『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第12話 レイド主力メンバーの動き~経験値ゼロの英雄たち~ ③

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「狼狽えるな!」

 リーダーが声をかけた。
 その声は、冷たく、乾いていた。

「ダンジョンでの意図しない殺傷は、『事故』だ。罪に問われることはない!」

『死』は、ただの数字。
『仲間』は、ただの戦力。
 それが、探索者の現実だった。”

 蘇生は・・・できなかった。
 『エリクサー』は貴重だ。
 
 校内で作り出せるのは高位ヒーラーにして薬師の『岩清水一葉』だけ。
 作成に必要なアイテムや魔力も尋常なものではない。
 数本しかないと言われているし、保管は一葉自身だけが行っている。

 『先駆け』を担う彼等にさえ、譲られてはいないのだ。
 実は、校外に高値で売り払われていたりするのだが、校内でそれを知っている者は片手で数える程度しかいない。

 「それよりも、見ろ!」
 リーダーが指さしたのは、三度の火魔法ではびくともしなかった『ミヤマクワガタ』が、無残に潰れている様だった。

 「昨日は火で一撃だった。今日は三発でも倒れない。これは、属性が反転している可能性がある。この先、敵は全て初見のつもりで対応しろ!」
 彼等は無能な輩ではない。
 事実を受け止め、対応策を考える頭があった。
 即座に状況を理解して対応して見せる。

 それは、昨日までのデータを捨てて、改めてデータを取り直すということである。
 すでに踏破したはずの階層ではなくなり、初めて通る階層を進むことになる。
 
 昨日までの自信が、今日の迷宮に拒まれた。
 それだけで、彼らの足取りは重くなった。
 まるで、迷宮が彼らの罪を数えているかのように。

 昨日の足跡が、今日の罠になっていた。
 迷宮は、彼らの罪を忘れていなかった。
 それは、カルマの沈黙から響く、ダンジョンの声だった。

 真っ青な顔の女メイジBを支えるように囲んで、7人に減ったパーティが進む。
 その頭上を『トンボ』が、静かに旋回していた。
 誰の背中を狙っているのかは、まだ誰も知らない。
  
 ◇観察者視点◇

「やれやれ、ゴミのポイ捨てはよくないよ?」

 ウィンドウ越しに一連の騒ぎを見ていたカルマは、 口元に笑みを浮かべながら首を振った。 その目は、どこか楽しげで、どこか壊れていた。

「そう思うだろ?」

 掌をゆっくりと開く。
 そこには、無数の蟲が蠢いていた。

 脚が絡み合い、羽が震え、顎がカチカチと鳴っている。
 黒光りする甲殻が、カルマの手のひらを這い回るたびに、皮膚の上に赤い線が刻まれていく。
 だが、彼は痛みを感じていない。
 むしろ、愛おしげに目を細めた。

「お前たちも、ずっと我慢してたもんな。ねぇ、そろそろ・・・遊びたいよね?」

 カサ……カサカサ……カリカリ……。

 蟲たちが、応えるように音を立てる。
 それは、歓喜のざわめき。
 それは、飢えた者たちの合唱。

「うん、いい子たちだ。あいつら、まだ『昨日の迷宮』にいるつもりらしいよ。だったら、教えてあげなきゃね。ここが誰の世界かってさ」

 カルマは、指先で蟲の一匹をすくい上げる。
 それは、目も口もないのに、まるで笑っているようだった。

「行っておいで。好きにしていいよ。・・・全部、食べていい」

 指先から滑り落ちた蟲が、床に着地する。
 その瞬間、モニターの中で、どこかの通路の壁が『脈打った』。

 迷宮が、呼吸を始めた。
 蟲たちが、目を覚ました。

 カルマは、椅子にもたれかかり、ウインドウに映る『英雄たち』の姿を見つめながら、 ゆっくりと、口角を吊り上げた。

「さあ、始めようか。『お掃除』の時間だよ──」


 カルマの意思のもと、虫たちが動く。
 肉食獣のような派手さはない。
 沈黙の狩りが、見えないところで始まった。
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