『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
150 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第32話 殺すのは簡単だけど(悩む ~命の使い道~

しおりを挟む
 
 
 63階層の空間内。
 『蠅』と『蜂』で作った『大百足』のシルエットによる幻影戦術は1時間でバレた。
 我ながらよく引き延ばしたと感心する。

 そうなると、向こうもバカじゃない。
 手立てを講じられてしまう。

 風と水の複合技で叩き落された。
 嵐で地面に叩きつけられる羽虫の最期。

 無残。

 まぁ、『マナポイント』は儲かったからいいんだけどね。
 おかげで、『ダンジョンレベル』は30に達した。

 混乱している間に『メガネウロ』でさらった人間もいる。
 捕らえたその場で、元気に楽しく『保母さんや保父さん』をしている者たちも同じくらいいるだろう。
 『保母さんと保父さん』と、それ用の『介護者』をいいバランスで配置するのには苦労させられた。
 だか、おかげで『ソウルポイント』と『マナポイント』を効率よく得られている。

『人間』を『糧』として育った『虫』たちもすでに三世代目が『巣立ち』間近だ。
 二世代目は『システム』が言っていたようにステータスが高くなっている。
 三世代目は、さらに進化していると期待したい。


 そんな感じなので、元気なのは100人を切った。
 そのうちの魔職はかなり魔力切れ寸前。
 近接職も走り回ったせいで、ちょっと足取りが重い。
 朝食を喰い損ねたやつもたくさんいるみたいだし。

 弱らせることには成功したと言えるだろう。
 ここからどう攻めるか?

 敵はこの間に、バラバラだった戦力を結集して、簡易的ではあるが防衛拠点とも言うべき野戦陣地を構築。
 守りを固めている。

 でも・・・。

 「ハッキリ言って殺すのは簡単なんだよなぁ」
 
 『こう(虫に皇)害』。
 トノサマバッタの大群による災害のことだ。

 それを再現すればいい。
 通常サイズでいいから飢えたトノサマバッタを万単位で発生させてぶつければ、トノサマバッタの群れが地面を覆い、探索者たちは身動きが取れなくなる。
 あるいは、戦線を維持できなくなる。

 『探索者』だから、少しは耐えるかもしれないが結果は変わらないだろう。
 物量作戦というのは馬鹿にできないのだ。

 もちろん、これは階層全体がただの空間として存在しているこの場だから採れる手段だ。
 ダンジョンの通路やルームのような狭いところでは、魔法の弾幕を張られて無効化されかねない。
 それでも時間をかければ勝てる。
 
 だから、殺すのは簡単だ。
 問題は、どれだけ効率よく『使い切る』かだ
 
 ただ、この方法だとたぶん『ダンジョンポイント』を稼がないまま全滅させてしまう。
 それでは、主力に勝てない。

 「楽はできないってことだな」
 命を奪うのは一瞬。
 でも、使い切るには、少しだけ工夫がいる。

 それは、旧校舎で誰にも見られることのない『オレ』が知る、『やりくり』だった。

 「『蠅』と『蜂』の残りを一纏めにして、紡錘陣へ」
 3三次元ウィンドウに簡易の戦力図を展開させ、指示を出す。

 「真中へ正面から突っ込め!」
 できた紡錘陣を正攻法で叩きつける。

 すぐさま魔法の迎撃がきた。
 ただし、今度は乱雑さがない。
 必要なところに必要なだけ、効率的な弾幕が張られている。

 このままでは、おそらく数を増やしても同じだろう。
 敵は主力の帰還を待っての長期戦を選択している。
 
 それでも、続行だ!

 「30階層までの全モンスターを63階層へ移して、波状攻撃!」
 こちらの戦力は、意志を持たない『量産可能な兵器』。
 損耗は、ただの数字に過ぎない。

 物量で押す!
 ただし、相手の防御が瓦解しない程度で。

 「そのために、レベル帯を低めにしているんだ。もち堪えてくれよ?」
 死者を出さず、敵の戦力を削ぐ。
 それが狙いだ。

 「頑張ってね。『百合根友梨』先輩!」
 ウィンドウウィンドウ越しに、防戦の指揮を執る後方支援部隊部隊長さんにエールを送った。

 小学生のころ、能力向上プログラムで指導役だったことがある。
 教え方はキツかったが、対等に『人間として』扱ってくれた。
 おそらく、カルマにとって人間扱いされた『最後』の記憶だろう。

「ま、いまさら『先輩』もないけどね」
 それでも、口をついて出たのは『先輩』という呼び方だった。
 あの頃の呼び方を、今も変えられないまま。

 カルマは肩をすくめ、ウィンドウを閉じた。
 その背中に、誰も気づかない。
 彼がまだ、誰かを『人間』として見ていたことに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...