『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
60 / 327
全年齢対応・表現マイルドバージョン

第59話 泥濘の中で(サブリーダー視点)

しおりを挟む
 

『城野敦』。生理的嫌悪が湧き上がる最低男だ。
 虫唾が走るとはこういう気持ちを言うのだろう。
 だけど・・・。

 サブリーダーの心は軽やかにステップを踏んでいた。
 一葉を、あの女を泥沼に沈めてあげられる。
 そのためのネタを手に入れられる。

 リーダーも文句はないだろう。
 なぜなら、一葉自身が悪いと言い切れるものではないからだ。

 もっと悪い奴がいる。
 一葉は被害者でもあった。

 そこに同情するそぶりを見せていれば反発はない。
 理想的だ。
 責め過ぎず、だけど許さず。

 ジワジワ追い詰める。
 濁らせ、曇らせ、輝きを奪う。
 二度と浮かび上がれない、沼の泥底へ沈めてあげよう。

「あの女は、ヘドロまみれで生きるのがお似合いよ!」

 狂喜するサブリーダーの手の中。
 無限再生される動画がある。

 一葉の造る『エリクサー』が、裏取引されている。
 そのことを話している人物たちを捉えたものだ。

 一葉本人が、一部教師に諭され、時に脅されて、従っている。
『エリクサー』の校内での流通相場を操作していた。

 適正価格のおよそ10倍という高値を設定。
 誰も買えなくしたうえで、他校へと売り捌く。

 そんな企み。
 そんな裏切り。

 犯罪とは言えないだろう。
『ダンジョン内で手に入るアイテム』または『スキルが無いと作成できない物品』に『独占禁止法』も『消費者保護法』も関知しない。
 取引の形態は、作成者の自由意思に委ねられている。
 だから、犯罪にはならない。

 でも、間違いようもなく酷い裏切り行為だ。
 モノが、『命』を左右する『エリクサー』であることが、何より罪深い。

「ふふ、ふふふふっ・・・・・あはっ・・・・ひゃはははははっ!」
 サブリーダーは毛布を顔に当てて笑い続けた。

 テントの布一枚隔てた場所に、靴跡が付いたことにも気づかずに。

   ◇

 サブリーダーは、すぐに動いた。
『デートOK』の返信。
 ただし、できるだけ早く済ませてとの注文はつけている。

「デートはしてあげてもいいけど、キスまでね。それ以上はキャパいからムリ。雰囲気だけで満足させてさっさと帰ってくるわよ!」
 鏡の前で気合を入れた。

 服装はどうにもならない。
 髪型とメイク、あとは仕草で何とか雰囲気を作らないと!
 完璧じゃなくていい。『それっぽく』見えれば、男なんて勝手に夢を見る。

 「相手はどうせ『初めての人』。ちょっと媚びた仕草してやれば、勝手に自爆するわよ」
 自分の言葉に、鏡に映った自分が頷いてくれる。
 うまくやれる気がした。


 返信はすぐに来た。
 まさに秒で。

 後詰って暇なのかしら?
 ふと、思ったがどうでも良すぎてすぐに思考から消えていた。

 デートの場所は意外に近くだった。
 遠くては困るからありがたいけれど。
 
 あまり時間もない。
 一時間くらい後には『最奥』へ向けて進むことになる。
 そこからさらに二時間もすれば『最奥』だ。
 早く『証拠』を手に入れたい。

 通路を63階層へと戻る方向へ移動。
 数回通路を曲がれば到着だ。

 「あ、ほんとにきた」
 「あ—あ、マジかぁ」
 声が上がる。
 女子が数名いるらしい。
 
 薄暗いのもあるが、『誰』なのかは特定できなかった。
 興味のある男子以外の顔を覚えるのが苦手なのだ。

 人の顔なんて、記号だと思う。
 名前書いた布でも下げておけばいいのに!
 
 そんなわけで、サブリーダーは『女子数人が見ている』という状況を受け入れた。
 むしろ、強引に事を進められる心配が減ったと安心する・・・ことにする。

 「やぁ、僕のお姫様!」
 『部屋』の真ん中で男子が手を広げて待っていた。
 『これ』が『城野敦』だろう。

 「あら、お姫様だなんて!」
 はにかんだような、浮ついた声を上げた。
 距離を詰めることで、心の隙間を探る。

 先手必勝。
 序盤で一気に間合いを詰めて、畳み掛ける。
 それが最善!

 彼の笑顔の奥に、どこか違和感があった。
 それは、彼女の毒に気づいたのか、それとも、別の毒を隠しているのか。

 どちらであれ、イニシアチブを握っているのは自分。
 最終的な勝者が自分であることは揺るがない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】結界守護者の憂鬱なあやかし幻境譚 ~平凡な男子高校生、今日から結界を繕います~

御崎菟翔
キャラ文芸
​【平凡な高校生 × 妖従者たちが紡ぐ、絆と成長の主従現代和風ファンタジー!】 ★第9回キャラ文芸大賞エントリー中! 「選ぶのはお前だ」 ――そう言われても、もう引き返せない。 ​ごく普通の高校生・奏太(そうた)は、夏休みのある日、本家から奇妙な呼び出しを受ける。 そこで待っていたのは、人の言葉を話す蝶・汐(うしお)と、大鷲・亘(わたり)。 彼らに告げられたのは、人界と異界を隔てる結界を修復する「守り手」という、一族に伝わる秘密の役目だった。 ​「嫌なら断ってもいい」と言われたものの、放置すれば友人が、家族が、町が危険に晒される。 なし崩し的に役目を引き受けた奏太は、夜な夜な大鷲の背に乗り、廃校や心霊スポットへ「出勤」することに! ​小生意気な妖たちに絡まれ、毒を吐く蛙と戦い、ついには異世界「妖界」での政変にまで巻き込まれていく奏太。 その過程で彼は、一族が隠し続けてきた「残酷な真実」と、従姉・結(ゆい)の悲しい運命を知ることになる―― ​これは、後に「秩序の神」と呼ばれる青年が、まだ「ただの人間」だった頃の、始まりの物語。 ​★新作『蜻蛉商会のヒトガミ様』 この物語から300年後……神様になった奏太の物語も公開中! https://www.alphapolis.co.jp/novel/174241108/158016858

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

処理中です...