『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
118 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第1話 前提となる話 ~役立たずの胎動~

しおりを挟む
 

 二十年前のことだ。
 この世界に、突如として『ダンジョン』が現れた。
 誰もが物語の中だけの存在だと思っていたそれが、現実に姿を現した瞬間だった。

 しかも、一つや二つではない。
 世界中に、無数に。
 日本だけでも、一つの県に最低二つ。
 まるで、世界そのものが『物語』に侵食されていくように。

 当局は調査を試みた。
 いや、正確には「試みようとした」が正しい。
 結局、誰一人として中に入れなかった。
 大人たちは、拒絶されたのだ。

 だが、どこにでも無鉄砲な者はいる。
『ダンジョン』と聞いて、血が騒いだゲーム脳の少年が一人、勝手に足を踏み入れた。
 当時十四歳の日本人だった。

 彼が、停滞を破壊した。
 スマホを持ち込み、実況しながら進むという方法で。
 世界はその配信に釘付けになった。
 再生数は億を超え、少年は興奮のまま最奥を目指した。

 そして、燃えた。
 ボスの魔法に包まれ、皮膚が泡立ち、骨が露出し、声にならない悲鳴を上げながら、炭と化した。
 世界中が、彼が生きたまま焼かれ、『人間』から『物』へと変わる様を、ただ見ていた。

 その後、慎重な調査が行われた。
『ダンジョン』には、十五歳以下の者しか入れないと判明した。
 鉱山のカナリアのように、少年少女が送り込まれた。
 止める声はあった。
 だが、届かなかった。
 誰も、耳を貸さなかった。

 入れると分かれば、探索は義務となる。
 カメラや探査機器を背負い、銃器を持った子供たちが次々と潜っていく。
 各国は、情報の秘匿を防ぐため、配信を義務化した。
 人々は、子供たちが死ぬ様を、娯楽として消費した。

 ただ、銃器は役に立たなかった。
 火薬も、科学兵器も無力だった。
 子供たちは、カメラの前で切り裂かれ、喰われた。
 内臓を引きずり出され、頭蓋を砕かれ、絶叫と共に画面が赤く染まった。

 ならばと、旧時代の武器──刀剣、斧、ナイフ。
 それを手にした子供たちが、再び挑んだ。
 途中までは進めた。
 だが、魔法を使う敵の前では、ただの肉塊だった。

 何百という死の果てに、初めて帰還者が現れた。
 またしても、日本だった。

 ゲームで鍛えられた子供たちが、レベルアップとスキルの存在を確認した。
 科学では説明できない『力』を、彼らは手に入れた。

「ダンジョンはダンジョンさ。だんじょんなんだじょん」
 最初に帰還した三人のリーダーが、そう言った。
 それは、現実が物語に追いついた瞬間だった。

 子供たちは夢を見た。
 魔法を使い、金を稼ぎ、モテる。
 異世界転生のような願望が、現実になったのだ。

 だが、夢には代償がある。
 スタンピート──魔物の暴走。
『ダンジョン』から溢れ出た魔物が、町を焼いた。

 外では科学兵器が通用した。
 だが、全てのダンジョンに軍を常駐させることはできない。
 だから、未然に防ぐしかなかった。
 子供たちの突撃は、『正義』として制度化された。

 人々は、子供たちが死ぬ様を、日常として受け入れた。
 いや、楽しんだ。

 最初は、好奇心だった。
「本当に魔法があるのか?」「どんな敵が出るのか?」「どこまで行けるのか?」

 だが、すぐに気づいた。
『死』こそが、最も再生数を稼ぐコンテンツだと。

 悲鳴、絶叫、断末魔。
 血飛沫がレンズに飛び、画面が真っ赤に染まる。
 その瞬間、コメント欄は爆発した。
「うわあああ!」「マジかよ!」「神回きた!」
『死』は、エンタメになった。

 企業は動いた。
 配信プラットフォームは、ダンジョン専用チャンネルを開設。
 広告枠は高騰し、スポンサーが殺到した。
『死の瞬間』に流れるCMは、最も高額な枠として競り落とされた。

 グッズも売れた。
 人気の探索者のフィギュア、Tシャツ、ボイス付き目覚まし時計。
 死んだ子供の『最後のセリフ』が、商品化された。

「やばい、これ死ぬかも」「ママ、ごめん」「助けて、誰か・・・」


 それらは、『名言』として切り抜かれ、拡散され、笑いのネタになった。

 やがて、番組はフォーマット化された。
「今週の新人探索者!」「今夜のボス戦は、どっちが生き残る!?」
 視聴者投票で『生贄』が決まる企画も生まれた。

 倫理は、最初から存在しなかった。
『子供たちの死』は、国家の資源であり、企業の金脈であり、大衆の娯楽だった。

 それが、世界の前提。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...