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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
92話 3年後の遠征 1
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新章は3年後の世界。
ジュリオンくんは、変わらずに遠い目をしています。
◆◆◆
「「GUAAAA――――!」」
彼らの縄張り――ダンジョンのフロアへ僕たち人間が足を踏み入れたのを察知したモンスターたちが、咆哮を上げながら突撃してくる。
その数、100以上。
それを――少しずつ部隊全体を前進させ、幾度も繰り返す。
そんな戦闘状態に突入して、既に数十分。
――「侵入者にして被捕食者のはずの人間がしぶとい」と業を煮やしたボスモンスターがせっついたようで、これまでは散発的だった敵が追加のモンスターを繰り出して押し寄せてきている。
これまでにない動き。
攻撃モーション――ルーチンの変化。
ゲームだったら、その程度の変化。
だけど、ここは現実で――だから、目に見えての動きが変わる。
「――これを待っていた」
だけども――人々は怯えて我先にと逃げ出すこともなく、作戦通りに動き出している。
作戦の最終段階だと、誰もが理解しているから。
だから僕は、大きく息を吸い――戦場の流れに合わせて軍を最も効率よく運用するため、ひゅぱっとムチで地面を叩きながら告げる。
「――第5、第11部隊は後方へ! 第20と第8部隊、前へ!」
「「はっ!」」
「「はいっ!」」
僕の指揮に合わせ、数人単位の部隊――パーティーがいっせいに動く。
そこに一切の乱れはなく、命令違反もない。
――ここはゲームの世界ではなく、リアルの世界。
だから体力バーなんてないし、乱戦になればどこに誰がいるのかなんて分からなくなる。
けども――僕は、ジュリオン様。
だから、システム的に見えるわけではないけれども――「視えて」いる。
――ひゅぱっ。
僕のムチの音。
それを――どんな乱戦であっても、各部隊のリーダーたちだけは聞き逃さないよう訓練してきた。
「盾持ちの第9、第32部隊は第23と第3部隊に代わり前線を維持! ハウンド系の突撃から後衛を守りなさい! それ以外の戦術的な動きは各リーダーに一任します!」
そうしてまだ戦える冒険者たちを下がらせ、休ませていた部隊――パーティーを前に出させる。
「「はっ!」」
指示通りに動いていくのをしばらく見続け――ひと息。
これで、大丈夫そうかな。
ほぼ予想通りだった戦力だから、あとはこれで行けるはずだ。
――150人近い人々が入り乱れる、ダンジョン最深部――ボスフロア。
僕は普段の通りに高所から戦場を眺めつつ、数と練度にものを言わせた――つまりはどんなへっぽこ指揮官だったとしても、明らかにおかしいミスさえしなければ損失も少なく勝利できる慎重策を、打っていく。
だってここは現実。
そこで指揮を執る以上、僕は彼らの命を背負っているから。
「行きまぁ――ふべっ」
「エミリーさん!」
今、前に出たばっかりの部隊――パーティーの隊長にしたエミリーちゃんは、いつも通りにずっこける。
緑のポニテがぱさっと広がる。
あと転んだ拍子に、ぱんつが丸見えになる。
いつものことだ。
ドジっ子スキル――そのせいで彼女は、戦力にはなれない。
だけど、
「よくもエミリー様を……!」
「モンスター……! 許せぬ!」
「GA!?」
――そのスキルは、彼女のミスのたびにパーティー全体の士気を上げるバフとして扱える。
だから少し練度が――レベルとスキルが低かったり、疲労やダメージが蓄積しているパーティーに組み込むことで、彼女1人分を補ってお釣りのくる効果を生み出す。
しかも、今は大部隊。
――つまり、ドジっ子スキルのバフ効果は通常の数人ではなく「150人全て」へと拡散する。
……まだこのスキルが初期段階でもこれなんだ。
メインストーリーで覚醒した暁には、間違いなく人類の切り札になる。
「ふぇぇ……またやっちゃいましたぁ……」
「「うぉぉぉぉー!」」
彼女が涙ぐむと、戦闘力はなんと脅威の30%増。
150人の戦闘力が、130%だ。
うん……彼女のメンタルのことを考えなければ、常に戦闘中のパーティーに加入させるべきだ。
実際、原作でもそういう感じで「とりあえず防具だけ良いのにして入れとけ」って枠だったし。
もっともここは現実の世界で、彼女は生きている女の子だ――あまりやり過ぎると、いくら呑気な彼女でも「もう、やですぅ……」って膝抱えて鬱々しちゃうからボス戦限定だけども。
行動不能になった人から積極的に狙う習性のあるモンスターたちが、隊列に飛びかかってエミリーちゃんへ迫る。
「GU――GU!?」
「エミリーさまに手だしさせねぇよ! 兄貴!」
「おう!」
そこへ割り込むのは、敏捷さでトップのリラちゃん&テオくん姉弟。
盗賊衣装のおでことなかなかのイケメンに育ちつつあるダークグレーの髪がなびく。
「ふぇぇ……ありがとうございますぅ……」
「気にすんなです!」
「バフスキルの代償ですから、お気にならず。……行くぞみんな!」
「「はい!」」
平均年齢10歳の子供パーティーがエミリーちゃんを取り囲みつつ、姉弟の指示で囲んできたモンスターたちを1匹ずつ確実に倒していく。
――これが、この3年で(主に崇拝されるっていう精神的苦痛で)僕が苦労して育ててきた戦力だ。
「ユリアさまが見てる……!」
「ああ! 姉御が見てるんだ、気張っていくぜ!」
「女神の再来とも言われる美貌、つまりは実質女神な俺たちの主のために……行くぞ!」
もっとも、育てすぎて――もはや僕を見る目が狂信者のそれに、若干どころか完全になっているのは見なかったことにしたいけども。
ジュリオンくんは、変わらずに遠い目をしています。
◆◆◆
「「GUAAAA――――!」」
彼らの縄張り――ダンジョンのフロアへ僕たち人間が足を踏み入れたのを察知したモンスターたちが、咆哮を上げながら突撃してくる。
その数、100以上。
それを――少しずつ部隊全体を前進させ、幾度も繰り返す。
そんな戦闘状態に突入して、既に数十分。
――「侵入者にして被捕食者のはずの人間がしぶとい」と業を煮やしたボスモンスターがせっついたようで、これまでは散発的だった敵が追加のモンスターを繰り出して押し寄せてきている。
これまでにない動き。
攻撃モーション――ルーチンの変化。
ゲームだったら、その程度の変化。
だけど、ここは現実で――だから、目に見えての動きが変わる。
「――これを待っていた」
だけども――人々は怯えて我先にと逃げ出すこともなく、作戦通りに動き出している。
作戦の最終段階だと、誰もが理解しているから。
だから僕は、大きく息を吸い――戦場の流れに合わせて軍を最も効率よく運用するため、ひゅぱっとムチで地面を叩きながら告げる。
「――第5、第11部隊は後方へ! 第20と第8部隊、前へ!」
「「はっ!」」
「「はいっ!」」
僕の指揮に合わせ、数人単位の部隊――パーティーがいっせいに動く。
そこに一切の乱れはなく、命令違反もない。
――ここはゲームの世界ではなく、リアルの世界。
だから体力バーなんてないし、乱戦になればどこに誰がいるのかなんて分からなくなる。
けども――僕は、ジュリオン様。
だから、システム的に見えるわけではないけれども――「視えて」いる。
――ひゅぱっ。
僕のムチの音。
それを――どんな乱戦であっても、各部隊のリーダーたちだけは聞き逃さないよう訓練してきた。
「盾持ちの第9、第32部隊は第23と第3部隊に代わり前線を維持! ハウンド系の突撃から後衛を守りなさい! それ以外の戦術的な動きは各リーダーに一任します!」
そうしてまだ戦える冒険者たちを下がらせ、休ませていた部隊――パーティーを前に出させる。
「「はっ!」」
指示通りに動いていくのをしばらく見続け――ひと息。
これで、大丈夫そうかな。
ほぼ予想通りだった戦力だから、あとはこれで行けるはずだ。
――150人近い人々が入り乱れる、ダンジョン最深部――ボスフロア。
僕は普段の通りに高所から戦場を眺めつつ、数と練度にものを言わせた――つまりはどんなへっぽこ指揮官だったとしても、明らかにおかしいミスさえしなければ損失も少なく勝利できる慎重策を、打っていく。
だってここは現実。
そこで指揮を執る以上、僕は彼らの命を背負っているから。
「行きまぁ――ふべっ」
「エミリーさん!」
今、前に出たばっかりの部隊――パーティーの隊長にしたエミリーちゃんは、いつも通りにずっこける。
緑のポニテがぱさっと広がる。
あと転んだ拍子に、ぱんつが丸見えになる。
いつものことだ。
ドジっ子スキル――そのせいで彼女は、戦力にはなれない。
だけど、
「よくもエミリー様を……!」
「モンスター……! 許せぬ!」
「GA!?」
――そのスキルは、彼女のミスのたびにパーティー全体の士気を上げるバフとして扱える。
だから少し練度が――レベルとスキルが低かったり、疲労やダメージが蓄積しているパーティーに組み込むことで、彼女1人分を補ってお釣りのくる効果を生み出す。
しかも、今は大部隊。
――つまり、ドジっ子スキルのバフ効果は通常の数人ではなく「150人全て」へと拡散する。
……まだこのスキルが初期段階でもこれなんだ。
メインストーリーで覚醒した暁には、間違いなく人類の切り札になる。
「ふぇぇ……またやっちゃいましたぁ……」
「「うぉぉぉぉー!」」
彼女が涙ぐむと、戦闘力はなんと脅威の30%増。
150人の戦闘力が、130%だ。
うん……彼女のメンタルのことを考えなければ、常に戦闘中のパーティーに加入させるべきだ。
実際、原作でもそういう感じで「とりあえず防具だけ良いのにして入れとけ」って枠だったし。
もっともここは現実の世界で、彼女は生きている女の子だ――あまりやり過ぎると、いくら呑気な彼女でも「もう、やですぅ……」って膝抱えて鬱々しちゃうからボス戦限定だけども。
行動不能になった人から積極的に狙う習性のあるモンスターたちが、隊列に飛びかかってエミリーちゃんへ迫る。
「GU――GU!?」
「エミリーさまに手だしさせねぇよ! 兄貴!」
「おう!」
そこへ割り込むのは、敏捷さでトップのリラちゃん&テオくん姉弟。
盗賊衣装のおでことなかなかのイケメンに育ちつつあるダークグレーの髪がなびく。
「ふぇぇ……ありがとうございますぅ……」
「気にすんなです!」
「バフスキルの代償ですから、お気にならず。……行くぞみんな!」
「「はい!」」
平均年齢10歳の子供パーティーがエミリーちゃんを取り囲みつつ、姉弟の指示で囲んできたモンスターたちを1匹ずつ確実に倒していく。
――これが、この3年で(主に崇拝されるっていう精神的苦痛で)僕が苦労して育ててきた戦力だ。
「ユリアさまが見てる……!」
「ああ! 姉御が見てるんだ、気張っていくぜ!」
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