『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第10話 レイド主力メンバーの動き~経験値ゼロの英雄たち~ ①

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「な、なぁ。おかしくね?」
 男がスマホを握り締め、眉間にしわを寄せる。

 最深部の一つ手前、セーフティーゾーンまで退避してきた主力メンバー。
 その中の一人が、自分のステータスを見て不安を口にしている。
 脳内の『ゲーム画面』ではなく、さらに詳細で客観的な情報へアクセスしていた。

「経験値振り込まれてねーんだけど?」
 普通に考えて『ダンジョンマスター』を倒したなら、莫大な経験値が入るはずだ。
 いかに266人に及ぶ大レイドとはいえ配当0はあり得ない。

「本当だ、全然入ってないよ!」
「倒せなかったのか?」
「いや。そんなはずはない。この階層でも爆発の振動を感じたって、居残り組が言ってた。それだけの爆発で倒せないとは考えづらい」
 経験値が入らないのはおかしいってことで、仲間たちの見解は一致している。

 ならばなぜ?
 その答えは、一人の女性の声で出た。

 「あいつ! 死ぬ直前にレイドからもパーティからも脱退してる!」
 「はぁ?!」
 何人もの声が重なった。
 戦闘直前での脱退とかありえない!

 「なんでそんなことがわかるの?!」
 「システムチャットのログを遡ったの! あいつが無駄な抵抗始めたあたりで脱退が宣告されて受理されてる!」
 ダンジョン攻略状況を確認するためのアプリが内蔵されたスマホを手に、怨嗟の声が上がった。

 「あ、あんの野郎!」
 「仕返しのつもりか?!」
 スマホを覗き込み、必要な情報を読み込んだ男たちも騒ぎ出した。

 自爆を強いた自分たちへの意趣返し。
 最後の反抗だったのだろう事は理解できたのだ。
 レイドとパーティから脱退してソロになれば、他の者には経験値が入らなくなると見越してのことだと。
 状況を理解して憤る。

 彼等は気が付いていないが、遡るタイムインデックスをもう少し後までずらせばカルマの生還のアナウンスも発見できたはずだ。

 だが、爆発の警告アラートがログを埋め尽くしていた。
 だから彼らは、カルマの生還を知らせる一文を、見逃した。

 「生贄の羊の分際でぇぇぇぇぇ!」
 「最後の最期で裏切るか!」
 「クソが!」
 怒りをあらわにするが、カルマにとっては、それこそ「お前らが言うな」だということに自覚はない。

『生贄』にされた者が、最後に『選択』しただけ。
 それを『裏切り』と呼ぶなら、最初に『裏切ったのは誰だ?』

 「チッ。最後っ屁か。まぁいいさ。『ダンジョンマスター』討伐は成功したんだ。あとは、ドロップアイテム持って帰るだけで英雄だぜ?」
 主力メンバーのリーダーがニヤリと口の端を上げる。

「そう、だな」
 「経験値は惜しいが、致命的なものでもない」
 「倒したって事実と、それを証明するものがあれば、まぁいいわ」
 他のメンツもゆっくりと冷静さを取り戻していく。

『経験値』は失った。
 でも、『物語』は手に入れた。
 そう思い込める者だけが、英雄になれる。

 とにもかくにも、作戦は成功しているのだ。
 経験値の取りっぱぐれは悔しいが、当の相手は死んでいる。
 切り替えよう、そう考えられた。

 「明日、朝一で向かう。各種アイテムの補充を済ませて寝ろ!」
 「「「「「「おう!」」」」」」

       
 そうして、翌日。
 主力24人。
 先駆け36人。
 後詰38人。
 併せて、98人が64階層に再アタックを開始した。



 そして、迷宮は静かに目を開ける。
 カルマは、何も言わない。
 ただ、待っている。

『英雄たち』が、再び『舞台』に上がるのを。
 今度は、観客ではなく、支配者として。
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