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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
99話 使い捨ての靴と涙と
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「レロレロレロ……じゅるっ」
「……っ」
ひぃっと出そうな声を飲み込む。
僕は、知った。
気持ち悪い好意ってのが存在するって。
いや、僕は知っていた。
この3年間で……悪夢にうなされるほどに。
でも、これを拒否することはできない。
なぜならこの豚さんは――とてつもなく優秀だからだ。
本当、今僕の足元にしゃがみ込んで――ギャグ仕様のせいで平民の年収何年分なお値段の服のズボンが裂けてダサい格好なのに、なぜか3年前から太ってるのに。
……あと、母さんに調教されたせいで、攫った孤児たちを本当に1人も無理やり手を出したとかそんなことはなくって、むしろ孤児たちから好かれていたりするほど実は優しいおじさんなのに。
なぜか僕にだけ。
僕にだけ、こうなんだ。
なんでだろうね。
分からないね。
分かってるけど分かりたくないね。
そしてこの人は母さんに調教されてしまったせいで、母さんそっくりな僕にこういうことをしないと発狂してしまうらしい。
子供たちにあんな破廉恥な格好をさせていたのも、全部欲求不満からだったそうだ。
なにしろ性癖を破壊されてしまったから、もう普通のことでは満足できないんだとか。
性癖。
それは大切なもの。
必ずしも性的な行為を伴うわけではなく、例えるなら女装している僕のことを男と知りながら眺めることで変な状態になる庭のおじいちゃんみたいな感じのあれ。
ダメだ、思考能力が破壊されている。
とにかく、あの子たちは――家で引き取った子も含め、みんな幸せらしい。
良かったね。
うらやましいね。
なんでだろうね。
――母さんの爪痕は深い。
罪悪感もあるし、男の僕が足を差し出す――本当にそれだけで、ただ気持ち悪いだけでおぞましいだけで吐き気がするだけで夢に見るだけで、ほぼすべての町や貴族の内偵を完璧にこなしてくれるんだ。
その報酬として、
「ずぞぞぞっ」
ひぃっ!?
今、何吸われた!?
……ほ、報酬として、この程度なら……うん。
体を差し出してるわけじゃ――つま先以外は――ないし、何より僕は男だ。
男が不快な思いをするだけですべての情報が入るし、孤児たちを救出してきてくれるんだ。
そうだ、本来ならこれだけの有能をロハでこき使ってタダでは済まないんだ。
なんなら――僕が女だったとして、体を差し出してもお釣りが出るレベル。
けども僕は男で、差し出すのは足先だけ。
本当に格安でお値打ちなんだ。
「……これも、世界の定め……」
だから我慢しよう。
そう、決めているけども。
――ああ。
青空はなんであんなに青いんだろう。
「ふふ……」
「姉御ぉ……! イヤなことはイヤって言えってぇ……!」
「……嫌悪に顔を歪ませる主君……なのに、美しい……うっ……」
あ、涙。
「……モルテール様」
「ぶっひぃ!!」
僕は――すっごくもったいないけど、子爵に会うたびに使い捨てにする用にストックしてある靴をそっと引っ込め、彼の――痩せたらかっこいいはずなのにさらに丸々としてきた姿を、作り笑顔でのぞき込む。
「お美しぶひぃぃぃぃぃ……!」
我慢我慢。
男相手の接客商売をしている女性たちを見習うんだ。
あの人たちは人間として尊敬できる存在なんだ。
「母上なら、きっとこう言います。『これからも、仕事ができる男に任せたい』……と」
「おお……! セレスティーヌ様ぁ……!」
目と鼻と口と耳と毛穴という毛穴から液体という液体をどくどくと吐き出しながら、僕を通して死んだ母さんを見ているおじさん。
たぶんやばい脳内物質が噴出しているんだろう、顔も真っ青と真っ赤を同時に達成しているし、何より震えが神経性のそれだ。
けどこれ、マジメな話モードにさせると一瞬で止まるんだよな。
なんでだろうね。
分からないね。
でも3年間も……屋敷の人たちを始め、母さんと接したことがある人たちと話したりもすれば分かるんだ。
あの人……僕の海の母親って、俗に言う「おもしれー女」ムーブしてたって。
僕は詳しくなかったけど、よくあるじゃん?
乙女ゲーの「悪役令嬢/アクヤクレイジョウ」とかで、運命をかき乱す何かを持って全部破壊して回る系のやばい人って。
その中でもカリスマ特化だったらしく、やばい人ほど心酔させてるやばい人だったんだ。
うん……さすがに分かるよ。
嫌でも分かるよ……だって、こうやってことごとくに母さんの片鱗だけでむせび泣きながら喜ばれるんだからさ。
いや、まぁ、おかげで母さんの七光りっていうか母さんそのものってことで、頼みごとはロハで二つ返事どころかすればするほど喜ばれる謎仕様なんだけどね……おかげでいろいろと、想定よりはるかに楽に進められているけどさ。
あ、でも、もうちょっとマイルドだったらもっと楽だったかな。
ねぇ、母さん。
「……っ」
ひぃっと出そうな声を飲み込む。
僕は、知った。
気持ち悪い好意ってのが存在するって。
いや、僕は知っていた。
この3年間で……悪夢にうなされるほどに。
でも、これを拒否することはできない。
なぜならこの豚さんは――とてつもなく優秀だからだ。
本当、今僕の足元にしゃがみ込んで――ギャグ仕様のせいで平民の年収何年分なお値段の服のズボンが裂けてダサい格好なのに、なぜか3年前から太ってるのに。
……あと、母さんに調教されたせいで、攫った孤児たちを本当に1人も無理やり手を出したとかそんなことはなくって、むしろ孤児たちから好かれていたりするほど実は優しいおじさんなのに。
なぜか僕にだけ。
僕にだけ、こうなんだ。
なんでだろうね。
分からないね。
分かってるけど分かりたくないね。
そしてこの人は母さんに調教されてしまったせいで、母さんそっくりな僕にこういうことをしないと発狂してしまうらしい。
子供たちにあんな破廉恥な格好をさせていたのも、全部欲求不満からだったそうだ。
なにしろ性癖を破壊されてしまったから、もう普通のことでは満足できないんだとか。
性癖。
それは大切なもの。
必ずしも性的な行為を伴うわけではなく、例えるなら女装している僕のことを男と知りながら眺めることで変な状態になる庭のおじいちゃんみたいな感じのあれ。
ダメだ、思考能力が破壊されている。
とにかく、あの子たちは――家で引き取った子も含め、みんな幸せらしい。
良かったね。
うらやましいね。
なんでだろうね。
――母さんの爪痕は深い。
罪悪感もあるし、男の僕が足を差し出す――本当にそれだけで、ただ気持ち悪いだけでおぞましいだけで吐き気がするだけで夢に見るだけで、ほぼすべての町や貴族の内偵を完璧にこなしてくれるんだ。
その報酬として、
「ずぞぞぞっ」
ひぃっ!?
今、何吸われた!?
……ほ、報酬として、この程度なら……うん。
体を差し出してるわけじゃ――つま先以外は――ないし、何より僕は男だ。
男が不快な思いをするだけですべての情報が入るし、孤児たちを救出してきてくれるんだ。
そうだ、本来ならこれだけの有能をロハでこき使ってタダでは済まないんだ。
なんなら――僕が女だったとして、体を差し出してもお釣りが出るレベル。
けども僕は男で、差し出すのは足先だけ。
本当に格安でお値打ちなんだ。
「……これも、世界の定め……」
だから我慢しよう。
そう、決めているけども。
――ああ。
青空はなんであんなに青いんだろう。
「ふふ……」
「姉御ぉ……! イヤなことはイヤって言えってぇ……!」
「……嫌悪に顔を歪ませる主君……なのに、美しい……うっ……」
あ、涙。
「……モルテール様」
「ぶっひぃ!!」
僕は――すっごくもったいないけど、子爵に会うたびに使い捨てにする用にストックしてある靴をそっと引っ込め、彼の――痩せたらかっこいいはずなのにさらに丸々としてきた姿を、作り笑顔でのぞき込む。
「お美しぶひぃぃぃぃぃ……!」
我慢我慢。
男相手の接客商売をしている女性たちを見習うんだ。
あの人たちは人間として尊敬できる存在なんだ。
「母上なら、きっとこう言います。『これからも、仕事ができる男に任せたい』……と」
「おお……! セレスティーヌ様ぁ……!」
目と鼻と口と耳と毛穴という毛穴から液体という液体をどくどくと吐き出しながら、僕を通して死んだ母さんを見ているおじさん。
たぶんやばい脳内物質が噴出しているんだろう、顔も真っ青と真っ赤を同時に達成しているし、何より震えが神経性のそれだ。
けどこれ、マジメな話モードにさせると一瞬で止まるんだよな。
なんでだろうね。
分からないね。
でも3年間も……屋敷の人たちを始め、母さんと接したことがある人たちと話したりもすれば分かるんだ。
あの人……僕の海の母親って、俗に言う「おもしれー女」ムーブしてたって。
僕は詳しくなかったけど、よくあるじゃん?
乙女ゲーの「悪役令嬢/アクヤクレイジョウ」とかで、運命をかき乱す何かを持って全部破壊して回る系のやばい人って。
その中でもカリスマ特化だったらしく、やばい人ほど心酔させてるやばい人だったんだ。
うん……さすがに分かるよ。
嫌でも分かるよ……だって、こうやってことごとくに母さんの片鱗だけでむせび泣きながら喜ばれるんだからさ。
いや、まぁ、おかげで母さんの七光りっていうか母さんそのものってことで、頼みごとはロハで二つ返事どころかすればするほど喜ばれる謎仕様なんだけどね……おかげでいろいろと、想定よりはるかに楽に進められているけどさ。
あ、でも、もうちょっとマイルドだったらもっと楽だったかな。
ねぇ、母さん。
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