279 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます
第164話 最後の10人 ③ ~毒の広がるとき~ 後編
しおりを挟む◇七人みさきの初仕事◇
場所は、70階層・校長室(仮)。
今は、素材保管のための仮設拠点。
机の上には、氷片にまみれた武器の破片。
魔力の残滓。
そして、命の痕跡。
六人が、その机を囲んで座っている。
七つ目の椅子は、空席のまま。
一影:「道の確保は問題なし。敵の配置も予測通り。素材の質は……まあまあかな」
ナイフの刃を布で拭きながら、淡々と報告する。
けれど、拭き取る手が、ほんの少しだけ丁寧すぎる。
二影:「精神干渉は成功。でも、あの子……ちょっと耐性高かったかも」
氷片を指先で転がしながら、ぼそりと呟く。
その声は、自分の囁きが届きすぎたことへの戸惑いを含んでいた。
三影:「守りきれたけど、四影の斬撃に合わせるタイミング、もう少し詰めたい」
盾の表面に残った傷を見つめる。
そこには、守れた者と守れなかった者の境界線が刻まれていた。
四影:「え、私? ちゃんと斬ったよ? ……でも、ちょっと派手すぎた?」
剣を肩に担ぎながら、笑う。
けれど、その笑顔の奥に、斬った瞬間の感触がまだ残っている。
五影:「見せ場は完璧だったでしょ? でも、氷の床はほんとに滑る~!」
手の中にある『モノ』の髪を、くしけずっている。
その仕草は、まるで人形遊びのように無邪気で、だからこそ不気味。
六影:「癒しは間に合ったけど……素材の『痛み』が、ちょっと重かった」
手のひらを見つめる。
そこには、消えた命の温もりが、まだ残っている気がした。
七影:空席の椅子が一つ。
誰も触れない。
けれど、誰かがそこに座る日を、みんなが少しだけ待っている。
その椅子には、まだ名前のない影が宿っている。
それは、次の素材かもしれない。
それは、かつて拒絶された魂かもしれない。
それは、誰かが『影になる』ことを選ぶ日への予兆。
◇戦場再び◇
「うんうん! いい調子だね! 順調に邪魔者が消えていくよ!」
フラノが、氷の上で軽やかに拍手した。
その音は、まるで誰かの死を祝福する鐘の音のように響いた。
「さすがはリーダーさん。段取りが見事だね! 素晴らしいね!」
「待望の凱旋。幼馴染も手に入れて、全部ひとり占め。万々歳だね!」
その言葉に、空気がザワリと揺れた。
疑念という名の風が、戦場を撫でていく。
「『目的物』を独占しようとしている者がいる」
誰かが呟いた。
それは、誰の口から出たのかすら曖昧なほど、自然に場に溶け込んだ。
——もしも、リーダーが一人で生き残るつもりだったら?
——もしも、サブリーダーを『排除』したのが彼だったら?
——もしも、一葉を手に入れるために、仲間を『減らしている』のだとしたら?
「ま、まさか……」
その言葉が、疑念に火をつけた。
昨日は、あんなにうまくいっていた。
今日は、なぜこんなに崩れている?
誰かが、仕組んだのではないか?
疑心暗鬼の波が、静かに、しかし確実に広がっていく。
「こらこら、フラノ。それは早すぎ!」
ヤレヤレ、とでも言いたげな声とともに、人影が、氷の帳を割って現れた。
「う……ウソ……」
一葉が、亡霊でも見たような顔で、リーダーにしがみつく。
「やぁ! 昨日ぶり!」
現れたのは——カルマ。
「な、なん……で?」
「やだなぁ。もちろん、『もらっていたエリクサー』で蘇生したんだよ。『予定通りに』ね」
ウィンク。
その仕草が、場の温度をさらに下げた。
「こいつらを亡き者にすれば、何もかも総取りできるね。まったく、欲の深い人たちだ。リーダーのフィクサーっぷりには脱帽だよ」
——君たちの企みだよね?
カルマの笑顔が、疑念に『確信』という名の杭を打ち込んだ。
「て、テメェー!!」
剣士が、怒りに任せて斬りかかった。
その体には、魔法使いの少女が遺した『守り火』が、まだ微かに灯っていた。
だが、それは——
予想外。
混乱の渦中にいたリーダーは、反応が遅れた。
だが、『聖騎士』のスキルは、忠実に仕事を果たした。
『逆襲者』。
自動反撃のパッシブスキル。
本人が反応できないとき、本能のように発動する。
ただし——味方識別機能は、ない。
リーダーは知らなかった。
味方に斬りかかられた経験など、なかったから。
『混乱』状態の仲間は、いつも一葉が即座に治してくれていたから。
だから、それは必然だった。
ズバッ。
剣士の胸元に、リーダーの剣が突き刺さる。
反撃は、正確だった。
あまりにも、機械的に。
魔法使いの少女が残した『守り火』は、彼を守れなかった。
むしろ、彼の理性を保たせたことで、怒りを行動に変えてしまった。
それは、呪いだったのかもしれない。
制服が、床に落ちた。
命の色が、氷の上に広がっていく。
残り、6人。
「なにやってんだ?! おまえ!!」
槍使いが、リーダーに詰め寄る。
怒りと混乱が、彼の理性を焼き切った。
リーダーは、何も言えなかった。
目を見開いたまま、ただ立ち尽くしていた。
そして——同じことが、起きた。
制服が、重なった。
命の色が、またひとつ、広がった。
残り、5人。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる