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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます
第57話 最前線攻略者たち② ~静かに崩れる舞台裏~ 後編
しおりを挟む◇観察者視点◇
「警戒してなかった、あなたが悪いのよ」
ウィンドウの向こうでは、モンスとしての初仕事を実行中の『雪女』しらゆきが冷たく言葉を吐き捨てている。
『ダンジョンマスター』本人でなくても、許可を与えられたモンスならば『システム』操作ができるだ。
カルマがモンスを製作する間の監視と、隙あらば個別に引き抜きをかけるのが彼女の仕事ととなっている。
引き抜きがしやすいのは、圧倒的に男どもだった。
重装備のタンク以外は、簡単だからだろう。
進行途中で、さっと横道に入って『しよう』とする。
画面の中、男が横道に逸れ、装備を緩める。
しらゆきは、ウィンドウ越しにその姿を見つめた。
彼の背中が揺れ、わずかに腰が動く。
その仕草の意味を、彼女は知っていた。
「見苦しいわね!」
苛立たしげに罵り、ウィンドウを指先で叩かれる。
モンスターが配置され、反応する間もなく無力化される。
目を覚ますころには、すでに『巣』の中。
その変化に、しらゆきは冷たく目を細める。
しらゆきは、モンスターに引き抜かれる男子の姿に一瞬だけ、春の日の教室を思い出していた。
春の日の教室。
机の下で、ふと目が合ったあの瞬間の記憶。
でも、その記憶は、氷の中に沈んでいった。
制服の袖を握っていたあの頃の自分が、まだどこかにいる気がした。
「主力だとか、攻略組だとか。イキがっていたのはなんだったのよ!」
情けなさ過ぎる!
引抜きを行うたび、しらゆきは嫌悪を剥き出しにするのだった。
「見なきゃいいのに」
何度かの悪態につい反応したカルマが呆れていた。
角度を変えるとか、方法はいくらでもあるだろうに。
それでも、しらゆきは毎回状況を丁寧に確認してから行動を起こしていた。
冷静な判断の裏に、どこか未練のようなものが滲んでいた。
大人になることへの興味。
それは、もう届かない願いだったのかもしれない。
◇消える後詰C班◇
「おい」
「これは・・・」
「さすがに・・・ねぇ?」
マズいことになっているのではないか?
後詰C班の者たちが、そう気が付いたのは、いなくなって戻らないものが三名を超えてからだった。
「おそっ!」な話だが、それだけ平和だったのである。
モンスターとの遭遇が0だった。
当然だろう。
モンスターは今、ダンジョンの所定の位置で徘徊する待ち伏せではなく、能動的に獲物を襲う遊撃に転化しているのだから。
変化したのは魔法の属性ばかりではない。
そして、その狙いは本隊。
後詰にかまってくれるモンスターはいないのだ。
だからだろう。
「迷子とか、やめてくれよ」
「高校生にもなって」
「ダンジョンとはいえ、恥ずかしいわよね」
この期に及んで、まだのんきだった。
「探さないとダメか?」
「戻る?」
立ち止まり、顔を見合わせた・・・ドゴン!
その男女二人が消えた。
いや、いなくなった。
通路の後ろから転がってきた焦げ茶色の球に押し込まれて一緒に転がっていったのだ。
残った一人は、慌てた様子で全力走のフンコロガシさんたちに巻き込まれ、路上に一人寝かしつけられた。
あとの処理は『メガネウロ』さんたちが運び出すのにお任せだ。
そうして、後詰C班は全員が姿を消した。
主力に数えられていながら、重要視されることの無い裏方たちの崩壊が始まる。
◇不達◇
後詰のパーティが一つ消えた。
その事実は誰にも知られぬままとなっている。
レイドリーダーに定時連絡の必要性が認知されていなかったからだ。
問題があれば言ってくるだろ、程度の考えだった。
連絡する間もなく全滅することは想定していない。
スマホがあり、ダンジョン内でも使用できる。
いつでも繋がっている感覚の弊害というべきだろう。
自分が持つスマホの通信状態が悪ければ、危機感を持つこともあったかもしれない。
だが、感度は良好。
先駆けからは思わぬ損害の報告もあったが、後詰からは異常の報告がない。
ゆえに、問題はないという認識だ。
そして、後詰C班は最後尾。
居なくなっても、すぐには影響が出ない。
だから、誰にも気づかれないままだった。
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