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第2話『荒れ地に奇跡を!魔法農業、始めます』
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「さて、と。まずは開墾からね!」
追放から数日。私は護衛たちが残してくれた粗末な小屋を拠点に、壮大な農業計画へ、第一歩を踏み出した。
まずは生活基盤の確保。そのために、この世界の便利なもの、『魔法』を使わない手はない。
私は深呼吸をすると、両手を地面にかざした。
「いでよ、土のしもべ(アース・サーバント)!」
もこもこと地面が盛り上がり、私の背丈ほどの土人形――ゴーレムが姿を現す。
公爵家にいた頃、家庭教師に「淑女の嗜みですわ」と教えられた生活魔法の一つだ。お茶を淹れたり部屋を掃除したりする魔法らしいが、応用すればこんなこともできる。
「あなたたち、そこの岩をどかして、あっちの雑草を全部抜いてちょうだい!」
ゴーレムたちは無言でうなずくと、ごとり、ごとりと働き始めた。人力なら数か月はかかる作業が、数日で終わりそうだ。これが異世界ファンタジーの素晴らしいところ!
開墾と並行して、私は小屋の周りに小さな家庭菜園を作ることにした。持ってきた荷物の中に、こっそり隠しておいた数種類の野菜の種。まずは、育ちが早くて栄養価の高いジャガイモと、どんな料理にも使える万能野菜、カブだ。
「美味しくなあれ、ってね」
前世の知識を総動員し、畝を作り、堆肥を混ぜ込む。水やりは、近くの川から水路を引くまでの間、水魔法(ウォーター)で済ませる。
「ああ、楽しい……! 土をいじるって、なんて幸せなのかしら!」
泥だらけになるのも厭わず、私は夢中で畑仕事に没頭した。宮殿でのきらびやかな生活より、何百倍も充実している。
一月も経つ頃には、荒れ地は見違えるような姿になっていた。ゴーレムたちのおかげで畑は広がり、私が植えたジャガイモやカブは、青々とした葉を茂らせている。
そんなある日、谷の麓にある小さな村から、村長らしき老人が訪ねてきた。
「あ、あの……『谷の魔女様』にお願いが……」
どうやら私は、ゴーレムを使役しているところを見られ、『谷の魔女』などと呼ばれているらしい。悪役令嬢よりはマシかしら。
話を聞くと、村は長引く日照りで不作が続き、蓄えも底をつきかけているという。子供たちがお腹を空かせていると聞き、私は黙っていられなかった。
「わかりました。私の畑のものを、お分けしますわ」
「えっ、しかし、魔女様の畑も……」
村長は遠慮したが、私は彼を自分の畑に案内した。
「「「なっ……!?」」」
村長と、一緒に来ていた村人たちが息を呑むのがわかった。
彼らの目の前には、こぶし大のジャガイモがゴロゴロと実り、赤ん坊の頭ほどもある見事なカブがずらりと並んでいたからだ。
「こんな……こんな見事な作物は見たことがない……!」
「これを、本当に我々に?」
「ええ、どうぞ。その代わり、少し手伝ってほしいことがあるの」
私はにっこり笑った。私の計画には、人手がいくらあっても足りないのだから。
これが、私と辺境の村との交流の始まりだった。
村人たちは収穫を手伝ってくれる代わりに、私の作った野菜をもらっていく。飢えから解放された彼らは、みるみる元気を取り戻した。
さらに、私は彼らに『科学と魔法のハイブリッド農法』を教えた。土壌分析で足りない栄養素を割り出し、それを補う魔法を使う。病害虫は、特定の周波数の音波を出す魔法具で寄せ付けない。品種改良には、成長をわずかに早める時間魔法を応用する。
前世の知識とこの世界の魔法は、最高の相性だった。
村人たちは最初こそ半信半疑だったが、自分たちの畑でも作物が育ち始めると、私を『魔女様』から『女神様』と呼ぶようになった。
「リネット様のおかげだ!」
「もう飢える心配はねえ!」
活気を取り戻した村を見て、私は心からの満足感を覚えていた。誰かに感謝される農業というのも、悪くない。
私のささやかな農業革命は、この最果ての地で、静かに、しかし確かな実を結び始めていた。
追放から数日。私は護衛たちが残してくれた粗末な小屋を拠点に、壮大な農業計画へ、第一歩を踏み出した。
まずは生活基盤の確保。そのために、この世界の便利なもの、『魔法』を使わない手はない。
私は深呼吸をすると、両手を地面にかざした。
「いでよ、土のしもべ(アース・サーバント)!」
もこもこと地面が盛り上がり、私の背丈ほどの土人形――ゴーレムが姿を現す。
公爵家にいた頃、家庭教師に「淑女の嗜みですわ」と教えられた生活魔法の一つだ。お茶を淹れたり部屋を掃除したりする魔法らしいが、応用すればこんなこともできる。
「あなたたち、そこの岩をどかして、あっちの雑草を全部抜いてちょうだい!」
ゴーレムたちは無言でうなずくと、ごとり、ごとりと働き始めた。人力なら数か月はかかる作業が、数日で終わりそうだ。これが異世界ファンタジーの素晴らしいところ!
開墾と並行して、私は小屋の周りに小さな家庭菜園を作ることにした。持ってきた荷物の中に、こっそり隠しておいた数種類の野菜の種。まずは、育ちが早くて栄養価の高いジャガイモと、どんな料理にも使える万能野菜、カブだ。
「美味しくなあれ、ってね」
前世の知識を総動員し、畝を作り、堆肥を混ぜ込む。水やりは、近くの川から水路を引くまでの間、水魔法(ウォーター)で済ませる。
「ああ、楽しい……! 土をいじるって、なんて幸せなのかしら!」
泥だらけになるのも厭わず、私は夢中で畑仕事に没頭した。宮殿でのきらびやかな生活より、何百倍も充実している。
一月も経つ頃には、荒れ地は見違えるような姿になっていた。ゴーレムたちのおかげで畑は広がり、私が植えたジャガイモやカブは、青々とした葉を茂らせている。
そんなある日、谷の麓にある小さな村から、村長らしき老人が訪ねてきた。
「あ、あの……『谷の魔女様』にお願いが……」
どうやら私は、ゴーレムを使役しているところを見られ、『谷の魔女』などと呼ばれているらしい。悪役令嬢よりはマシかしら。
話を聞くと、村は長引く日照りで不作が続き、蓄えも底をつきかけているという。子供たちがお腹を空かせていると聞き、私は黙っていられなかった。
「わかりました。私の畑のものを、お分けしますわ」
「えっ、しかし、魔女様の畑も……」
村長は遠慮したが、私は彼を自分の畑に案内した。
「「「なっ……!?」」」
村長と、一緒に来ていた村人たちが息を呑むのがわかった。
彼らの目の前には、こぶし大のジャガイモがゴロゴロと実り、赤ん坊の頭ほどもある見事なカブがずらりと並んでいたからだ。
「こんな……こんな見事な作物は見たことがない……!」
「これを、本当に我々に?」
「ええ、どうぞ。その代わり、少し手伝ってほしいことがあるの」
私はにっこり笑った。私の計画には、人手がいくらあっても足りないのだから。
これが、私と辺境の村との交流の始まりだった。
村人たちは収穫を手伝ってくれる代わりに、私の作った野菜をもらっていく。飢えから解放された彼らは、みるみる元気を取り戻した。
さらに、私は彼らに『科学と魔法のハイブリッド農法』を教えた。土壌分析で足りない栄養素を割り出し、それを補う魔法を使う。病害虫は、特定の周波数の音波を出す魔法具で寄せ付けない。品種改良には、成長をわずかに早める時間魔法を応用する。
前世の知識とこの世界の魔法は、最高の相性だった。
村人たちは最初こそ半信半疑だったが、自分たちの畑でも作物が育ち始めると、私を『魔女様』から『女神様』と呼ぶようになった。
「リネット様のおかげだ!」
「もう飢える心配はねえ!」
活気を取り戻した村を見て、私は心からの満足感を覚えていた。誰かに感謝される農業というのも、悪くない。
私のささやかな農業革命は、この最果ての地で、静かに、しかし確かな実を結び始めていた。
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