『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第164話 最後の10人 ③ ~毒の広がるとき~ 後編

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 ◇七人みさきの初仕事◇

 場所は、70階層・校長室(仮)。
 今は、素材保管のための仮設拠点。

 机の上には、氷片にまみれた武器の破片。
 魔力の残滓。
 そして、命の痕跡。

 六人が、その机を囲んで座っている。
 七つ目の椅子は、空席のまま。

 一影:「道の確保は問題なし。敵の配置も予測通り。素材の質は……まあまあかな」 
 ナイフの刃を布で拭きながら、淡々と報告する。
 けれど、拭き取る手が、ほんの少しだけ丁寧すぎる。

 二影:「精神干渉は成功。でも、あの子……ちょっと耐性高かったかも」
 氷片を指先で転がしながら、ぼそりと呟く。
 その声は、自分の囁きが届きすぎたことへの戸惑いを含んでいた。

 三影:「守りきれたけど、四影の斬撃に合わせるタイミング、もう少し詰めたい」
 盾の表面に残った傷を見つめる。
 そこには、守れた者と守れなかった者の境界線が刻まれていた。

 四影:「え、私? ちゃんと斬ったよ? ……でも、ちょっと派手すぎた?」
 剣を肩に担ぎながら、笑う。
 けれど、その笑顔の奥に、斬った瞬間の感触がまだ残っている。

 五影:「見せ場は完璧だったでしょ? でも、氷の床はほんとに滑る~!」
 手の中にある『モノ』の髪を、くしけずっている。
 その仕草は、まるで人形遊びのように無邪気で、だからこそ不気味。

 六影:「癒しは間に合ったけど……素材の『痛み』が、ちょっと重かった」
 手のひらを見つめる。
 そこには、消えた命の温もりが、まだ残っている気がした。

 七影:空席の椅子が一つ。
 誰も触れない。
 けれど、誰かがそこに座る日を、みんなが少しだけ待っている。

 その椅子には、まだ名前のない影が宿っている。
 それは、次の素材かもしれない。
 それは、かつて拒絶された魂かもしれない。
 それは、誰かが『影になる』ことを選ぶ日への予兆。

 ◇戦場再び◇

「うんうん! いい調子だね! 順調に邪魔者が消えていくよ!」

 フラノが、氷の上で軽やかに拍手した。
 その音は、まるで誰かの死を祝福する鐘の音のように響いた。

「さすがはリーダーさん。段取りが見事だね! 素晴らしいね!」

「待望の凱旋。幼馴染も手に入れて、全部ひとり占め。万々歳だね!」

 その言葉に、空気がザワリと揺れた。
 疑念という名の風が、戦場を撫でていく。

「『目的物』を独占しようとしている者がいる」

 誰かが呟いた。
 それは、誰の口から出たのかすら曖昧なほど、自然に場に溶け込んだ。

 ——もしも、リーダーが一人で生き残るつもりだったら?
 ——もしも、サブリーダーを『排除』したのが彼だったら?
 ——もしも、一葉を手に入れるために、仲間を『減らしている』のだとしたら?

「ま、まさか……」

 その言葉が、疑念に火をつけた。
 昨日は、あんなにうまくいっていた。
 今日は、なぜこんなに崩れている?

 誰かが、仕組んだのではないか?

 疑心暗鬼の波が、静かに、しかし確実に広がっていく。


「こらこら、フラノ。それは早すぎ!」


 ヤレヤレ、とでも言いたげな声とともに、人影が、氷の帳を割って現れた。

「う……ウソ……」

 一葉が、亡霊でも見たような顔で、リーダーにしがみつく。

「やぁ! 昨日ぶり!」

 現れたのは——カルマ。

「な、なん……で?」

「やだなぁ。もちろん、『もらっていたエリクサー』で蘇生したんだよ。『予定通りに』ね」

 ウィンク。
 その仕草が、場の温度をさらに下げた。

「こいつらを亡き者にすれば、何もかも総取りできるね。まったく、欲の深い人たちだ。リーダーのフィクサーっぷりには脱帽だよ」

 ——君たちの企みだよね?
 カルマの笑顔が、疑念に『確信』という名の杭を打ち込んだ。

「て、テメェー!!」

 剣士が、怒りに任せて斬りかかった。
 その体には、魔法使いの少女が遺した『守り火』が、まだ微かに灯っていた。

 だが、それは——

 予想外。

 混乱の渦中にいたリーダーは、反応が遅れた。
 だが、『聖騎士』のスキルは、忠実に仕事を果たした。

『逆襲者』。
 自動反撃のパッシブスキル。
 本人が反応できないとき、本能のように発動する。

 ただし——味方識別機能は、ない。

 リーダーは知らなかった。
 味方に斬りかかられた経験など、なかったから。
『混乱』状態の仲間は、いつも一葉が即座に治してくれていたから。

 だから、それは必然だった。

 ズバッ。

 剣士の胸元に、リーダーの剣が突き刺さる。
 反撃は、正確だった。
 あまりにも、機械的に。

 魔法使いの少女が残した『守り火』は、彼を守れなかった。
 むしろ、彼の理性を保たせたことで、怒りを行動に変えてしまった。

 それは、呪いだったのかもしれない。

 制服が、床に落ちた。
 命の色が、氷の上に広がっていく。

 残り、6人。

「なにやってんだ?! おまえ!!」

 槍使いが、リーダーに詰め寄る。
 怒りと混乱が、彼の理性を焼き切った。

 リーダーは、何も言えなかった。
 目を見開いたまま、ただ立ち尽くしていた。

 そして——同じことが、起きた。

 制服が、重なった。
 命の色が、またひとつ、広がった。

 残り、5人。

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