隊長には、カイル・ウッドが任命された。彼は、リーゼリットが最も信頼する男であり、国民からの人望も厚い。
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しかし、独立宣言は、アルカディア王国に対する明確な宣戦布告を意味していた。案の定、「テラ・ノヴァ」建国の知らせは、王都に大きな衝撃と怒りをもたらした。
「反逆者め……! あの女、国を乗っ取るつもりか!」
エドワード王子は、報告を聞いて激昂した。リリアーナは、その隣で「やはり、私の思った通りでしたわ」と悲劇のヒロインを演じながら、内心ではほくそ笑んでいた。これで、リーゼリットを反逆者として公に討伐する大義名分ができたのだから。
「全軍に通達! ただちに反乱軍『テラ・ノヴァ』を鎮圧せよ! 首謀者リーゼリットを生け捕りにするのだ!」
王国の総力を挙げた討伐軍が、刻一刻と「テラ・ノヴァ」に迫りつつあった。女王リーゼリットは、自ら鎧をまとい、民の前に立つ。
「国民の皆さん、恐れることはありません。私たちは、自分たちの国を守るために戦うのです。この戦いは、我々の未来をかけた、聖なる戦いです!」
女王の言葉に、国民は雄叫びで応えた。新生国家「テラ・ノヴァ」の、存亡をかけた最初の戦いが、今、始まろうとしていた。
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