『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
176 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第57話 最前線攻略者たち② ~静かに崩れる舞台裏~ 後編

しおりを挟む
 

 ◇観察者視点◇
 
「警戒してなかった、あなたが悪いのよ」
 ウィンドウの向こうでは、モンスとしての初仕事を実行中の『雪女』しらゆきが冷たく言葉を吐き捨てている。

『ダンジョンマスター』本人でなくても、許可を与えられたモンスならば『システム』操作ができるだ。
 カルマがモンスを製作する間の監視と、隙あらば個別に引き抜きをかけるのが彼女の仕事ととなっている。

 引き抜きがしやすいのは、圧倒的に男どもだった。
 重装備のタンク以外は、簡単だからだろう。
 進行途中で、さっと横道に入って『しよう』とする。

 画面の中、男が横道に逸れ、装備を緩める。
 しらゆきは、ウィンドウ越しにその姿を見つめた。

 彼の背中が揺れ、わずかに腰が動く。
 その仕草の意味を、彼女は知っていた。

「見苦しいわね!」
 苛立たしげに罵り、ウィンドウを指先で叩かれる。

 モンスターが配置され、反応する間もなく無力化される。
 目を覚ますころには、すでに『巣』の中。
 その変化に、しらゆきは冷たく目を細める。

 しらゆきは、モンスターに引き抜かれる男子の姿に一瞬だけ、春の日の教室を思い出していた。
 春の日の教室。
 机の下で、ふと目が合ったあの瞬間の記憶。

 でも、その記憶は、氷の中に沈んでいった。
 制服の袖を握っていたあの頃の自分が、まだどこかにいる気がした。

「主力だとか、攻略組だとか。イキがっていたのはなんだったのよ!」
 情けなさ過ぎる!
 引抜きを行うたび、しらゆきは嫌悪を剥き出しにするのだった。

「見なきゃいいのに」
 何度かの悪態につい反応したカルマが呆れていた。

 角度を変えるとか、方法はいくらでもあるだろうに。
 それでも、しらゆきは毎回状況を丁寧に確認してから行動を起こしていた。
 冷静な判断の裏に、どこか未練のようなものが滲んでいた。

 大人になることへの興味。
 それは、もう届かない願いだったのかもしれない。

     ◇消える後詰C班◇

「おい」
「これは・・・」
「さすがに・・・ねぇ?」
 マズいことになっているのではないか?

 後詰C班の者たちが、そう気が付いたのは、いなくなって戻らないものが三名を超えてからだった。
「おそっ!」な話だが、それだけ平和だったのである。
 モンスターとの遭遇が0だった。

 当然だろう。
 モンスターは今、ダンジョンの所定の位置で徘徊する待ち伏せではなく、能動的に獲物を襲う遊撃に転化しているのだから。

 変化したのは魔法の属性ばかりではない。
 そして、その狙いは本隊。
 後詰にかまってくれるモンスターはいないのだ。
 
 だからだろう。
 
「迷子とか、やめてくれよ」
「高校生にもなって」
「ダンジョンとはいえ、恥ずかしいわよね」
 この期に及んで、まだのんきだった。

「探さないとダメか?」
「戻る?」
 立ち止まり、顔を見合わせた・・・ドゴン!

 その男女二人が消えた。
 いや、いなくなった。
 通路の後ろから転がってきた焦げ茶色の球に押し込まれて一緒に転がっていったのだ。
 
 残った一人は、慌てた様子で全力走のフンコロガシさんたちに巻き込まれ、路上に一人寝かしつけられた。
 あとの処理は『メガネウロ』さんたちが運び出すのにお任せだ。

 そうして、後詰C班は全員が姿を消した。
 主力に数えられていながら、重要視されることの無い裏方たちの崩壊が始まる。

     ◇不達◇
 
 後詰のパーティが一つ消えた。
 その事実は誰にも知られぬままとなっている。

 レイドリーダーに定時連絡の必要性が認知されていなかったからだ。
 問題があれば言ってくるだろ、程度の考えだった。
 連絡する間もなく全滅することは想定していない。

 スマホがあり、ダンジョン内でも使用できる。
 いつでも繋がっている感覚の弊害というべきだろう。

 自分が持つスマホの通信状態が悪ければ、危機感を持つこともあったかもしれない。
 だが、感度は良好。
 先駆けからは思わぬ損害の報告もあったが、後詰からは異常の報告がない。
 ゆえに、問題はないという認識だ。

 そして、後詰C班は最後尾。
 居なくなっても、すぐには影響が出ない。
 だから、誰にも気づかれないままだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...